フットサル、しよ♪

本郷むつみ

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自分たちのフットサルを煮詰めます♪

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「あ~あ、初勝利だと思ったのに~」

「しょうがない。亜紀が足を攣って退場しちゃったから人数的に不利になったし」

「私のせいだと言いたいんですか? それなら志保さんだってあの後、フリーの得点チャンスを2度も外していますわ」

「まあまあ、勝負に『たられば』はないから」

 歩きながら舞が場の空気を和ませると3人は納得したようにため息をついた。だが、やはり勝利目前で失点した事はメンバー全員がショックだった。
 初得点を入れ、1対0で残り2分を切った時に亜紀の脚に限界が来た。控えのいないフローラルは、4人で試合をするしかなかったのだ。ゴレイロの舞を中心に必死で守っていたが、亜紀の穴は大きく、最後の最後で力尽き1対1の引き分けで試合を終えた。その後は亜紀がいないためにオレンジとの試合は不可能となり結局1敗1分け終えた。

「あと1週間もすれば夏休みだし、体力増強メニューを考えないとね」

「まだ筋力トレーニングをするつもりですか? どれだけ体力を付けるつもりですか?」

 亜紀がうんざりしたように志保にそう言った。しかし、志保は亜紀の意見を否定して話を続ける。

「だって5人しかいないんだよ。スタミナをつけないと。私の目標は夏休み中に腹筋を6個に割ることだよ。ちょっとだけど線も出始めたし」

 志保のカミングアウトに志保を除いたメンバーが完全に引いた。

「そ、その目標は女子高生としてどうだろう?」

「志保ちゃん、フッ、フットサル選手である前に女の子なんだからほどほどにしようね」

「わ、私はそんな身体にはなりたいとは思いませんので遠慮しておきますわ」

(コクコク)

 志保の肉体改造に完全否定するメンバー達。だが志保は全く気にせずに会話を続ける。

「でも色んな事がわかったし、超楽しかったよね」 

「そうだな。実りの多い試合だった。大会の情報も分かったし、それに向けて頑張らないと。とりあえずお盆開けの日曜日の大会だな」

 試合後に千絵の情報でスクラッチとオレンジマジックは、お盆開けの日曜日に色んな女性チームが参加する大会に出場する事を教えてもらった。フローラルも参加表明をすると、千絵が一緒に出場登録をしてくれると言ってくれた。

「オレンジマジックもスクラッチもまとめてギタギタです。。この私に敗北をつけたあの2チームに必ずリベンジですわ」

「そうなの。今度こそ勝ちたいの」

 足を引きずりながらもリベンジに燃える亜紀に柚季が同調する。メンバー一同が柚季の言葉に驚いた。
 いつも何を考えているか分からない柚季が感情をむき出しにして『勝つ』と言う姿は新鮮を通り越して珍しかった。アニメのように背中から炎が上がっているようにも見える。そんな柚季を見て志保も同調する。

「そうだよね。今度の大会は絶対に優勝しよう」

「しかし、やはり5人はきついよな。真夏の昼間だぞ。大会だと連戦になるし、もう少し人数が欲しいな」

「年齢制限なしだからゆかりちゃんも出れるけど、戦力としては……」

 そう言いながら理沙が志保達に水を指す。しかし、理沙の言っている事は正論であり、他のメンバー達も5人だけの人数に不安を感じていた。

「話に聞くとスクラッチも助っ人を頼んで最低8人で来るって言っていたもんね。しかもスクラッチの女性メンバーって……」

 舞の声が段々小さくなっていく。
 千絵に教えてもらった情報で、スクラッチの女性メンバーについて驚愕の事実が判明した。スクラッチの女性メンバーは全員が何らかの競技のスペシャリストばかりだったのだ。
 奈央はバスケの全国ベスト8。他のメンバーには空手で県大会3位、陸上で全国大会出場、テニスで全国ベスト16など、ありえないメンバーがスクラッチには揃っていたのだ。

「まあ、問題点があるなら解消していけばいいだけだ。とりあえず、夏休みまであと1週間あるから入部募集はしておきたいな。これは来てくれればラッキー程度ぐらいの気持ちでいよう。あとは体力アップと少しでも技術の向上だな」

「だね。あとさ、今日の試合でフローラルの試合の形が見えた気がするの。今から部室に行って戦術を煮詰めようよ。せっかく柚季ちゃんが試合を録画してくれているんだし」

「いいと思うの。試合を見れば色々と分かることがあると思うの」

「そうだね。せっかく試合をしたんだから研究するのもいいかも。私もポジションの研究とかしたいし」

「そうと決まれば(善は急げ)ですわね。三橋!」

「はい、お嬢様」(プルプル)

 いきなりフローラルの目の前に現れた三橋はプルプルと震えながらも丁寧に頭を下げて車に亜紀たちを出迎えた。

「これに対して理沙ちゃん、ツッコまないの?」

「いえいえ、先輩に譲りますんで、お願いします」

「何をごちゃごちゃ言っているのですか? 時間の無駄遣いは愚者のやる事ですわ。早く乗りなさいですわ。行きますわよ」

 唖然とするメンバー達を車に乗せる亜紀。全員が乗り込むと「三橋、行きなさい」と命令を下す。三橋は「御意」と短く言葉を発してプルプルと震えながら車を発進させた。


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