はい!こちら、中学生パトロール隊です!!

華ノ月

文字の大きさ
87 / 128
最終章 そして、白い鳥たちは大空へ向かう

第1話

しおりを挟む
~プロローグ~

「私たちと一緒に十二年前の放火事件を調べてみない?♪」

「「え?」」

 突然の月子の言葉に颯希と静也が虚を突かれた表情で同時に声を出す。

 お昼休みにいつものように颯希たちが過ごしていると、なぜかその場に月子と月弥も同席し、「お願いがある」という言葉に何かを聞いたらそういう返事が返ってきた。

「放火事件……??」

 月子の言葉に静也が聞き返す。

「そうよ♪ママが小説を書くのにその事件を調べたいとのことなんだけど、その話を聞いて私と月弥で調べるって言ったのよ♪私たちにもいい勉強になるしね♪」

 ミステリー作家とミステリー脚本家を目指している二人にとって、時には調べることも必要だと言い、自分たちの将来に役立たせたいという。

「ですが、そんな前の事件でしたらもう解決しているのではないのでしょうか?」

 確かにそんな前の事件なら解決されていてもおかしくない。それこそ、当時の新聞を見ればわかるはずだ。

「それがさ、その事件は未解決のままお蔵入りになったみたいなんだ」

 颯希の言葉に月弥がそう話す。

「だから、その事件はお蔵入りのままなんだよ。まぁ、被害者がいたわけじゃないけど、どうせなら真実を見つけようと思ってさ♪」

 月弥が声を弾ませながら言う。

「どうする?颯希」

 静也が颯希に意見を求める。

「そうですね……。確かに解決していないのでしたら真相を突き止めたいところですね」

「でしょう?♪決まり……ネ♪」


 こうして、颯希と静也は月子と月弥と共に十二年前の放火事件を調べることにした。



「……分かりました。調べてみます……」

 同じころ、南警察署では颯希の父親である結城署長が木津と呉野にある極秘任務を指示した。



 しかし、これらがあんな事態になるとは誰も予想できずに……。



1.

「まず、当時の新聞を調べてみましょう!」

 学校が終わり、颯希たちは図書館に出向いた。町の中にあるそれなりに大きさのある図書館は、人が割と利用している。月子と月弥はいつもならお迎えが来るが、月子が電話をしてお迎えを断り、四人で図書館に訪れる。

 颯希たちは当時の新聞を調べるために図書館にあるパソコンを起動した。そして、十二年前の夏に起きた放火事件を調べていく。情報が十二年前の夏としか分からないので正確な日にちが定かではない。ざっと七月最初辺りから新聞を順番に見ていった。

 一つ一つ新聞を確認しながら記事を読んでいく。しかし、お目当ての記事はなかなか見つからない。

「やっぱり、記事にもならなかったくらい小さな事件なのかしらね……」

 探している記事がなかなか見つからないことに月子が落胆の声を出す。

「……新聞には載らなかったとしても、ネット記事にはもしかしたら何かしら上げられているんじゃないか?」

「その可能性はありますね!そちらで調べてみましょう!」

 静也の言葉に颯希がネット記事の方を確認する。

 検索で「放火・十二年前・未解決」といったキーワードを入れて検索をかける。

 すると、放火に関するいくつかの記事が出てきた。それを一つ一つ確認していく。すると、一つの記事に目が留まった。


『海がある静かな町で放火事件発生!!』


 記事の見出しにはそう書かれており、何処で放火が起こったかを読んでみると「桜台町」と書かれていた。

「「「……これだ!!」」」

 目当ての記事が見つかり颯希たちが声を出す。

 更に記事を読み進めて正確な日を調べていく。


『八月十一日。桜台町で夜の八時頃、放火が発生した。場所は小高い丘の上にある廃屋になった空き家。誰かが火をつけたものだと思われる。普段、あまり人通りがない場所のため、目撃者はいない。周りに民家も無かったことから被害は特に無いとのこと。警察は「放火事件」として捜査を開始』


 記事にはそう書かれていた。そして、その事件についてさらに深堀していく。しかし、それ以上は何も記事がなかった。日にちは分かったが、それ以上の手掛かりは見つけられない。

「……お父さんが何かを知っているかもしれないので帰ったら聞いてみますね」

 颯希がこれ以上の手掛かりが見つからないことに落胆し、誠なら何かを知っているのではないかと思い、話を聞いてみることを提案する。月子もそれに同意し、言葉を綴った。

「そうね、お願いするわ。……ところで、この近くに美味しいカフェがあるんだけど行ってみない?今回のことに協力してくれるお礼にお金は私が持つわよ♪」


 月子の言葉に颯希と静也は「分かった」と言い、みんなでそのカフェに足を運ぶことになった。 

「そのカフェは夫婦で経営しているのだけど、とっても美味しいのよ♪店の雰囲気も温かみがある感じね♪店自体はそんなに大きくないのだけど、ケーキも一つ一つ凝っているのよねぇ~♪紅茶もいろんな種類があってね♪紅茶もケーキも最高に美味しいのよ♪」

 月子が「ほうっ」という表情でそのカフェの魅力を語る。

「そうなのですね!何という名前のカフェなのですか?」

 月子の話に颯希が興味津々で聞く。

「『カフェ ボヌール』よ♪ボヌールってフランス語なんだけど、日本語に訳すと「幸せ」って意味なのよ♪なんか、娘さんがいて幸せになって欲しいからそういう名前にしたんですって♪」

「なんだか素敵ですね!楽しみなのです!」

 月子の話を聞いて颯希のワクワク感が溢れ出す。

「ここよ♪」

 月子がそのカフェの前で立ち止まり、指を差す。そこは一軒家のようなカフェだった。月子が先頭に立ち、カフェの扉を開ける。

「いらっしゃいませ!……って、あら、いらっしゃい、月子ちゃん」

 四十代くらいの女性が月子の顔を見て嬉しそうな声を出す。

「こんにちは、有子ゆうこさん。今日はお友達を連れてきたのよ♪」

「はじめまして、坂井さかい 有子ゆうこです」

 有子が柔らかくお辞儀をする。

「初めまして!中学生パトロール隊員の結城颯希です!」
「同じく、隊員の斎藤静也です!」

「……あのさ、お茶しに来ただけだよ?」

 カフェに来ているというのに颯希たちはなぜか敬礼のポーズで挨拶をする二人に月弥が思わず突っ込みを入れる。その様子に有子がくすくすと笑っている。

「楽しいお友達ね」

 有子がそう微笑みながら言うと、メニューをテーブルに置いてオーダーを聞く。颯希と静也はなにが良いのか分からなかったので、月子に任せることにした。

 しばらくして、紅茶とケーキが運ばれてきて、颯希の目がキラキラと輝く。

「おぉ~……!!本当に美味しそうなのです!!」

 颯希がキラキラ光線を放ちながら、そのケーキを頬張る。

 そして、静也たちもケーキを食べ始め、しばらくは楽しくみんなで談笑していた。


 まさか、このカフェがある事件に関係しているとは誰も予想しておらず、この後に怒涛の展開が待っているという事を颯希たちは気付いていなかった……。



「……木津さん、こちらの事件ですがやはり絡んでいるみたいですね」

「怪しいとは思っていたが、やっぱりか……」

 呉野の言葉に木津が苦々しく返事をする。

「他の怪しい事件も調べてみましょう……」

「そうだな……」

 そう言って、過去の事件を一つ一つ調べていく。その量は膨大な数だが、もしこのことが本当だとすれば放っておくわけにもいかない。

「途方の暮れる作業になりそうですね……」

 呉野が膨大な資料の前に深くため息を吐く。


 こうして、木津と呉野は極秘捜査に取り掛かっていった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました

ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公 某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生 さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明 これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語 (基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...