フットサル、しよ♪

本郷むつみ

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これも戦略です♪

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 開会式で諸注意などの説明を聞いた後、志保達はベンチに腰を下ろした。
 コートに目を向けると、1試合目に出場するオレンジマジックが準備運動を始めていた。志保達がスクラッチと対戦するのは2試合目。あと15分もすれば自分達の試合が始まる。

「もうすぐだね。で、健さんはどっちの味方なの?」

 ベンチから立ち上がって準備運動をし始める志保が健に質問をする。健はきょとんとした顔で「味方?」と志保に聞き返した。

「そうですわ、健さん。今日は奈央さんと私、どちらを応援しますの?」

「個人名って違うだろ。いや、大きな意味では違ってないかもしれないけど」

「兄貴はどちらを選ぶのかの? 年上? 年下?」

「柚季、変な言い方をするな! 今日の俺は中立だ。どちらにもアドバイスはしない」

 毅然とした態度で健がそう言うと、亜紀が涙目になって健に詰め寄った。

「健さんは奈央さん達を選びますの? 私達はこのまま捨てられますの?」

「ろくでなしなの」

「人聞き悪いな、おい!」

 そんなコントをよそ目にやっている試合を真剣に見ている志保。
 試合はオレンジマジックが優勢に試合を進めていた。基本的に男女混成でチームを組んでいる他のチームは男性に頼っている分、女性だけの試合に慣れていない。
 オレンジマジックは女性だけのチーム。しかも積極的にスクラッチ等の男性チームとの交流試合を行ってきている。実力差は明らかだった。
 それでも奈央が率いるスクラッチ女性チームに大会では勝ててはいない。志保は色々思案した結果、意を決し、ある考えをみんなに伝えた。

「ねえ、1試合目のスクラッチ戦に私たちの全てをぶつけない?」

 振り向きながら志保がベンチに座っているメンバー全員にそう言った。すると理沙はいつものボケた時の志保じゃない事を感じ取って、真剣な面持ちでその真意を聞いてみた。

「どうしてそう思う? 試合は1試合だけじゃない。5試合あるんだぞ。ちゃんとペース配分を考えないと最後まで持たないぞ」

「だってさ、どうせ5試合全部を勝利して優勝なんて絶対無理だよ。この試合を見ていても分かる。そんな甘いものじゃない。だったら、リベンジも兼ねてスクラッチにだけでも勝利したいじゃん。駄目かな?」

 メンバー全員が真剣な顔で訴える志保を見詰める。大きなため息を付きながら亜紀が1番に口を開いた。

「まあ分からなくも無いですわ。確かに5試合をフルで戦えるだけの戦力はフローラルには無いですから」

「確かに優勝を目指さないならその作戦も有りだと思うの」

「私も問題ない。スクラッチに全力でぶつかって、後の事は試合が終わってから考えればいいと思うからね」

 亜紀、柚季、舞の意見を聞いた理沙が思わず苦笑する。そして健にも意見を求める為に視線を移した。


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