フットサル、しよ♪

本郷むつみ

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名前の重要性です♪

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 体育館に着いた5人は部室を捜す。部室はすぐに見つかり、5人が恐る恐る部室を覗いてみると、窓から入る太陽の日が部室を明るく照らしていた。

「おぉぉぉ~」

 5人から感動の歓声が上がる。

「これが私達の部室ですわね」

「私のロッカー、ここ!」

「あっ、ずるいですわ、戸崎さん。そういう事はくじ引きかジャンケンと昔から決まっていますわ」

 志保と亜紀がまるで一昔前の漫画のようなドタバタ劇を始める。
 その横では(我関せず)とばかりに柚季が勝手に自分のロッカーを決めて荷物をしまい始めていた。

「待ちなさいですわ。あなたもマイペースで物事を進め過ぎですわ。これだから庶民の方々は」

「まあまあ」

 亜紀が得意のアメリカンジェスチャーで呆れ果てた態度をとると、見かねた舞が止めに入った。結局、ロッカーは個人個人が好きな場所に入れる事になった。
 ロッカーに5人が自分の荷物を入れていると部室のドアが開き、ゆかりが入ってきた。

「みんな、いる? どう、自分達の部室は?」
ゆかりがそれぞれの顔を見回し、確認する。

「最高です!」

「嬉しいですわ」

「なんか凄く楽しい事が始まる予感がします」

 5人の笑顔がゆかりには輝いて見える。
 先生として生徒の笑顔を見られる事ほど嬉しい事はない。ゆかりも満足そうに頷いた。

「そっか。良かったわね。んじゃ、これは先生からフットサル部創設のお祝い、第1弾」

 そう言いながらゆかりがコンビニ袋からジュースを取り出し、みんなに配り始めた。

「先生、ありがとう~」
 
 生徒達の嬉しそうな声が部室に響き渡る。

「じゃあ、乾杯しましょう。キャプテンは志保ちゃん?」

「違います。キャプテンは理沙です」

「あら、そうなの? まあ、その方が私的にも安心できるけど」

「先生、それ酷い」

「酷いのはどっちだよ」

 理沙がジト目で志保を睨み、冷静にツッコミを入れる。しかし、その視線に全く気付く事のない志保はのほほんとした声で「理沙、乾杯の前に一言お願いします」と言って理沙を促した。
 舞に背中を押され、みんなの中心に躍り出た理沙は咳払いを1つして

「じゃあ一応代表して、一言言わせて頂きます。遠藤先輩が入部してくれた事で、ついにフットサル部が始動出来るようになりました。これからは力を合わせて、フットサル部を盛り上げていきましょう。乾杯~」

 と、そう言ってジュースを持った手を高らかに上げると、メンバー4人とゆかりも後に続き「乾杯~」と高らかに声を上げ、缶ジュースを合わせ始めた。

「これで明日から練習だね。でも、フットサルの練習ってどうやってやるんだろう? 私はサッカーの練習法しか知らないし」

「やっぱり本とか買って練習法を調べないといけないと思う」

 志保の疑問に理沙が答えていると、舞が恐る恐る手を挙げて志保達の会話を止めた。

「とりあえず練習法は置いておいて、みんなにお願いがあるの。これから先、しばらくはこの五人で練習をしていくでしょ。やっぱりコミュニケーションが大事だと思うの」

「はあ、まあ、そうですわね」

 それがどうしたと言わんばかりに亜紀が返事をする。

「それでね、私に対してもそうなんだけど、みんな下の名前で呼ぶ事を徹底したいの」

「えっ? つまり遠藤先輩の事を……舞って呼んでも良い事ですか?」

 理沙が恐る恐る舞に聞く。舞はその通り言わんばかりに頷く。

「強いチームに上下関係はない。だからこれからは私の事は舞って呼んでね」

「そ、それは無理ですわ。目上の方を呼び捨てだなんて、私には出来かねますわ」

 少し困った顔で亜紀がそう言うと、舞は首を横に振って否定した

「先輩とか年上だからとか、試合中には気を使えないでしょ? だからこれは絶対に必要な事なの。大丈夫、絶対に怒らない。その方が私もあなた達の仲間になれたって実感するから、ね」

 優しく諭すように舞が4人に説明すると、その言葉にゆかりも便乗した。

「確かに一理あると思うわ。舞ちゃんがそう言ってくれるのだから、みんなそうしなさい」

 ゆかりの言葉に戸惑いを見せつつも、4人は「分かりました」と素直に返事をする。

「じゃあ、せめて舞さんでいいですか? さすがに呼び捨てはちょっと」

 理沙の言葉に舞はやれやれという顔で

「しょうがないよね。いいよ。舞さんで」

 と苦笑しながら言った。

「んじゃ、舞ちゃん、亜紀ちゃん、柚季ちゃん、理沙、これからよろしくね」

 志保がそう言うと理沙が少し怒り気味に志保に詰め寄る。

「お前の辞書に謙虚や礼儀という文字はないのか?」

「ない! そんな辞書すらない。私の辞書にはサッカー用語だけ!」

「確かになさそうですわ」

「えっ、そこは否定する場面でしょ?」

(コクコク)

「柚季ちゃんまで……えーん」

 亜紀と柚季までツッコまれ、志保大げさに泣く振りをする。
 理沙はそんな志保を無視して自分も名前で呼ぶ事を約束する。

「私もみんなの事を名前で呼ぶように努力する」

「しょうがないですわね。私の下の名前を呼ぶ事を許可してあげますわ。もちろん、私も努力して皆さんの名前を呼ぶように努力しますわ」

(コクコク)

 亜紀も柚季も名前を呼ぶ事に了承した。

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