33 / 90
聖女を倒そう! 1-3
しおりを挟む突然現れた白い鎧は祭壇の真正面に剣を突き刺すと、次に周囲に蝋燭台を設置し始めた。
「何をしているのでしょう?」
「分からないけど変なのは確かだね」
困惑しながらも観察を続けていると、白い鎧がおもむろに箱を取り出し、今度は花の飾りつけを始めた。
一通り設置し終えて満足げに呟く。
「完璧」
……えぇ……。
「お花綺麗だね」
僧侶が感想を漏らすが、それに応える者はいない。
すると突然から拍手の音が鳴る。
「ちょーいい感じ!」
「ありがとうございます!」
現れたのはあのダークエルフの幼児だった。
飾り付けられた祭壇を見渡して偉そうに頷いている。それに対し白い鎧も嬉しそうに答えている。
……何がしたいんだこいつら。
呆れている間に話は進んでいく。
「んじゃそろそろ始めよっか!」
「はい!」
二人は手を繋ぐと部屋を出て行った。
「どう、しますか?」
僧侶が問う。
このまま観察すべきか、それとも別の経路を探して逃げるべきか……。
少し考えてから答える。
「アイツらの目的を調べたい。追いかけ――」
―――バァンッッ!!
こうして謎の儀式を追うことを提案しかけたその時、ダークエルフと白い鎧が出て行った扉が大きく開かれた。
あっぶなぁぁ!!
今出てたら見つかってた!
マジ焦ったわ!危ねぇ!セーフ!!! ふぅぅ、心臓バクバクだぜ!冷や汗止まらんぞオイ。
よし落ち着いた!これで大丈夫!冷静に対処できるはずだ! 俺は大きく深呼吸をして気を取り直す。
まず状況を確認しよう。
扉は勢いよく開けられて今も開きっぱなしになっている。そしてそこに立っていたのは仲間を引き連れたおっさんだった。
背丈から見て年齢は30歳過ぎぐらいだろうか?
「……ここか」
低く冷たい声。
まるで俺たちがいることを見抜いているかのように殺気を放っている。
ヤバイな。只者じゃない。
これは間違いなく強いぞ。
それに引き連れているのは恐らく騎士だろう。揃いの装備を身に付けており、全員がかなりの実力者だと思われる。
どうしよう……勝てるのか?いや無理ゲーすぎだろ。こんなんどうやって戦えば良いんだよ。そもそも戦う必要ある?逃げれば良くない?ダメ?
頭の中でぐるぐると考えを巡らせていたが、結局答えは出ずじまいだった。
まあしょうがない。なるようになるしかないのだ。
俺が覚悟を決めている間に奴らは祭壇の前に移動し、先頭にいたおっさんが聖剣の前に立っていた。
「これが聖剣か」
「美しい剣ですね、陛下が使うのに相応しい」
陛下……おっさんなんて言ってすみませんでした、そのまま俺たちに気付かないでお帰りください。
心のなかで土下座をしながら祈っていたのが通じたのか、こちらに気付かず物事は進行していく。
そしておっさんが聖剣に手を伸ばし掴んだ。
次の瞬間――。
――バァン!!
再び扉が開かれて誰かが入ってきた。
「ごめん、一個演出抜けてたんよ!」
「一瞬待つです!」
「すみません、すみません」
入ってきたのは先ほど出て行ったはずのダークエルフと白い鎧、そして純白の小さな豹だった。
「え、この状態で?」
「おまけマシマシしますから!」
「すぐ終わりますので!」
言いながら三人は祭壇へと近づいていく。
小さな豹が飛び上がって設置された蝋燭の上を駆け、目に見えぬ速度で火を灯している。
「オッケーでっす!」
「神聖な雰囲気大事! おっちゃんごめん!」
「構わぬよ」
「ありがとうございます!!」
おっさんが許すと、白い鎧がでっかい声で礼を言って勢いよく頭を下げた。
アイツどういうポジションなんだろう。
さっきもなんか一人で喋ってたし。
それはそれとして状況はどんどん進んでいく。
「では行くぞ」
「はい、いつでもどうぞ」
おっさんの身体を光が包み、その光は天へと昇り柱のように輝き続ける。
そして聖剣からも同じく眩いばかりの光の粒子が舞い上がり、二つの光が重なり、混ざりって一つとなった時、聖剣が台座から抜かれた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる