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第一章 紡がれる日常

第30話

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 流通がいい感じに巡っているらしい、主にアー君らの知り合いの間で。
 でもアー君達の知り合いって国の上層部も多いし、つまり国同士のやり取りが盛んってことでいいのかな?

 僕はそういった事とはほぼ無縁で、基本我が家でのんびりしています。
 外に遊びに行くと冗談みたいな影響があちこちに出るからね、でも一度行ったダンジョンはえっちゃんに頼んでたまにこっそり遊びに行っている。
 でも魔物が理性的になったり愉快になったりしてしまうので即バレるけどね!

「だからここのダンジョンはとても都合がいい!」
「アルジュナ様ー、神子様が開き直ってますぜ」

 目を盗んでダンジョンに入ろうとしたのをアー君に回収され、ギルドに併設されている酒場に連れてこられました。
 カウンターの中で僕の話を聞いてくれているのはアー君のストーカーじゃなくて、アー君親衛隊の一人、料理が趣味だと聞いたアー君が週末だけという条件でここの酒場に通ってもらっているらしい。

 将来の夢はアー君の私邸でアー君の為だけにその腕を振るうことだそうです。
 アー君の親衛隊、こんな人ばっかりなんだよなぁ、今何人ぐらいいるんだろう。

「はいはい、ママ興奮しないでこれでも食べて」
「これなぁに?」
「秋のダンジョンで採れたキノコをふんだんに使ったキノコの炊き込みご飯と、シャインマスカットを使ったミニパフェ、他にも食べて欲しいものあるから少量にしておいた」

 小さなお茶碗に盛られたご飯を一口、うーんちょっと味が濃い?
 何かの味がキノコの邪魔をしているような。

「どう?」
「うーん、何かしょっぱい味が強くてキノコの味がよく分からないかなぁ」
「しょっぱい? これ何使ってるっけ?」
「塩漬けした鮭を半身ほど混ぜています」
「少し量を減らした方がいいみたい、パフェはどう?」

 週末限定の秋の味覚研究会?
 ほらほらと促されてパフェも一口、こちらは間にあるジャムが主役を奪っている感じ?

「ジャムの味が強いかなぁ、これ何のジャム?」
「涼のおススメ、葡萄の女王」
「ジャムにするものが間違ってると思う」

 そりゃぁ主役取られる訳だ。

「あと底にあったものがゴリゴリする」
「それ栗だったかな」
「なんでパフェに入れたの? ご飯に入れようよ」
「栗のお菓子あるしいけると思った。ダメだった?」
「組み合わせ考えよう?」

 アドバイス出来るほどの知識はないけど、普通の舌は持っているはず。
 ドリちゃんのおかげで大分舌は肥えたと思うんだけど、ちょっと自信ないなぁ。
 
「女王様を主役に据えて、シャインマスカットは添えるだけの方がまだマシになるんじゃない? 栗は別に使う方が無難かな」
「分かった。シャインマスカットまだあったかな?」
「涼玉様が朝一で呪文遊びしていましたので、在庫には余裕があります」
「あのブームまだ続いているんだ」

 涼玉の葡萄に対する思いが熱いなぁと思ったら、そもそもあの子の名前自体が葡萄の品種でした。

「その時にグラの子が一緒に来てたらしく、水龍と出会って数秒で番った」
「相変わらず高確率で運命の出会いが発生するねぇ」

 水龍とコンビを組んでいた帝国王子は龍とドラゴン、両方に乗れて大喜びだそうです。
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