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湯水のごとくお金を使おう

第607話

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 顔を上げたその人は、とても淡い印象の美人さんだった。
 うわー、睫毛長い。
 髪も瞳も綺麗な紫色だけど、なんで泣きそうにうるうるしてるんだろう……って、僕のせいか。

 メンタル弱いな。

 大丈夫だろうか、これから生まれる世界、今までの常識持ったままだとかなりしんどいよ?
 アー君も最初は生まれたくないって駄々こねて大変だったもの。

 今は開き直って婚約者二人もいる上に、父親である騎士様を振り回しまくって異世界生活を全力で楽しんでいるよね。
 たまに女神様から知識盗んだり、この世界では使えない技術を生み出して春日さんに売ったり、いや本当にやりたい放題。

「前世持ちですよね?」

 静かに一つ頷かれた。

「魔族です、私が不甲斐ないばかりに……嗚呼」

 ああまた泣き出した。
 精神が不安定過ぎないかな?

 いや待って、魔族?

 身近にいたような?
 誰だっけ?

「私は間違え続けた。間違えて、親友の手を取り損ね、闇に落ちた」

 多分その親友は騎士様なんだろうな。
 言っていいだろうか「僕、親友さんの息子三人ほど生んでます」って。

 三人だけだよね?
 あれ?
 ちょっと自信なくなってきた。

 まぁいいか。

「封じられた先の記憶はない、いつ死んだのかも分からない、ただ温かな光を見つけて、気付いたらここにいた」

 この人、アー君と違って闇落ちしたままなんじゃない?
 生まれて大丈夫だろうか、一応クリーンかけておこう。

「でも近付くと温かいというより熱くて、戸惑っていたらどんどん先を越されてしまって」

 ヨムちゃんとか雷ちゃんとかのことだよね。
 もしや騎士様関係者が転生しようとして渋滞してる感じ? あと何人ぐらい続いているかとか分からないだろうか。

「勇気を出して一歩踏み出したら……あの……」

 なぜ僕を見て顔を赤くするんだろうか。

「小さな体で二人同時に相手するだけでなく、両方同時に受け入れているところで」

 ぶふーーー

 見られてた!!

「母上と呼ばれているのに男の子で」

 それは腐女神のせいなので諦めてください。

「しかも母上と呼んでいる方からは血族の気配がするし、怖くなって逃げ出そうとしたけど魂が固定されて逃げられなかった」

 僕、女神様から授けられたスキルで流産知らずなんです。

「この世界、怖いっ!」

 また泣き出してしまった。

「人生のやり直しなんてもう望まないから、静かに生きたいっ!!」

 無理だと思う。

 口には出さなかったけど、気配で何となく伝わってしまったようで、めそめそから号泣に変わってしまった。
 繊細過ぎる。
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