104 / 128
最終章 そして、白い鳥たちは大空へ向かう
第18話
しおりを挟む
「……この中に入れて連れて行くぞ」
一人の男が他の男に指示をして、颯希と静也を大きなキャリーバッグの中に押し込む。そして、二人掛かりで一つずつキャリーバッグを車まで運んでいく。
「なぁ……、本当に良いのかよ……。こんな事して……」
一人の男が顔を青ざめながらそう言葉を綴る。
「俺たちに拒否権はないさ……。あのお人の言うことには逆らえんよ……」
指示を出している男がそう小さく言う。
「なんでこんなことに……。こんな事になるならあんなことしなきゃよかったぜ……」
別の男が悔しさが入り混じった声でそう言う。
「まさか、殺人を手伝うことになるとはね……。なんであんなことしちゃったんだろ……」
更に別の男が悲しそうな表情でそう言葉を綴る。
そして、二人掛かりで二つのキャリーバッグを車に押し込み、その場を去っていく。
その後ろを木津と呉野が追っていることを知らずに……。
「……ここに運ぶぞ」
指示役の男がそう言う。
そこは一つの人里離れた小さな倉庫だった。今はもう使われていないらしく、廃屋と化している。
男たちはそこにキャリーバッグを運び込むと、倉庫の中でキャリーバッグを開けて颯希たちを床に放り投げる。
「うっ……」
床に叩きつけられた衝撃で颯希と静也が苦しみまみれに声を出す。電気を流されたせいか、体がまともに動かない。
「……全く、忠告したよな?十二年前の放火事件を捜査するなと……。捜査を続けなかったら命を奪うまではしなかったんだよ?これは、忠告を無視した君たちが悪い。約束通り、死んでもらう……」
指示役の男が静かな声でそう言葉を綴る。
颯希たちの身体はまだ動かない。
「で……ですが、あの事件には……被害に遭った人がいます……。その人は未だに苦しんで……います……。放っておくことはできません……」
フラフラの頭で颯希が必死の想いで言葉を綴る。
「全く、正義感の強い嬢ちゃんだな……」
指示役の男が颯希の髪を乱暴に掴み、どこか憐れむような目で見る。
「その正義感が命を奪われることになるとは思っていなかっただろうよ……」
そう言って指示役の男が颯希の頭を床に叩きつける。
「颯希……!!」
静也が力が入らない声で颯希の名前を呼ぶ。
「じゅ……準備ができました……」
いつの間にか、居なくなっていた男が戻って来てそう言葉を綴る。
「……あの世で自分の正義感を呪うんだな……」
男たちがその場を離れていく。
その時だった。
――――ボウッ!パチパチパチ……。
火が放たれて倉庫の中でゆっくりと広がっていく。
――――ガチャーン!……ガリっ!!
倉庫の扉が閉まり、中から出られないために何かを扉の外から挟む音がした。
「……戻ってきましたね」
「……あぁ」
影からこっそりと様子を伺っている木津と呉野が小さく言う。男たちが車に乗り込む前にタバコを取り出し、吸っている。その時、呉野がある事に気付く。
「木津さん!例のキャリーバッグがありません!!」
「てことは……?!」
そう言うと、二人は顔を合わせ、その場から飛び出した。
「おい!お前ら!!」
木津が力強い声で叫ぶ。
「「「なっ……!!!」」」
木津と呉野の登場に男たちが驚きの顔をする。
「お前ら、持っていたキャリーバッグはどうした?あの中には何が入っていたぁぁ?!!」
一人の男の襟首を鷲掴みにして、木津が怒鳴るように叫ぶ。
「い……いや……その……」
襟首を鷲掴みにされている男が戸惑ったような声を出す。
「あれくらいの大きさならちょっと成長している子供でも、一人くらいは入るよね?」
「「「!!!」」」
呉野の言葉に男たちが驚愕の表情を見せる。
「やはり、お前ら……」
木津がそこまで言いかけた時だった。
「……なんだか焦げ臭いにおいがしませんか?」
呉野が風に乗ってきた匂いに顔をしかめる。
そして、顔を上げると微量の黒煙が立ち上っていた。
「ま……まさか……?!」
その黒煙は男たちが戻ってきた方向からだった。
「呉野!!消防車と救急車を呼べ!!」
「はい!!」
呉野が急いで消防車と救急車に電話を掛ける。木津は男たちが逃げ出さないように近くの太い木に全員を拘束させた。
「呉野!行くぞ!!」
「はい!!」
木津と呉野は急いでその場に向かった。
「くそっ!どうすりゃいいんだ?!」
静也がある程度身体が動くようになり、周りの火を見て言葉を吐く。
「颯希!しっかりしろ!!」
颯希は先程の頭を床に叩きつけられた衝撃でまだぼんやりしている。
「……こんなところで死なせるかよ!!」
颯希を抱きかかえて、出口がないかを探す。しかし、出入り口は何処も封鎖されており、何処にも出れるような場所がない。
「くそっ!どこか無いのか?!……ゴホッゴホッ!!」
煙で息がむせ返る。どこか安全な場所がないかを必死に探す。
その時だった。
「……あれは?!」
一人の男が他の男に指示をして、颯希と静也を大きなキャリーバッグの中に押し込む。そして、二人掛かりで一つずつキャリーバッグを車まで運んでいく。
「なぁ……、本当に良いのかよ……。こんな事して……」
一人の男が顔を青ざめながらそう言葉を綴る。
