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とある生徒の、普通とは少し違った日常。 1-9
しおりを挟むそれから数日、僕らはいつも通りの日常を送っていた。
その間も色々な噂は耳に入ってくる。
曰く、邪神は恐ろしい、血も涙もない、人を人と思っていない、等々……。
斬新さの欠片もない噂が入るたび、クラスメイトがケラケラと笑ってはネタにしている。
「誰だよ、邪神に対して血も涙もないって当たり前のこと言ったの!!」
「俺が聞いたのは蛇を丸呑みしていたのを見たってやつかな」
「それただの食事風景だよな?」
「え、それで騒いでて大丈夫? あいつらが目指してるの人間丸呑みだぜ?」
なんでも人間を丸呑みできて一人前、相手に気付かれずに傷一つ負わせることなく丸呑み出来るのはもっとカッコイイらしい。
基準が怖い。
そんな会話をしつつ今日は魔法の実技の授業だ。
しかも初の他のクラスとの合同授業!
授業は屋外にある演習場、行ってみたら開けた場所がそれっぽく整えられていて、離れた場所に的が置かれていた。
「なぁ」
「どうした?」
「僕、魔法なんて使えない」
そもそも魔力があるかどうかも怪しい。
僕の生まれ育った国では魔法を使うのは名誉ある貴族にのみ許された行為、農民は魔力があっても使用が禁じられていた。
「ああ大丈夫、大丈夫」
「俺たちは使えて当たり前だけど、使えない相手に教えるのも教師の仕事だぜ」
「そうそう」
「習うより慣れろだ」
そういうものなのだろうか。
「お、始まったみたい」
皆の視線の先にいるのはうちの担任とローブを着た先生と、合同授業を行うクラスの担任の先生だった。
「それじゃ今から魔法の実技を始める。呼ばれた奴は前に出て来いよ~」
数人が名前を呼ばれ、その中に僕の名前もあった。
「ではまず失敗例からいきます」
「ほら、起きて授業を受ける」
「うぐぐ、魔法めんどう」
担任に促されてまず最初に前に出たのは我がクラスの邪神・ラグ君だった。
「シンプルなやつでいいから、本当に」
「うーん」
「ほら火の魔法使えるだろ」
「つかう、フレイム」
担任に促されてラグ君が的に向かって火を放つと、的が爆散した。
「はい皆さん注目、あれが失敗例です。次は君かな」
「は、はい」
ローブの先生に呼ばれて前に出る。
魔力があるかもどうか分からないのにどうすればいいんだろう、先生助けて。
「と、このように本来はいきなり魔法は使えませんし、使い方も分かりません。これが普通の反応です。素晴らしい、貴重な人材です」
何も出来なかったのに逆に褒められた。なぜ。
「えーっと次は誰がいいかな」
「平民に任せるからそうなるのだ!私が手本を見せてやろう!」
呼ばれてもいないのに前に出てきたのは、いかにも貴族という感じの偉そうな少年。
食堂で騒ぎを起こして、食堂のおばちゃんにおたまで殴られてた気がする。
何やら長ったらしい呪文を唱え、的に向かって魔法を放った。
ラグ君の炎より巨大な炎の塊が的に向かって飛ばされ、的に当たって消えた。
「呪文が長いくせに効果は大したことはなし、呼ばれてないのに前に出てきた自意識過剰君は減点しておきますね~」
「は、なにを、平民が!!」
「言っておきますが私は侯爵家の人間ですからねー、貴族風吹かせたいならかかってこいやです」
それでも何か言おうとした貴族の少年に対し、ローブの先生は「サイレンス」と魔法をぶつけて黙らせ、彼のクラスの担任が引きずって後ろの方へ持って行った。
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