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祭事
女神side
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冷静になった女神は心の中でやべぇと呟いた。
目の前には上機嫌で女神にお酌をする女神の愛し子。
自分の愛する世界でただ酒とイベントを体験できる喜びに「任せて」と言い切ったが、前言撤回したかった。
(雪なんて無理だから、仕組み知らないし、そもそも雪降る日って寒いからなんか遠い昔に雪降らないように設定した上でパスかけた気がする)
そしてわざと忘れやすいパスワードを設定したせいで本当に忘れてしまった。もちろんメモなんて存在しない。
(雪って天候の一環だよな? ならルネでいいじゃん! 良くねぇよ!)
口ではクリスマスイベントを熱く語りながらも、心の中では雪を降らす方法を必死で模索する。
(日本ではこういう時に神頼みするんだよな……って私がこの世界の神だよ! うぁぁぁ焦る!)
焦れば焦るほど口からは酒の銘柄しか出てこない。
いつもは呆れたような表情で聞き流すイツキがにこにこと頷きながら聞いている、隣ではアカーシャがうんうんと頷きながら銘柄を覚えようと努力をしていて……。
(言えねぇ、言ったら最後、二度と酒を出して貰えない予感!)
それどころか今飲んでいる酒も取り上げられるだろう。
いつもなら「昼間から飲まない!」と怒られて一切出してくれないのに、これから働いてもらうからと出された酒は刀国一の蔵元の新作エールだった。
(泣きたい)
主がいたならば切り抜ける事は可能だっただろう、だが本日は不在である。
ふと視線を感じてちらりと見やれば、主の御子であるアルジュナがじーっと女神を見つめていた。
視線が合うと指で自分の頭をとんとんと叩き、声には出さず「念話」と告げられた。
(女神よ、もしや雪を降らせる事が出来ないのか?)
(そ、そんな事なぁいっすよ?)
何をおっしゃっいますのぉ? 不自然極まりない口調で返せばッハと鼻で笑われた。気がした。
(そうか、雪を降らせる方法があるのだが必要なかったか)
(申し訳ありませんでした。その深き叡智を私めにお分けいただけませんでしょうか)
(簡単な話だ。『氷龍』を連れて来れば私が雪を降らせよう)
(全くこれっぽっちも簡単じゃないっすねーー!)
『氷龍』
主の内にある神炎龍の対とも呼ばれる神話級の龍の名称である。
神話を読み進めれば幾度か名前は出てくるものの、現存するかは不明だ。
(他に方法は……)
(白を集めて天に捧げれば――あ、これは白い闇の作り方だった。理を操作して特定の日に降るように設定すればよい)
(すみません、設定に鍵をかけてそれを無くしました)
(精霊に頼んで雪を降らせてもらう)
(この世界の精霊は魔物扱いで、雪を降らせる能力持ちはいません)
(死ぬ気で鍵を思い出す)
(千年以上前なんですぅぅ)
段々御子の目が死んで来た。
(血の雨なら簡単なんだがな)
(慶事なんでさすがに)
(分かっている。母上に怒られる事はしない)
怒らせたら好きなものを当分出してもらえないしな、と言う言葉には強く同意した。
(………………父上に泣きつく)
呆れたような声で上司に土下座しろと言われた。
今まで上げられた条件のハードルが高かっただけに、なんだかそれが一番簡単な事に思えてしまった。
(そうします)
会話を終えた頃には目の前に小さなプレートに盛られた酒のつまみと熱燗、イツキが居た場所には養子として迎えられたブランが居てひたすら頷いていた。
『母様、じいじと連絡取るって行っちゃったの』
「アカーシャも、あの、ギレンさんと連絡取るって」
『お酒とおつまみ、前払いって言ってたの』
逃げ道は塞がれていた。
アー君が一つ頷いた。
ジャンピング土下座で主が動いてくれる事を祈るしかない。
目の前には上機嫌で女神にお酌をする女神の愛し子。
自分の愛する世界でただ酒とイベントを体験できる喜びに「任せて」と言い切ったが、前言撤回したかった。
(雪なんて無理だから、仕組み知らないし、そもそも雪降る日って寒いからなんか遠い昔に雪降らないように設定した上でパスかけた気がする)
そしてわざと忘れやすいパスワードを設定したせいで本当に忘れてしまった。もちろんメモなんて存在しない。
(雪って天候の一環だよな? ならルネでいいじゃん! 良くねぇよ!)
口ではクリスマスイベントを熱く語りながらも、心の中では雪を降らす方法を必死で模索する。
(日本ではこういう時に神頼みするんだよな……って私がこの世界の神だよ! うぁぁぁ焦る!)
焦れば焦るほど口からは酒の銘柄しか出てこない。
いつもは呆れたような表情で聞き流すイツキがにこにこと頷きながら聞いている、隣ではアカーシャがうんうんと頷きながら銘柄を覚えようと努力をしていて……。
(言えねぇ、言ったら最後、二度と酒を出して貰えない予感!)
それどころか今飲んでいる酒も取り上げられるだろう。
いつもなら「昼間から飲まない!」と怒られて一切出してくれないのに、これから働いてもらうからと出された酒は刀国一の蔵元の新作エールだった。
(泣きたい)
主がいたならば切り抜ける事は可能だっただろう、だが本日は不在である。
ふと視線を感じてちらりと見やれば、主の御子であるアルジュナがじーっと女神を見つめていた。
視線が合うと指で自分の頭をとんとんと叩き、声には出さず「念話」と告げられた。
(女神よ、もしや雪を降らせる事が出来ないのか?)
(そ、そんな事なぁいっすよ?)
何をおっしゃっいますのぉ? 不自然極まりない口調で返せばッハと鼻で笑われた。気がした。
(そうか、雪を降らせる方法があるのだが必要なかったか)
(申し訳ありませんでした。その深き叡智を私めにお分けいただけませんでしょうか)
(簡単な話だ。『氷龍』を連れて来れば私が雪を降らせよう)
(全くこれっぽっちも簡単じゃないっすねーー!)
『氷龍』
主の内にある神炎龍の対とも呼ばれる神話級の龍の名称である。
神話を読み進めれば幾度か名前は出てくるものの、現存するかは不明だ。
(他に方法は……)
(白を集めて天に捧げれば――あ、これは白い闇の作り方だった。理を操作して特定の日に降るように設定すればよい)
(すみません、設定に鍵をかけてそれを無くしました)
(精霊に頼んで雪を降らせてもらう)
(この世界の精霊は魔物扱いで、雪を降らせる能力持ちはいません)
(死ぬ気で鍵を思い出す)
(千年以上前なんですぅぅ)
段々御子の目が死んで来た。
(血の雨なら簡単なんだがな)
(慶事なんでさすがに)
(分かっている。母上に怒られる事はしない)
怒らせたら好きなものを当分出してもらえないしな、と言う言葉には強く同意した。
(………………父上に泣きつく)
呆れたような声で上司に土下座しろと言われた。
今まで上げられた条件のハードルが高かっただけに、なんだかそれが一番簡単な事に思えてしまった。
(そうします)
会話を終えた頃には目の前に小さなプレートに盛られた酒のつまみと熱燗、イツキが居た場所には養子として迎えられたブランが居てひたすら頷いていた。
『母様、じいじと連絡取るって行っちゃったの』
「アカーシャも、あの、ギレンさんと連絡取るって」
『お酒とおつまみ、前払いって言ってたの』
逃げ道は塞がれていた。
アー君が一つ頷いた。
ジャンピング土下座で主が動いてくれる事を祈るしかない。
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