はい!こちら、中学生パトロール隊です!!

華ノ月

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最終章 そして、白い鳥たちは大空へ向かう

第5話

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「た……大変です!火事です!!」

 颯希たちが目にしたのは火事だった。かなり小さな焚き火くらいの火事だが、ここで広がったら大惨事になる可能性がある。

「火に土を被せるんだ!!」

 静也がそう言って周りの土を手で掴み火の中に入れる。颯希たちもそれに見習い土を被せていく。

 次第に火は弱まり、消えていった。


 ――――ざざざっ!!


 少しから離れたところから音がしてそちらの方向に颯希たちが顔をやる。すると、一人の深く黒いパーカーを被った人間が去っていくのが見えた。

「あの人が火を付けた人でしょうか……?」

 走り去っていく人を見て颯希がそう言葉を漏らす。

「恐らくそうだろうな……」

 静也がそう呟く。

「まぁ、何はともあれ、なんとかなったし良かったんじゃないかな?」

「そ……そうね……。突然のハプニングで余計に疲れたけど……」

 月弥が安堵したように言葉を綴り、隣でかなり息が乱れている月子がぐったりとした声で言う。

「……どうする?現場はもう少し先だけど行くか?それとも念のため戻るか?」

 月子の様子を心配したのか静也がそう言葉を綴る。

「今日は一旦帰るわ……。これ以上はきついし……」

 こうして月子の言葉で、現場を見に行くのはまた日を改めてという事になり、捜査を中断して戻ることにした。そして、月弥が家に電話をして迎えを頼む。その車で颯希たちも送っていくという事になり、颯希たちは雑木林を出た近くのコンビニで待つことにした。

「月子、これ飲んでちょっと落ち着くといいよ」

 月弥が月子の好きなミルクティーをコンビニで買って渡す。

「颯希ちゃんと静也くんもどうぞ♪」

 颯希たちの分まで買ってきたのか、月弥が颯希たちにも月子と同じ飲み物を渡す。

「ホントお前ら仲いいよな。好みまで知り尽くしているってか」

 静也が渡された飲み物を飲みながら言う。

「そうね♪好みも分かっているし、頼りになるのよね♪」

 月子がそう言って月弥の腕にしがみつく。

「ある意味カップルみたいな双子だな」

 静也が月子の態度に「双子という概念をぶっ飛ばしてないか?」という感じの勢いでそう言葉を綴る。

「そういえば、月子ちゃんと月弥くんはどちらが上なのですか?」

 颯希が疑問に思ったことを聞く。双子でも、姉か弟、兄か妹という事にはなるからそのことを問うているのだろう。

「私が姉で月弥が弟よ♪」

 月子が飲み物を飲んで少し回復したのか、弾むように答える。

「そうなのですね!お二人は誕生日はいつなのですか?」

 颯希が興味津々に聞く。

「私が六月十二日で月弥が九月二十五日よ♪」

「「……え?」」

 月子の言葉に颯希と静也が同時に声を出す。

「……なんで双子なのに誕生日が違うんだ?」

 静也がそう問う。

「それは……」

 説明しようと月子が言いかけた時だった。

「……ねぇ。あれ、さっきの犬じゃない?」

 月弥が先程の火事を見つけてくれた犬を発見して声を出す。

 犬はふらつきながら歩いていた。颯希たちが心配そうにその様子を眺める。

 すると……、


 ――――バタッ!!


「大変です!!」

 突然犬が倒れて颯希たちが傍まで駆け寄る。犬の呼吸は荒い。何かあるのかもしれないと思い、病院に連れて行こうにも犬はそれなりに大きい犬だ。抱えて歩くことは少し難しいところがある。救急車を呼ぶにしても、犬では難しいかもしれない。

 そこへ……。


 ――――パッパァァ!!


 一台の車がやってきた。車を見て月弥が叫ぶ。

河野こうのさん!この子を動物病院に連れて行きます!」

 車はどうやら月弥が呼んだ車らしく運転席から出てきた河野が犬を抱えて車に乗せた。颯希たちも同乗して動物病院へ向かう。

 動物病院に着き、診てもらうと犬は栄養失調という事だった。水と栄養を与えて犬は少し落ち着いたのか、荒かった呼吸が次第に治まってくる。

 そして、病院が終わり「犬を誰が連れて帰るか?」という事になり、颯希たちは相談することにした。

「私たちのところは無理ね。動物を飼うのは一切禁止されているのよ」

 月子がきっぱりと言葉を言い放つ。

「私のところはお母さんが動物が苦手なので難しいのです……」

 颯希が恐縮しながら言葉を綴る。そして、視線が一斉に静也の方に集まる。

「……ちょっと待ってろ。父さんに電話して聞いてみるから……」

 そうして、静也が拓哉に犬を飼っていいか電話をするのにみんなから少し離れたところで電話を掛ける。しばらくして戻ってくると颯希たちに告げた。

「構わないってさ。俺が面倒みるよ。平日なら基本父さんもいるし」

 こうして、犬は静也が引き取ることになり、その日は解散となった。


 颯希たちは気付いていなかった。聞き込みをしている辺りから一人の男がその様子を伺っていることを……。



「ただいまです!!」

 颯希が家に帰ると、元気よく声を上げた。犬のことが何とかなり安心したところもあるのだろう。

 颯希がリビングに行くと、佳澄は誰かと電話で話していた。電話の邪魔をしないようにそっと横を通り過ぎる。しばらくすると電話が終わり、佳澄が声を掛けた。

「お帰り、颯希。あら?なにか嬉しいことがあったの?」

 颯希の顔を見て佳澄がそう尋ねる。

「うん!ちょっとホッとしたことがあったのです!」

 そして、颯希が今日のことを話した。

「……じゃあ、その犬は無事に静也くんが引き取ってくれたのね」

 颯希の話を聞き、佳澄が安心したように言葉を綴る。

「そういえば、誰と電話していたのですか?」

 颯希が先程の電話が誰だったのかを聞く。

「お母さんが昔、仕事の関係でお世話になった人よ。娘さんがいるのだけど、その娘さんが今は回復して福祉施設で働いているっていうことを話してくれたのよ」

「その娘さんは病気か何かだったのですか?」

 颯希が佳澄の話にそう思い、口を開く。佳澄は話そうかどうかちょっと考えるそぶりを見せたが、「ちょっと長くなるからリビングで話しましょうか?」と、言ったので、二人でリビングにあるソファーに腰掛けると、佳澄がゆっくりと話しだした。

「娘さん……、かえでさんって言うのだけど、生まれつき障害を患っていてね。それ故に心までかなり病んでしまって長いこと暗闇を彷徨っていたの。医者からも回復の見込みはないと言われていたのよ。でも、それでも楓さんはいつか自分が良くなることを信じたのね。暗闇から這い上がって必死にその障害と向き合って治療に専念したそうよ。そしたら、ある時期を境にどんどん良くなって医者も驚いたくらいなの。それで、今は自分と同じ苦しみを抱えている人たちに希望を持って欲しくて障がい者福祉施設で働いているそうよ」

「……素敵なのです」

 佳澄の話を聞き、颯希が感嘆の声を漏らす。

「なんだか凄いのです!医者に回復の見込みがないとまで言われていたのに楓さんは諦めなかったのですね!いつか光が見えることを信じていたという事ですよね!」

 颯希が少し興奮気味で話す。

「えぇ、そうよ。今のところで本当に頑張っているみたい。そこの利用者さんにも慕ってくれている人は多いみたいよ」

 佳澄が穏やかに言葉を綴る。

「その楓さんに一度お会いしてみたいです!」

 佳澄の話を聞いて颯希が言う。その言葉に佳澄が「聞いておくわ」と言い、その後は佳澄としばらく談笑をしていた。



 深夜。


 ――――ボウっ!!パチパチパチ……。



 一台の自転車が火を付けられて燃えていた。

 それをある人物がほくそ笑みながら足早にその場を去っていく……。





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