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君を愛することはない系 1-5

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「――ということがあったんだ」
「ふーん」

 今日あった出来事を話すと、彼女は気のない返事をした。
 つれないなぁ。

「聞いてくれよ~」
「はいはい、大変だったわね。それより口を開けなさい」
「はぁ~い」

 俺は今、愛しの婚約者に食べさせてもらっている。そう最強イベントの一つ「あーん」です。

 食堂のど真ん中で!!

 いやぁ~、皆こっち見てますねぇ! そりゃぁそうだよね! この学園で一番の有名カップルだもんな!! 羨ましいか!うらやましかろう!!
 ポイントはニヤニヤしない、嬉しさを表に出さない!出したら最後、正気に戻ってイベントが終了してしまう。
 それだけは絶対に避けなければ!!!

 ピンク、お前の名前は正直覚えていないが、婚約者のデレを引き出したことだけは表彰状を与えるぐらい感謝している。
 このデレタイム、彼女の妹と俺の間では「ご褒美タイム」と呼んでます。

「美味しい?」
「最高です!」
「良かった」

 婚約者の笑顔ゲットォ! 俺は心の中でガッツポーズをする。
 あ、ヘラヘラは大丈夫、だって俺いつも彼女の前ではヘラヘラデレデレしててこれが普通みたいなもんだからな!
 ニヤニヤとどこが違うかって?
 俺もよく分からない、でも見抜かれるから油断は禁物だぜ!

「ほら、次は貴方の好きなチキンソテーよ」
「はーい」

 皆さんお気付きになりましたか?
 そう、あれこれ言いながらも彼女、俺の好物を把握済みでぇぇす!
 さすが俺の婚約者! 

「はい、あーん」
「あーん」

 パクっと一口で食べる。
 うん、うまい!
 
「次はデザートよ」
「おぉ!」

 これは期待大ですね!

「はい、あーん」
「あーん」
「どう?」
「甘さ控えめでいいね、これなら甘いものが苦手な者も食べれるだろう」
「そう、それは良かったわ」
「もちろん君が作ってくれる物の方が美味しいよ」

 貴族なのに手料理作るんですよ、俺の嫁。
 愛情が込められたあの料理には宮廷の料理人も敵わないさ!

「……ありがとう」

 はい、照れ顔いただきましたぁぁぁ! あぁ可愛い!可愛すぎる!天使か!
 前世を思い出すと同時にそれまでの記憶を全て失った俺に、全てを与えなおした子だもんな、天使じゃなくて女神かも!

 ちなみに俺の記憶喪失のことを知っているのは家族と婚約者、婚約者の妹だけだ。
 俺の両親と兄貴は人としてやっていけるのか心配してるらしいが、気のせいか心配の理由が記憶喪失とは違う気がするんだよな。まぁいいや、とにかく婚約者最高!
 
「これで最後よ、はいあーん」
「あーん」

 あぁ幸せだなぁ。
 ずっとこんな日が続くといいなぁ……。
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