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ファーストコンタクトしてみた
しおりを挟む鳳斗達が到着する10分前に遥香たちは集合し、お互いの近況報告を話し合っていた。
1番最初に到着していたのは今回の飲み会を企画した 木本千絵だった。
私と久美、そして千絵は同じ高校出身。
久美が綺麗系なら千絵は可愛い系だと言える。ちょっとドジな所があって小さな事にはこだわらない性格。150cmを切る身長が手伝って1つ1つの仕草がとても可愛いくて誰の目にもそう映るんだよね。自然体で癒しの空気を醸し出して、一緒にいるとほんわかな気分になる。
だから千絵がこの飲み会を企画したって聞いた時は本当にびっくりした。あんまりそういう事をしない女の子だと思っていたんだよね。
「あっ、ちゃんと化粧もしてるし、服も可愛いじゃん」
「遥香のスカート姿なんて高校以来じゃない?」
「そんなことないよ。多分……うん」
少し遅れてきた久美が遥香を見て素直な感想を言うと、千絵も後に続く。
そんな言葉に遥香が自信なさげに否定する。
スカートね……久々に履くとなんかスースーする。あれ? 私、大学に履いて……行ってない。
だって撮影のための授業は机に座っているだけじゃないんだよ。機材とか運んだりもするし、コードとかも引っ掛けそうな物が沢山あるし。ヒラヒラさせて撮影現場を走り回るって無理でしょう。
言い訳じゃないからね。本当の事だからね。
「で、今日はどんな人が来るの?」
「相手の話だと私達みたいな関係みたいだよ。ちなみに主催者は私のバイトの先輩」
久美が千絵に確認するとどうやら自分たちと同じような関係らしい。
遥香と千絵、久美は高校からの友達で高校生の時から3人でよく遊んでいた。そんな関係がこの先もずっと続けば良いと遥香は真剣に思っていた。
「へえ、じゃあ、気のあった3人組って感じなんだね。イケメン?」
「さあ、バイトの先輩以外は会ったことないからわからないよ」
「じゃあ、そのバイトの先輩はどんな人なの?」
「ん~、普通……って言うか、温かい人、威圧感0で優しい……じゃないな、とりあえず温かい威圧感0のクマって感じかな」
「何それ? 意味わかんない」
久美の質問に千絵がそっけなく答えると、遥香が良樹の人物像に興味を持った。
「見ればわかるよ。うん、絶対に見ればわかる。大事な事だから2回言っておくね」
「その人と付き合っているの?」
「付き合ってないよ。今は先輩後輩の関係って感じかな。めちゃ口説かれてはいるけどね」
そう千絵が笑いながら答える。高校時代から少しだけ天然小悪魔的な部分があるのも千絵の魅力の1つだった。
「千絵は相変わらずだね」
「そっちだって一緒でしょ。遥香の映画馬鹿は変わらないし、久美だって相変わらずお節介じゃん」
「遥香はそうだけど、私は違うよ」
「久美がお節介じゃなければ、遥香は今日の飲み会に絶対に来てないと思う」
「うん、私も久美のお節介って言う部分は否定しない」
「個人的にそこが1番否定して欲しい所だよ」
ナイスツッコミ。久美は人前では絶対に見せないけど、3人の時はボケ担当になるんだよね。今のツッコミは間も良かったし映画のワンシーンに仕えると思うよ。
コメディ映画もいずれはやってみたいな。かなり難しそうだけど。とりあえずどんなジャンルでもいいから良い脚本、題材がないかな~。
久美が文句を言いながら頬を膨らませる。その顔を見た遥香と千絵がさらに大きな声で笑い、つられて久美も笑い出した。
そんな時、千絵の携帯の着信音が鳴り響く。携帯をバックから取り出し一言二言交わすと携帯を切る千絵。
「今、着いたって。もうすぐ来るから」
「なんか緊張するね」
「そっか、遥香は男の人との飲み会って初めてだっけ」
「学校の友達と遊ぶ感覚とそう変わらないよ。そんなに緊張する事ないって」
2人の言葉で遥香は幾分落ち着きを取り戻し、素朴な疑問を2人問い掛ける。
「でも、知らない人と会話するって緊張しない? お持ち帰りとかされない?」
「遥香。あんた本当に平成生まれ? 古い映画やドラマの見過ぎじゃない? 大体、映画撮影終了の打ち上げとかあったじゃん」
「あの時だって知らない人とは喋ってないし」
「今時、そんな事はめったにないよ。遥香が監督すると古臭い映画になりそうだね」
私は平成生まれです。昔の映画を馬鹿にするな~。
先人たちの努力があったからこそ、今の日本映画があるんだよ!
「何事も経験だって。今日の経験を映画に生かそうよ」
「そうだね。よく知らないけど、初対面の人でも一緒に映画作る事だってあるんでしょ? そんな時の為の練習だと思えばいいじゃん」
「うん、まあ、そうなんだけどさ」
遥香の頭の中では理解はしているが気持ちはどうにもならないでいた。
そう思っていると3人の男性が近寄ってくる。先頭を歩く身長の高い男性が手を振りながらこちらに近づき、顔や体形などが次第にはっきり確認出来始める。
近づいてくる良樹を見て遥香と久美は思わず笑ってしまった。
「えっ、なんで? 俺、なんか面白い事やったか?」
「存在自体が面白いんじゃないの?」
「うん、生きていてごめんなさいって笑っている2人に謝罪しろ」
「ごめんなさいって、お前ら2人って俺に対して何気に辛辣だよな」
遥香と久美に笑われた良樹が疑問を口にすると鳳斗と幸隆が次々と言葉を載せていく。
良樹が2人を睨むと鳳斗と幸隆はその視線を逸らす。その様子を見ていた女性3人がさらに笑い出した。
「俺、そんなに格好おかしい?」
一気に和やかなムードになったところで良樹が笑い出した遥香と久美に聞いた。
「うん、特に顔がおかしい」
「頑張って取り替えてこい。頑張ればいけるって」
「もうええっちゅうねん」
鳳斗、幸隆のツッコミにうんざりしながら良樹がさらにツッコミを入れる。
「ごめんなさい。千絵が言っていた通りの人が近づいていたから」
「うん、びっくりした。千絵の表現がぴったり過ぎて」
「ね、ね、そうでしょ」
男性3人を置いてきぼりに女性陣が盛り上がる。
「千絵ちゃん、俺の事、何て説明したの」
「顔がわる……」
「そのくだりはもういいから」
カブせ気味に鳳斗のボケを止める良樹。いい加減、話が終わらないのを見かねて幸隆が
「おい、とりあえずそろそろ行かねぇ? 時間もないし。腹減った」
と言った瞬間、
「「遅刻常習犯のお前が言うな!」」
鳳斗と良樹から幸隆に壮絶にツッコみが入った。
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