はい!こちら、中学生パトロール隊です!!

華ノ月

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第五章 花を愛でる小人たちは悲しみの雨を降らせる

第14話

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「あぁ!その日ならよく覚えているぜ!」

 颯希が美亜が亡くなった日に、この灯台で何か変わったことがなかったか聞くと男の子からそう返事が返ってきた。

「あの日、俺たちがいつものように朝早くに釣りに来たら歌声が聞こえたんだ。すっげぇキレイな歌声!で、邪魔したら悪いと思って影から隠れるように歌を聞いていたんだよ。そしたら、変なところで歌がピタって止まったんだ。あれ?って、思って覗いたらいなかったから歌うのを途中で止めて帰ったんだなって……」

 男の子の言葉に颯希たちが顔を合わせる。

「……ちなみに、歌が途切れた時の歌のテンポってどんな感じだったかな?」

「テンポ?」

 雄太の言葉に男の子たちがはてなマークを浮かべる。

「速い感じで歌っていたのか、ゆっくりした感じで歌っていたのかってことだよ」

 雄太の言葉に男の子たちが「あぁ」と言って話し出す。

「かなり速くてなんだか踊りたくなるような感じだったぜ!」

 男の子たちの言葉に再度颯希たちが顔を見合わせる。

 男の子たちにお礼を言って颯希たちはその場を離れた。そして、三人でさっきの男の子たちの話を整理する。

「……ということは、美亜さんはやはり自殺ではなく、『事故』の可能性が高いですね……」

 理人から聞いた話を思いだし、颯希がそう言葉を綴る。

「そうだね……。ただ、あの遺書のようなものがどういう意味かがよく分からないけど……」


 ――――トゥルル……、トゥルル……。


 そこへ、颯希のスマートフォンが鳴り響く。電話の相手は凛花だった。

『もしもし、颯希ちゃん?!颯希ちゃんの予想通りだったよ!やっぱり美亜先輩、友だちや先生にもそう話してたって!!』

 凛花から話を聞いたことを颯希が静也と雄太に話す。

「……じゃあ、遺書だと思われていたあの文章はそういう意味だったってわけか……」

 静也が「なるほどな」と呟きながらそう言葉を綴る。

「……これで、ますます自殺ではなく事故だという事になるね……」

 雄太も納得したのか、事故の可能性が高いと推測する。

「それなのに、自殺として処理されています。そして、亡くなった時期を考えると犯人たちがそう捉えてもおかしくありません……」

「よし!颯希の仮説で捜査を進めようぜ!」

 静也が力強く言う。颯希と雄太も頷き、捜査を再開する。その時、颯希がある人物に協力を得たいという事で電話をした。



『……まぁ、被害者の体内から睡眠薬が検出されたことくらいだな……』

 颯希からの電話に木津がそう答える。

「睡眠薬ですか?」

『あぁ。しかし、被害者の中で誰も病院に通っている者はいなかった。考えられるとすれば犯人が犯行をしやすくするために飲ませたかもしれないという事くらいだ』

「木津さん、今回の事件ですが――――」

 木津に颯希が自分の仮説を話す。

『……成程な。突拍子のような気もするが全くあり得ない話ではないな。で、君たちはそっちで捜査しているというわけか……』

 そして、木津からまた何か分かったら連絡してくれと言われて電話を終える。

「静也くん、雄太くん。どうやら、殺された三人の体内から睡眠薬が検出されたそうです。おそらく犯人が飲ませたのだろうと警察は考えているようです……」

 颯希が二人に先程の電話の内容を説明する。

「という事は、犯人は病院に通っているか病院関係者か……と言ったところだね。睡眠薬の類は病院に行かないと処方してもらえない……」

 雄太がそう推理する。

「病院……、てことは……」

 静也が病院と聞いて一つの可能性の場所を思い出す。

「……行ってみましょう」

 そう言うと、颯希たちは福祉施設に向かった。



「……なんだか、考えられない話ですね」

 颯希との電話が終わり、木津が先程の颯希の仮説を呉野に話す。話を聞いた呉野はあり得ないという顔をしている。

「でも、仮説としては考えられない話ではない……。まぁ、何かその方面で分かったらまた連絡をくれるそうだ」

「たったそれだけの理由でそうこじつけるのは無謀とも感じますが……。中学生ならではの発想ですかね……?」

「どうだろうな……」

 木津の言葉に呉野がそう語る。

 そして、自分たちは今の捜査の方針に従って容疑者の捜索に乗り出した。

 なかなか犯人の目星がつかないので、捜査はかなり難航状態だ。でも、ここで打ち切るわけにもいかない。ホシを上げない限り住人も不安な日々が続く。なんとか事件を解決したい思いだけが渦巻く。

 何処をどう捜査していいか分からずに途方に暮れながら……。



「……変わったこと?」

 颯希たちが福祉施設「憩いの場」に訪れて責任者である入間に何か変わったことがなかったか聞く。

「……う~ん、特には無いかな?」

「どんな些細な事でもいいので何か気付いたことはありませんか?」

 颯希が入間に何か少しでも情報がないかと聞く。

「そうだなぁ~。あえて言うなら睡眠薬かな……?」

「えっ……?」

 入間の言葉から睡眠薬と言う言葉が出て颯希たちが顔を見合わせる。

「その、睡眠薬のことで何かあったのですか……?」

 颯希が話を聞くために入間に問う。

「大したことじゃないけど、八木さんが睡眠薬が足りそうにないから追加で貰えないかって聞いてきたんだよ。だから、それなら診察を受けてくださいって伝えたんだ。でも、睡眠薬はちゃんと日数分処方されているはずだから眠りににくくて多めに飲んでいるのかな?って、思ったくらいかな?」

 入間の話を聞いて、颯希が「もしかしたら」と感じる。そして、入間にお礼を言って施設を出ると、木津に連絡をした。

「木津さんですか?睡眠薬の件ですが、もしかしたら――――」

 颯希が先程のことを木津に話をする。そして、木津が自分たちもすぐに合流することを伝えた。そして、合流場所として最初の被害者が殺された場所近くのコンビニを木津が指定した。



「木津さん!呉野さん!」

 コンビニで颯希たちは木津たちと合流し、コンビニに設置されている防犯カメラを確認させてもらう。コンビニの店長は刑事だけでなく、中学生もいることに不思議を感じたが、木津が「将来の勉強です」と説明したので颯希たちも防犯カメラを見せてもらえることになった。

 防犯カメラの映像を颯希たちが食い入るように見る。事件発覚の前と後の映っている人物を確認していく。

「その、八木って男は映っているか?」

 木津が颯希たちに聞く。

「……いえ、映っていないです……。……あれ?」

 その時、颯希が防犯カメラに映る一人の人物を見つけて声を上げた。

「静也くん、雄太くん、この人って……」

 颯希が映像に映るある人物を指さす。

「……あぁ、確かにそうだな……」

 颯希が指を差した人物を見て静也が「間違いない」と、声を出す。

 そして、木津と呉野にこの人物が誰なのかを話す。そして、他の現場でも映っていないか確認するために颯希たちは木津と呉野と共に他の現場にも足を運んだ。


 二つ目の現場であるビルに到着して、守衛室で防犯カメラの映像を見せてもらう。その時も守衛官がやはり颯希たちもいることに疑問を持ったが、木津が同じ説明をして颯希たちも防犯カメラを見せてもらえることになった。

 すると、今度は第一の現場近くのコンビニで映っていた人物と同じ人物の他にもう二つの人物が映っていた。

「この人たちまで……」

 颯希たちが防犯カメラに写っている人物を見て驚きの声を上げる。

 さらに第三の現場の公園近くの防犯カメラにもその三人の姿が映っていた。しかし、八木の姿は何処にもない。

「八木さんに話を聞きに行きましょう……」

 八木が映ってないことから、八木がどう関連しているのかを調べるためにみんなで八木の仕事場に会いに行くことにした。



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