【完結】濡れ衣の令嬢は、籠の鳥

白雨 音

文字の大きさ
14 / 14
エピローグ

しおりを挟む


幸せに微睡む中、クリスがわたしの髪を撫で、体を起こした。

「ん…クリス?」

わたしは離れて行くクリスを追い、手を伸ばす。
クリスはその手を取ってくれた。

指にキスをされる…


「ミシェル、僕と結婚して、僕の妻になって下さい」

「はい、喜んで、あなたの妻になります、クリストフ!」


◇◇◇


わたしがクリスに囲われてから、クリスが忙しくしていたのは、
公爵に毒を盛った者を探し出し、ミシェルの疑いを晴らす事。
そして、逃亡の準備の為だった。


当初、クリスはわたしを攫い、逃亡する予定でいたという。
公爵毒殺の嫌疑が晴れた事を黙っていれば、わたしはそれに従うより他無い。
だが、クリスは罪悪感に耐えかねて、告白してしまった。
それ程に、わたしを愛していたのだ。


わたしたちは、両親と話を付けた。

わたしは両親に気持ちを伝えた。
罪を自覚し、反省し、この先の生き方で償って欲しいと。
勿論、それは激しく両親の怒りを買った。

「今まで育ててやったというのに、恩知らずめが!」
「よくも、親にそんな事が言えたわね!あなたはミシェルなんかじゃないわ!」
「そうだ!私たちの娘は死んだんだ!!」

両親はミシェルを死んだままにしておきたかった。
その理由は、濡れ衣が晴れた時、ベルナルド公爵イーサンから謝罪があり、
賠償金を貰っていたからだ。
生きていたとなると、それを隠し、賠償金を受け取ったと疑われる。
疑われなくとも、賠償金の返還を求められるかもしれないからだ。

クリスの財産は、全て回収した。
デュラン侯爵家は苦しくなるだろうが、使い込みをしたのは父と母なので、
仕方が無いだろう。
それでも、両親が金を払ったのには、クリスの父、サロモン=ロベールを殺した事、
ミレーヌへの暴行、殺しを隠したかったからだ。
それらに口を噤むのと交換に、財産を回収し、そして絶縁した。


その後、わたしたちは隣国に渡った。

クリスは新しく大学に入り、通いながら、薬屋で働いている。
てっきり、侯爵を継ぐ為の勉強だと思っていたが、それはカモフラージュで、
実際に勉強していたのは、薬学だった。
クリスは最初から、侯爵家を出るつもりで、自立を考えていたのだ。

「愛する人が違う男と結婚するんだよ?
とても、傍には居られないよ、何処か遠くへ行くつもりでいたんだ」

その準備が、今回役に立った。

そして、もう一つ。
クリスはわたしが処刑を免れないと予想し、
『三日仮死状態になる』という薬を見つけ出し、手に入れて来てくれた。
その為に、クリスはあの日まで、会いに来られなかったのだ。

「本当は直ぐにでも会いに行きたかった、牢なんかに入れて置きたくなかった。
だけど、それよりも、救い出す方を優先したんだ…独りにしてごめんね、
心細かったよね?もし、君が自害してしまったらと、気が気じゃなかったよ…」

「でも、会いに来てくれた時、あなたは冷たかったわ…
わたしの死を望んでいるのだと思ったの…」

「演技だよ、君に薬を飲ませる為のね」

クリスの思惑通りに、わたしは行動したという訳だ。
クリス程、わたしを理解している者はいないだろう。


わたしは今の処、家事をするので手一杯だ。
クリスの為に食事を作り、洗濯、掃除…
侯爵令嬢だったわたしには初めての事で、最初の一月は酷いものだった。
クリスに呆れられないかと不安だったが、クリスはわたしの失敗を笑って、一緒に処理してくれた。
失敗を重ねて、早半年、最近では失敗する事も無く、上手くやれている気がする。

今日も、上手にお肉が焼き上がった。
お肉に、野菜の入ったスープ、バケット、チーズ、バター、果物。
デザートのプディングは手作りだ。

今日は特別に豪華にしていた。
その理由は…
わたしは自分の下腹に手を当て、「ふふふ」と笑った。

ガチャ、ガチャ、ガチャリ

鍵を開ける音がし、わたしは椅子から立ち上がる。
扉が開き、愛おしい人の顔が見えた。
わたしの胸は高鳴った。

「ミシェル!」
「クリス!」

クリスは目を輝かせ、高潮している。
きっと、わたしも同じだろう。

「引っ越そう!今週末!」
「子供が出来たの!」

声が揃った。
お互いの言葉を頭で飲み込み…

「子供が!?ああ、ミシェル!最高だよ!!」

クリスはわたしを高く抱き上げた。
ここが広い部屋だったら、クルクル回っていただろう、喜びようだ。

「ミシェル、いつ生まれるの!?」
「春頃だって、お医者様はおっしゃってたわ!クリス、急な引っ越しなのね?」
「うん、大学の講師が一軒家の空き家を紹介してくれたんだ、家族が増えるなら、丁度良いよ!」

今の部屋は、二人で住むには良かったが、アパートメントで、
クリスは一軒家に住みたいと言っていた。
大学を出てから引っ越すのが良いのだが、理由は、夜の行為に集中出来ないから。
思い切り、声を出させてあげたいのだとか…
それを思い出し、わたしは頬を染める。

「ミシェル、そんな可愛い顔をしないでよ…暫くは我慢しないとね」
「お医者様は大丈夫だとおっしゃっていたけど」
「でも、大切にしたいから…」

クリスがわたしに甘いキスをする。

こんな事をされて、我慢出来るだろうか?

「いけないパパね」

わたしはお腹を撫でて言う。

「僕も触ってもいい?」
「ええ、わたしたちの子だもの」

わたしはクリスの手を導いた


《完》
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない

たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。 あなたに相応しくあろうと努力をした。 あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。 なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。 そして聖女様はわたしを嵌めた。 わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。 大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。 その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。 知らずにわたしはまた王子様に恋をする。

婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。 目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。 「あなたは、どなたですか?」 その一言に、彼の瞳は壊れた。 けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。 セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。 優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。 ――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。 一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。 記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。 これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

大人になったオフェーリア。

ぽんぽこ狸
恋愛
 婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。  生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。  けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。  それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。  その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。 その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

処理中です...