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フローラルの守護神です♪
しおりを挟む(志保ちゃん、すごい責任感じている。ここはなんとか止めないと)
ゴールマウスに立った舞は志保の様子を見て心に強く思う。自分がここに立っているのは志保のおかげ。
志保はいつも先頭に立って自分達を引っ張っていてくれている。いつでも笑顔を絶やさず、チームの雰囲気を明るくしてくれるフローラルのムードメーカー。そんな志保から笑顔が消え、責任を感じている。
(今度は私が志保ちゃんを助ける。チームを救ってみせる。私はこのチームの守護神なんだから)
大きく深呼吸をして覚悟を決める舞。ゴールを背にして身構えると、審判の笛が鳴った。
スクラッチのキッカー、由香が動き出した。
(絶対に止める!)
試合中、スクラッチのエースストライカーでもある由香を観察していた舞。
ハンドボールでも、フットサルでもする事は同じだった。相手の癖を見つけ、少しでもシュートを止める確立を上げる。
元空手部の由香はシュートを打つ時に回し蹴りのような蹴り方が多い事に舞は気が付いていた。明らかにサッカーやフットサルとは違う蹴り方。志保や健と見比べると一目瞭然だった。
(身体のどこでもいい! 当たって!)
由香の回し蹴りのような蹴り方はどうしても左の方向に飛ぶ事が多い。蹴る瞬間の踏み込みの位置やつま先の方向、身体の回転軸までしっかり観察した舞は確信して右に跳んだ。後は身体のどこかに当たり、ゴールに吸い込まれないように祈るだけだった。
舞の目にボールが飛んでくる映像が飛び込んでくる。
スローモーションのような感覚でボールが見える。その瞬間、腕にボールが当たった衝撃が走った。勢いに押されないように力を込めるが、すぐにその衝撃は腕から消えた。自分ではボールの行方は分からない。すぐに周りを見渡してボールの行方を確認する。
すると舞の目に飛び込んで来たのは泣きながら走り寄ってくる仲間達。
どこかで見覚えのあるシーン。
(あれ? こんなシーンどこかで見た気がする)
舞がそう思った瞬間、フラッシュバックのように脳裏に浮かんでくる。
(夢で見たシーンだ。正夢だったんだ)
コートの外に転がっているボールを発見した舞は、安心して両手を広げて近づいてくる志保達を待ち構えた。小さな子犬のように胸に飛び込んでくる志保。
「ありがとう、舞さん。本当にありがとう」
「ナイスです! 凄いです!」
「舞さん、さすがですわ。あのシュートに恐がらずに飛び込む勇気。尊敬いたしますわ」
「凄いですの、舞さん」
舞を中心にして歓喜の輪が出来る。少しだけ一緒に喜んだ舞は気持ちを切り替え、素直に喜んでいるメンバーに集中するように促した。
「まだ試合は終わってないよ。ピンチも続いてる。集中して!」
「そうだ。まだ試合は終わっていない。せっかく舞さんが防いでくれたんだ。勝つぞ」
部長の理沙がメンバー達にそう言うとスイッチを入れ替えて顔が引き締まる。そんな中、志保だけがまだ浮かない顔をしているのに気が付く舞。
「次は志保ちゃんの番だよ。私は私の出来る事をしたよ。今度は志保ちゃんが出来る事をして私を喜ばして」
笑顔で舞が志保にそう告げると会話に理沙も飛び込んで来る。
「終わったことにいつまでも引きずっているなんて志保らしくない。舞さんのおかげで点は取られてない。あとはこっちが点を取れば勝てるんだ。志保ならもう何をすべきか分かるよな」
「うん!」
志保が力強く返事をして顔を上げる。その表情は迷いが吹っ切れていつもの笑顔に戻っていた。そして大きな声を上げ、自分にもメンバーにも気合を入れる。
「よ~し、残り時間、気を引き締めて行こう!」
「1番気を引き締めないといけないのは志保さんですわ」
(コクコク)
コート中に響き渡る志保の掛け声に亜紀がツッコミを入れるとコート内にいる全員が笑い出した。もちろん奈央を含めたスクラッチメンバーも笑っていた。
「よし! 奈央さん達までウケた!」
「若手芸人みたいに笑いにこだわるんじゃない! いまは試合中!」
「えぇ~、試合で負けても笑いで勝てたら私は満足かも……」
「完全に方向が違うだろ! 試合で勝つんだ!」
そんな2人のやり取りに審判まで巻き込んでさらに試合会場が爆笑の渦に包まれた。
「本当に仲が良いのね。でも私達は負けないから。勝つのはスクラッチだからね。笑いでは完敗しているけどね」
爆笑しながらも奈央が勝利宣言を理沙達に伝えると、フローラルを代表して志保が奈央に応えた。
「絶対負けない! 勝つのはフローラルだから!」
その志保の言葉と共にコーナーキックを開始する笛が鳴り響いた。
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