「俺たちに拒否権はないさ……。あのお人の言うことには逆らえんよ……」
指示を出している男がそう小さく言う。
「なんでこんなことに……。こんな事になるならあんなことしなきゃよかったぜ……」
別の男が悔しさが入り混じった声でそう言う。
「まさか、殺人を手伝うことになるとはね……。なんであんなことしちゃったんだろ……」
更に別の男が悲しそうな表情でそう言葉を綴る。
そして、二人掛かりで二つのキャリーバッグを車に押し込み、その場を去っていく。
その後ろを木津と呉野が追っていることを知らずに……。
「……ここに運ぶぞ」
指示役の男がそう言う。
そこは一つの人里離れた小さな倉庫だった。今はもう使われていないらしく、廃屋と化している。
男たちはそこにキャリーバッグを運び込むと、倉庫の中でキャリーバッグを開けて颯希たちを床に放り投げる。
「うっ……」
床に叩きつけられた衝撃で颯希と静也が苦しみまみれに声を出す。電気を流されたせいか、体がまともに動かない。
「……全く、忠告したよな?十二年前の放火事件を捜査するなと……。捜査を続けなかったら命を奪うまではしなかったんだよ?これは、忠告を無視した君たちが悪い。約束通り、死んでもらう……」
指示役の男が静かな声でそう言葉を綴る。
颯希たちの身体はまだ動かない。
「で……ですが、あの事件には……被害に遭った人がいます……。その人は未だに苦しんで……います……。放っておくことはできません……」
フラフラの頭で颯希が必死の想いで言葉を綴る。
「全く、正義感の強い嬢ちゃんだな……」
指示役の男が颯希の髪を乱暴に掴み、どこか憐れむような目で見る。
「その正義感が命を奪われることになるとは思っていなかっただろうよ……」
そう言って指示役の男が颯希の頭を床に叩きつける。
「颯希……!!」
静也が力が入らない声で颯希の名前を呼ぶ。
「じゅ……準備ができました……」
いつの間にか、居なくなっていた男が戻って来てそう言葉を綴る。
「……あの世で自分の正義感を呪うんだな……」
男たちがその場を離れていく。
その時だった。
――――ボウッ!パチパチパチ……。
火が放たれて倉庫の中でゆっくりと広がっていく。
――――ガチャーン!……ガリっ!!
倉庫の扉が閉まり、中から出られないために何かを扉の外から挟む音がした。
「……戻ってきましたね」
「……あぁ」
影からこっそりと様子を伺っている木津と呉野が小さく言う。男たちが車に乗り込む前にタバコを取り出し、吸っている。その時、呉野がある事に気付く。
「木津さん!例のキャリーバッグがありません!!」
「てことは……?!」
そう言うと、二人は顔を合わせ、その場から飛び出した。
「おい!お前ら!!」
木津が力強い声で叫ぶ。
「「「なっ……!!!」」」
木津と呉野の登場に男たちが驚きの顔をする。
「お前ら、持っていたキャリーバッグはどうした?あの中には何が入っていたぁぁ?!!」
一人の男の襟首を鷲掴みにして、木津が怒鳴るように叫ぶ。
「い……いや……その……」
襟首を鷲掴みにされている男が戸惑ったような声を出す。
「あれくらいの大きさならちょっと成長している子供でも、一人くらいは入るよね?」
「「「!!!」」」
呉野の言葉に男たちが驚愕の表情を見せる。
「やはり、お前ら……」
木津がそこまで言いかけた時だった。
「……なんだか焦げ臭いにおいがしませんか?」
呉野が風に乗ってきた匂いに顔をしかめる。
そして、顔を上げると微量の黒煙が立ち上っていた。
「ま……まさか……?!」
その黒煙は男たちが戻ってきた方向からだった。
「呉野!!消防車と救急車を呼べ!!」
「はい!!」
呉野が急いで消防車と救急車に電話を掛ける。木津は男たちが逃げ出さないように近くの太い木に全員を拘束させた。
「呉野!行くぞ!!」
「はい!!」
木津と呉野は急いでその場に向かった。
「くそっ!どうすりゃいいんだ?!」
静也がある程度身体が動くようになり、周りの火を見て言葉を吐く。
「颯希!しっかりしろ!!」
颯希は先程の頭を床に叩きつけられた衝撃でまだぼんやりしている。
「……こんなところで死なせるかよ!!」
颯希を抱きかかえて、出口がないかを探す。しかし、出入り口は何処も封鎖されており、何処にも出れるような場所がない。
「くそっ!どこか無いのか?!……ゴホッゴホッ!!」
煙で息がむせ返る。どこか安全な場所がないかを必死に探す。
その時だった。
「……あれは?!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました
ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公
某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生
さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明
これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語
(基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる