108 / 128
~番外編~ 夏の花は優しい日差しに包まれる
第2話
しおりを挟む
急激に距離を縮めていく透と芽衣に芹香はどこか焦りを感じていた。透と話が合う芽衣に羨ましさを感じている。部活も透と同じ文芸部に入ったことを知り、気持ちがより焦ってしまう。それを横で見ている真奈美がアドバイスをする。
「そんなに気になるなら、話しかければ?」
真奈美の言葉に芹香はちょっと暗い表情で言う。
「だって、透に話しかけるなって言われているし……」
芹香にしては珍しく弱音を吐く。そこへ真奈美が突っ込みを入れる。
「今まではそう言われていても平気で話しかけていたくせに、ここで怖気づくの?」
真奈美の言葉に芹香は何も言うことができない。
『このままでは気持ちが暗くなってしまう……』
芹香はそう感じて勇気を出して話しかけることを決意した。
ある日の昼休み。
昼食が終わり教室に戻ると、透と芽衣が仲良くおしゃべりをしている。芹香がそこに声を掛けた。
「やっほー!透!芽衣ちゃん!何の話してるの?」
突然声を掛けてきた芹香に透が低い声で言う。
「話しかけるな、バカでか女」
芹香の周りで吹雪が起こり、頭に雪が積もっていく。その芹香を放って透と芽衣は教室を出る。その様子に真奈美が声を掛ける。
「……そのままだと氷漬けになるわよ?」
真奈美がお湯をかけて芹香が正気に戻る。そして、芹香が小声でポツリと囁く。
「……広がり過ぎた溝ってもう埋めることも難しいのかな?」
透と芽衣が仲良くお話ししているのを遠くからしか見ることができなくなっている芹香は、心にどこか穴の開いた感覚に陥っていった。
そんな日々が続いた頃、珍しく芽衣から芹香に話しかけた。
「ちょっといい?良かったら一緒に来てくれる?」
そう言って、芽衣は芹香を屋上に連れ出す。
屋上に上がると雲一つない空が広がっていた。屋上のフェンスに芽衣が寄りかかって口を開く。
「阿久津さん、透くんと幼馴染みなんだってね。でも、透くんに全然相手されてないけど……。あのね、私……」
そう言って、呼吸を一つして真剣な目つきになって言葉を紡ぐ。
「私、透くんが好きなの。阿久津さんは『可愛い透くん』って言うだけよね?なら、私が透くんと付き合っても何の問題もないわよね?」
芽衣の言葉に何も言うことができないでいる芹香。そして、芽衣が更に言葉を投げかける。
「身長的にも私の方が透くんと釣り合うしね」
身長の事を言われて余計に何かを言うことができなくなる。分かっていた……。自分では釣り合わないってことに気付いていた……。そりゃあ、自分より小さくて可愛い芽衣の方が透とお似合いなのも分かっている。
「阿久津さんって、体は大きいのに気は小さいのね。私、透くんに告白するの。一応、あなたには伝えておこうと思ってね……」
芽衣はそう言って去っていく。一人残された芹香は呆然として何も言葉を発することができない。
屋上で芽衣が去ると入れ違いに真奈美がやってきた。
「芹香!大丈夫?!」
真奈美が芹香のところに駆け寄っていく。
「クラスメイトから土方さんが芹香を連れてどっか行ったって言うから探していたのよ?!……芹香?」
真奈美は芹香に早口で言うが、芹香の瞳が暗い影を纏っていることに気付く。
「何があったの?」
しばらくして、落ち着きを取り戻した芹香がさっきの出来事をポツリポツリと話し始めた。
「……そんなことがあったとわね。ある意味、自分たちの邪魔をしないでね!ってことよね?」
「うん、だよね……」
真奈美の言葉に芹香は項垂れるようにそう答えると、顔を両手で叩いて笑い顔を見せた。
「まぁ、仕方ないよね!確かに身長でいくと透と芽衣ちゃんの方がお似合いだし、話も合うだろうし……わ……私ではそりゃあ……無理……だよ……ね……」
話しながらどんどんと涙目になっていく。
自分の身長の高さを呪いたい感覚になる。
でも、どうしようもないことだ。
分かっている。
分かっているがこの理不尽な身長差がとても憎く思えた。
その様子に真奈美が言葉を紡ぐ。
「……とりあえず、次の授業はサボり決定ね」
放課後になり、透と芽衣は文芸部に向かった。部室に入ると、芽衣はパソコンを開き小説の続きを書き始める。その横で透はある小説とノートとペンを出した。
「透くんって、ホントに登場人物の性格や性質を考察するのが好きだよね」
感心するように芽衣が言う。
そう、透の趣味は小説の登場人物を自分なりに考察して分析すること。そういうことをすることによって更に物語を楽しんで読むことができるという。芽衣は元々物語を書くのが好きなので気ままに物書きの真似事のような感じでお話を書いていた。透は真剣な表情でノートに考察したことを書いていく。その横顔を見ながら芽衣が言う。
「あのね、透くん。私……」
そう言って芽衣がある事を伝える。
透はその言葉に虚を突かれる。
そして、最後に答えた。
「……いいよ」
透の言葉に芽衣が笑顔になる。
「よろしくね、透くん」
「こっちこそよろしくな、土方」
そう言葉を交わして透と芽衣が握手をした。
「そんなに気になるなら、話しかければ?」
真奈美の言葉に芹香はちょっと暗い表情で言う。
「だって、透に話しかけるなって言われているし……」
芹香にしては珍しく弱音を吐く。そこへ真奈美が突っ込みを入れる。
「今まではそう言われていても平気で話しかけていたくせに、ここで怖気づくの?」
真奈美の言葉に芹香は何も言うことができない。
『このままでは気持ちが暗くなってしまう……』
芹香はそう感じて勇気を出して話しかけることを決意した。
ある日の昼休み。
昼食が終わり教室に戻ると、透と芽衣が仲良くおしゃべりをしている。芹香がそこに声を掛けた。
「やっほー!透!芽衣ちゃん!何の話してるの?」
突然声を掛けてきた芹香に透が低い声で言う。
「話しかけるな、バカでか女」
芹香の周りで吹雪が起こり、頭に雪が積もっていく。その芹香を放って透と芽衣は教室を出る。その様子に真奈美が声を掛ける。
「……そのままだと氷漬けになるわよ?」
真奈美がお湯をかけて芹香が正気に戻る。そして、芹香が小声でポツリと囁く。
「……広がり過ぎた溝ってもう埋めることも難しいのかな?」
透と芽衣が仲良くお話ししているのを遠くからしか見ることができなくなっている芹香は、心にどこか穴の開いた感覚に陥っていった。
そんな日々が続いた頃、珍しく芽衣から芹香に話しかけた。
「ちょっといい?良かったら一緒に来てくれる?」
そう言って、芽衣は芹香を屋上に連れ出す。
屋上に上がると雲一つない空が広がっていた。屋上のフェンスに芽衣が寄りかかって口を開く。
「阿久津さん、透くんと幼馴染みなんだってね。でも、透くんに全然相手されてないけど……。あのね、私……」
そう言って、呼吸を一つして真剣な目つきになって言葉を紡ぐ。
「私、透くんが好きなの。阿久津さんは『可愛い透くん』って言うだけよね?なら、私が透くんと付き合っても何の問題もないわよね?」
芽衣の言葉に何も言うことができないでいる芹香。そして、芽衣が更に言葉を投げかける。
「身長的にも私の方が透くんと釣り合うしね」
身長の事を言われて余計に何かを言うことができなくなる。分かっていた……。自分では釣り合わないってことに気付いていた……。そりゃあ、自分より小さくて可愛い芽衣の方が透とお似合いなのも分かっている。
「阿久津さんって、体は大きいのに気は小さいのね。私、透くんに告白するの。一応、あなたには伝えておこうと思ってね……」
芽衣はそう言って去っていく。一人残された芹香は呆然として何も言葉を発することができない。
屋上で芽衣が去ると入れ違いに真奈美がやってきた。
「芹香!大丈夫?!」
真奈美が芹香のところに駆け寄っていく。
「クラスメイトから土方さんが芹香を連れてどっか行ったって言うから探していたのよ?!……芹香?」
真奈美は芹香に早口で言うが、芹香の瞳が暗い影を纏っていることに気付く。
「何があったの?」
しばらくして、落ち着きを取り戻した芹香がさっきの出来事をポツリポツリと話し始めた。
「……そんなことがあったとわね。ある意味、自分たちの邪魔をしないでね!ってことよね?」
「うん、だよね……」
真奈美の言葉に芹香は項垂れるようにそう答えると、顔を両手で叩いて笑い顔を見せた。
「まぁ、仕方ないよね!確かに身長でいくと透と芽衣ちゃんの方がお似合いだし、話も合うだろうし……わ……私ではそりゃあ……無理……だよ……ね……」
話しながらどんどんと涙目になっていく。
自分の身長の高さを呪いたい感覚になる。
でも、どうしようもないことだ。
分かっている。
分かっているがこの理不尽な身長差がとても憎く思えた。
その様子に真奈美が言葉を紡ぐ。
「……とりあえず、次の授業はサボり決定ね」
放課後になり、透と芽衣は文芸部に向かった。部室に入ると、芽衣はパソコンを開き小説の続きを書き始める。その横で透はある小説とノートとペンを出した。
「透くんって、ホントに登場人物の性格や性質を考察するのが好きだよね」
感心するように芽衣が言う。
そう、透の趣味は小説の登場人物を自分なりに考察して分析すること。そういうことをすることによって更に物語を楽しんで読むことができるという。芽衣は元々物語を書くのが好きなので気ままに物書きの真似事のような感じでお話を書いていた。透は真剣な表情でノートに考察したことを書いていく。その横顔を見ながら芽衣が言う。
「あのね、透くん。私……」
そう言って芽衣がある事を伝える。
透はその言葉に虚を突かれる。
そして、最後に答えた。
「……いいよ」
透の言葉に芽衣が笑顔になる。
「よろしくね、透くん」
「こっちこそよろしくな、土方」
そう言葉を交わして透と芽衣が握手をした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました
ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公
某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生
さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明
これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語
(基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる