【完結】婚約者はお譲りします!転生悪役令嬢は世界を救いたい!

白雨 音

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「パトリック、ここの問題を教えてくれる?授業中、良く分からなかったの」

「あ、ああ…いいよ、何処?」

わたしが教科書を見せると、立ち上がり掛けたパトリックはそれを止め、こちらに向き直った。
ここ数日の観察結果、パトリックを引き止めるには、質問をするのが効果的だと分かった。
これにより、わたしの学力も上がるので、正に一石二鳥だ!

だが、問題はブランドンだ。
ブランドンは単純だが、興味のある事と言えば、剣、武闘、体を動かす事。
それから、競争…彼は熱血で負けず嫌いだ。
だけど、彼の興味を引く様な話題を、わたしは持っていない…

ゲームの時はどうしてたかしら?

わたしは前世の記憶を辿った。

ブランドンと親密度を上げるには、か弱い振りをし、護って貰う事…
わたしが《ヒロイン》なら有効だけど…
悪役令嬢としては、使えない技だ。

後は、褒める!
ブランドンは単純で楽天家なので、褒められると力を発揮するタイプだ。

だけど、今は特に褒める事なんて無いのよね…

「ドレイパー、聞いてる?聞く気が無いなら止めるよ」

パトリックに胡乱に見られ、わたしは慌てて姿勢を正した。

「ごめんなさい!理解しようと頑張ってるんだけど、難しくて…」

「そう、説明が難しかったかな?最初から話すね…」

パトリックは最初に戻り、丁寧に説明を始めた。
本当に、良い子なのよね…
染まっていない、天使の様だ。
将来有望だし、可愛いし…
ゲームをやっていた時には、可愛い弟的なキャラにしか思っていなかったけど、
こうして現実に居たら、親切だし、信頼出来る、頼れる友だ。
まぁ、天使過ぎて騙されないかと、心配にはなるけど…

「ありがとう!パトリックが教えてくれると良く分かるわ!教えるのが上手なのね!」

「そうかな?あまり教えた事は無いんだけど…」

パトリックは困った顔をしつつも、何処かうれしそうに見える。
エリーの所に行きそびれた事すら忘れ、次の授業の準備を始めていた。





「アラベラ様、お昼に参りませんか?」

いつもの様に、ドロシアとジャネットが誘いに来た。

「ごめんなさい、わたくし、今日から食堂を使う事にしますの、
あなたたちは好きになさって」

わたしは席を立ち、さっさと教室を出た。
ドロシアとジャネットは慌てて追いかけて来た。

「急に、どうなされたのですか、アラベラ様!?」

どうなさったか?

あのカフェでは、たかが学園生の昼食だというのに、
料理が一皿ずつ、順々に出されるのだ!
一度に出せばいいのに!!

それも、大きな皿の真中に、小さな料理が乗っている…
お皿が無駄じゃないかしら??

食材全てがマッシュされ、再構築されている料理が多く、
味わう以前に、何を食べているか分からない。
あんな味気ない料理に、大金を払うなんて…!!
前世の貧乏性が怒りを訴えてくるのよ!!
デザートと紅茶は美味しいけどね!

…と、こんな事は、勿論、言える筈も無いので…
わたしは足を止めずに、答えた。

「飽きたの」

「え??」

「食べ慣れた料理では、わたくしの食欲は刺激されませんの」

「ですが、食堂の料理など、アラベラ様のお口には合いませんわ!」

つべこべと煩いわね!!
誰が何食べたっていいでしょう!!
前世では、昼食代を浮かす為に、食パンを齧っていた超の付く庶民派よ!!
わたしは食堂に行きたいのよーーー!!

沸き上がる怒りと欲求を抑えつつ、わたしは足を速め、廊下を突き進んだ。


食堂は、想像していた通り、生徒たちでごった返していた。
あからさまに嫌な顔をする二人を他所に、わたしは料理の置かれているブースへと突き進んだ。

「アラベラ様!お待ち下さい!」
「アラベラ様!料理は私たちが取って参りますので…」
「自分で出来るわよ、あなたたちも初めてでしょう?もっと楽しみなさいよ」

ドロシアとジャネットは、《この世の終わり》の様な悲惨な顔をしたが、
わたしは気にせずツンと顔をあげ、行列に並んだ。

トレイを持ち、好きな料理を選び、乗せて行く。
わたしは野菜スープと、厚い肉を挟んだサンドイッチ、果実にした。
これよ、これ!この料理の大胆さ、ボリューム!B級グルメって感じ!堪らないわ~♪

「ええと、空いている席は…」

席を探して周囲を見ていた所、エリー・ハートを見つけた。
彼女のストロベリーブロンドの髪は、珍しい色なので目立つのだ。
エリーの隣には、安定の、パトリックとブランドンが座っている…

全く!二人共、エリーが大好きね!!

こっちは、何とかして引き離そうと躍起になっているというのに、
仲良くお昼を食べているなんて!

「甘かったわ…」

でも、カフェを止め、食堂にしたのは正解だった!

わたしは何食わぬ顔で、三人の方へと足を進めた。

「ここ、空いているかしら?」

わたしがブランドンの隣に座っている男子生徒に聞くと、「ああ?」と不満そうな声が返って来た。
だが、わたしの顔を見た途端に、目を見開き、「は、はい!どうぞ!」と席を立ち、
逃げていった。

あら、ありがとう!

わたしは空いた席にトレイを置き、ブランドンたちに声を掛けた。

「ブランドン、パトリック、わたしも一緒に食べていいかしら?」

ブランドンもパトリックも驚いた顔をしたが、断る理由も無い訳で、
「あ、ああ、いいけど」と返ってきた。
わたしは席に座り、ブランドンのトレイを覗き込んだ。
もう、ほとんど食べ終わっている。

「紅茶を淹れるけど、あなたたちもどう?」

紅茶のポットはテーブル各所に置かれていて、自分で好きに注ぐ様になっている。
わたしが声を掛けると、ブランドンは驚きつつも、「あ、サンキュー」と空のカップを寄越した。
この単純な所がいいわよね…
わたしは紅茶を注ぎ、ブランドンに渡す。

「パトリック、あなたもどう?」

パトリックはチラリとエリーを見て、「エリーは?」と聞いた。
エリーは小さく、「あたしはいいわ」と頭を振った。
パトリックは「僕は貰うよ、ありがとう」とカップを差し出した。
わたしはパトリックに微笑を返し、紅茶を注いだ。

「アラベラ様だぜ…」
「嘘だろ、ここ、食堂だぜ?」
「アラベラ様が紅茶を注いでるぜ…」
「あんな事出来たんだな…」

周囲がざわざわとしている。
わたしに聞こえないとでも思っているのかしら?
だが、その疑問は尤もだろう。
わたしが食堂に来たのは初めての事だし、紅茶を注ぐのはいつもならば、
他の誰か…ジャネットやドロシアの仕事だ。
二人が居なければ、他の誰かに…

「あなたたち、席を空けなさいよ!」

ドロシアが、わたしの隣に座っている男子生徒を追い出している。
わたしもやった事ではあるけど…

「ドロシア、無理はいけないわ、あなた、席を譲って下さってありがとう」

わたしが超然とし、微笑むと、男子生徒は顔を赤くし、
「い、いえ!失礼します!」と去って行った。

「すみません、アラベラ様…」

ドロシアとジャネットが暗い顔で肩を落としている。

「謝らなくていいのよ、だけど、次からは皆様に迷惑を掛けない様にね」

わたしは笑みを浮かべて優しく言ったが、
二人は暗い顔のまま、「はい」と答えると席に着いた。

「珍しいね、ドレイパーが食堂を使うなんて…カフェは改装でもしているの?」

パトリックがエリー越しに聞いてきた。
彼は良く気付く方なので、怪しんでいるのかもしれない。

「いいえ、食堂に来てみたかったの、好奇心よ。
賑やかだし、料理も豊富なのね、驚いたわ」

わたしは厚い肉のサンドイッチに齧り付いた。
うん!美味しい!!

「おぉ!いい食べっぷりだな!どうだ、美味いだろう?」

ブランドンが大きな笑みを見せた。
彼がわたしにこんな顔を見せたのは初めてだ。
これだけでも、ここに来た価値はあるわね!

「最高ね!こういう料理が食べたかったの、これからは食堂を利用させて貰うわ」

わたしが笑顔で宣言すると、ドロシアとジャネットは肩を落とした。
ごめんなさいね、世界の平穏とわたし自身の為に、無視させて貰うわ!!

「あたし、先に行くね」

エリーが急に席を立った。
それを《突然》と感じたのは、パトリック、ブランドンも同じだった様で、
「待ってよ、エリー!」「おい、どうした!」と、
二人は直ぐにトレイを手に取り、エリーを追い掛けて行った。

わたしは唖然として見ていたが、我に返り、「こうしちゃいられないわ!」と、
急いでスープを飲み、残っていたサンドイッチを口に詰めた。
果物を手に取り、急いでトレイを返しに行くも、三人は既に食堂を出た後だった。

ああ!もう!食事位、ゆっくりしなさいよね!!

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