【完結】バッドエンドの落ちこぼれ令嬢、巻き戻りの人生は好きにさせて貰います!

白雨 音

文字の大きさ
31 / 38
第二章

10


◆◆

主治医が到着し、ケイシーは毒の所為だと言い張った。

「この症状は毒ですわ!」

「しかし、何の毒か分からないと、治療が難しいですな…」

「これです!砂糖漬けに入っていますわ!」

「これは…グレスターの種だな、激しい嘔吐作用があるんですよ。
水を飲んで、中の物を吐かせましょう、大丈夫ですよ、命に別状はありません」

主治医はプリシラに水を飲ませ吐かせた。
暫くすると、プリシラの容体は落ち着いた。

「ケイシーさんの御手柄ですよ、彼女が気付かなかったら、もう半日は苦しんだでしょう」
「ああ、ケイシー、ありがとう…」

主治医に褒められ、プリシラから礼を言われたケイシーは、まんざらでもない顔をした。
だが、それを引き締めると、強い口調で言った。

「プリシラ様、エレノアがグレスターの種を砂糖煮に入れたんです!
あの人は危険ですわ!
私は最初から、エレノアは何時か何かをすると思っていました、
それにしても、こんな酷い事をするなんて!許せません!」

「エレノア様が作った物は、私も食べましたが、そんな物は入っていませんでしたよ」

マックスが証言したが、ケイシーは頑なだった。

「きっと、マックスにバレない様に、運ぶ途中で入れたのよ!」

だが、ケイシーの声が奇妙に響くだけで、誰も賛同はしなかった。
皆が視線を反らす。

「ケイシー、決めつけてはいけないよ、エレノアはそんな事はしない」

ウィルが諭す様に言うと、ケイシーは砂糖漬けの皿を突き付けた。

「これが証拠ですわ!」

「どうやって入ったのかは分からないけど、エレノアは関係無いよ」

肩を竦め、母親の肩を擦るウィルに、ケイシーは『信じられない』という顔になった。

「皆、あの女に騙されてるのよ!私を信じないと、今に酷い目に遭わされるわよ!」

「ケイシー、その砂糖漬けに近付けたのは、エレノアだけではないよね?」

クレイブがケイシーに確かめる様に訊く。
ケイシーの顔が引き攣った。

「エレノア以外では、母さん、兄さん、そして、君だ、ケイシー」

ケイシーは目を見開き、息を飲んだ。

「!?私を疑っているの!?プリシラ様を助けた、この私を!?」

「それは酷い…」と主治医も頭を振ったが、クレイブはすんなりと無視した。
クレイブには考えがあったのだ___

「僕たちはこれを見ても、何の種だか分からない、それ処か、調味料にしか見えない。
でも、君は良く知っている様だ」

「知らないわよ!毒が入っていると思っただけよ」

「君はさっき、一度聞いただけの種の名前を、すんなりと言ったね?」

「おかしくはないわ、今聞いた事よ、それに、植物に詳しいのはエレノアの方よ!」

「そのエレノアが気付かない訳はないよね?
だったら、エレノアから受け取り、母さんが口にするまでに触れた者が、一番疑わしい…」

「いい加減な事を言わないで!私じゃないわ!
私がどうしてそんな事をしなきゃいけないのよ!」

「エレノアもそう言いたかっただろうね、彼女にも理由が無い。
ケイシー、君はこの部屋から出ていないから、証拠を隠滅する暇は無かったよね?
君が何も持っていなければ、君を信じるよ、ケイシー」

ケイシーは顔を青くし、「付き合っていられないわ!」と出て行こうとしたが、
ルシンダが行く手を塞ぐ様に立っていた。

「調べさせて貰います」

「嫌よ!私に触らないで!そんな権利が誰にあるって言うの!!」

「コルボーン卿の僕にはあると思うよ、ルシンダ、アンナ、お願いするよ」

ウィルが許した事で、ケイシーはルシンダとアンナに捕らえられた。
ケイシーのスカートのポケットからは、紙に包まれたグレスターの種が出てきた。

「ケイシー!あなただったの!?一体、どうして…」

一番驚いていたのは、プリシラだった。
ケイシーは、今まで献身的に自分の世話をしてくれていたのだ。
そんな相手から毒を盛られるなど、考えもしなかった。

「私の世話が嫌だったのね…」

「あの女をこの館に入れるからよ!今まで上手くやっていたのに!
ノークス姉妹のお陰で、私の計画が滅茶苦茶になったのよ!
私がクレイブと結婚するつもりだったのに!!」

ルシンダが目を細め、クレイブを見る。
クレイブは茫然とし、頭を振っていた。

「そんな話は初めて聞いたし、僕たちの間には、誓って何も無いよ…」

婚約を控えたルシンダの手前、クレイブはキッパリと言ったが、
それはケイシーを逆撫でするものだった。
ケイシーは奇声を上げ、地団太を踏んだ。

「プリシラ様には私が必要でしょう?
私に居て欲しかったら、ノークス姉妹をこの地から追い出して下さい!
目障りなオースグリーン館なんて、取り壊せばいいのよ!」

「ケイシー、幾らあなたの頼みでも、それは出来ないわ。
オースグリーン館はコルボーン家の物ではありませんからね。
コルボーン家は管理を任されているだけ、オースグリーン館に仕える者なのよ」

「まさか!辺境伯が、あんな小屋に住む者に仕えるなんて、あり得ません!」

「いいえ、オースグリーン館は、この地を護る、《精霊の家》なの___」

プリシラとウィルはそれを知っていたが、クレイブは知らなかった。
そして、他の皆も、茫然としていた。

「フン!馬鹿馬鹿しい!迷信だわ!
それでは、プリシラ様は、私ではなくエレノアに面倒を見て貰うんですね?」

「エレノアでなくても、他の者を雇えばいいわ、ケイシー、今までありがとう。
あなたには本当にお世話になったわね、だから、最後にした事は、言わないでおきますよ。
給金を持って、男爵家にお帰りなさい___」

ケイシーは主治医と一緒にソリで町へ行き、冬が終わるまで宿に泊まり、
馬車が通れる様になり次第、男爵家に帰る事になった。


◆◆


事の顛末を聞き、わたしは安堵の息を吐いた。

「安心したわ、クレイブもやるわね!見直したわ!」

「はい、クレイブは僕の弟ですからね!」

ウィルは自慢気に言う。
確かに兄弟だが、似た所は体型位だ。

まぁ、わたしも兄姉とは似ていないわね…

「オースグリーン館が《精霊の家》だって、どうして、話してくれなかったの?」

知っていたなら、旅人の話をしてくれた時に、話してくれたら良かったのだ。
ウィルは跳ねた髪を掻いた。

「あなたは何も知らない様でしたし、知らない方が気を遣わずに済みますからね。
それに、あなたは神や精霊を信じていない様でしたので、良い気がしないのではと…
余計な気を回してしました、すみません」

「謝らなくていいわ、その通りだもの」

わたし自身が目にしなければ、信じられないだろう。
目の前で消えた、遺言執行人。
館にあった図鑑は、ある日白紙になり、表紙にわたしの名を刻んだ。
植物の成長が早いし、放置されていたにしては、良い土地だ。
それに、お願したら果物が大きくなったわ…
《精霊の庭》なら、それも不思議ではない気がした。

「わたしの力では無かったのね…」

曾祖母の様に力が芽生えたのかと思っていたが、ガッカリだ。

それとも…
曾祖母の館も《精霊の家》で、曾祖母が相続人…《主》だったのだろうか?
それで、力が使えていた?

「今となっては分からないわね…」

曾祖母が亡くなってからは、行っていない。
曾祖母の館は、誰かが継いだと思っていた。

オースグリーン館が《精霊の家》というだけで、
そこを継ぐ者が精霊である訳では無い___という事だろう。

誰が選んでいるのかしら?
精霊?
それを曾祖母は分かっていた、だから、ペンダントをくれると言っていたのだ。
それとも、ペンダントが教えてくれるの?

わたしはペンダントを弄った。

グリーン一族の中から選んでいるのかしら?
グリーン家に限らず、選ばれているのかもしれないわね…

ここにあるのだから、他の土地にも、《精霊の家》は存在するだろう…

「ロマンがあるわね」

「そうでしょう!」

ウィルに満面の笑顔で同意され、わたしは吹き出した。

あなたにおすすめの小説

婚約破棄を突き付けてきた貴方なんか助けたくないのですが

夢呼
恋愛
エリーゼ・ミレー侯爵令嬢はこの国の第三王子レオナルドと婚約関係にあったが、当の二人は犬猿の仲。 ある日、とうとうエリーゼはレオナルドから婚約破棄を突き付けられる。 「婚約破棄上等!」 エリーゼは喜んで受け入れるが、その翌日、レオナルドは行方をくらました! 殿下は一体どこに?! ・・・どういうわけか、レオナルドはエリーゼのもとにいた。なぜか二歳児の姿で。 王宮の権力争いに巻き込まれ、謎の薬を飲まされてしまい、幼児になってしまったレオナルドを、既に他人になったはずのエリーゼが保護する羽目になってしまった。 殿下、どうして私があなたなんか助けなきゃいけないんですか? 本当に迷惑なんですけど。 拗らせ王子と毒舌令嬢のお話です。 ※世界観は非常×2にゆるいです。     文字数が多くなりましたので、短編から長編へ変更しました。申し訳ありません。  カクヨム様にも投稿しております。 レオナルド目線の回は*を付けました。

【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

【完結】真実の愛に目覚めたと婚約解消になったので私は永遠の愛に生きることにします!

ユウ
恋愛
侯爵令嬢のアリスティアは婚約者に真実の愛を見つけたと告白され婚約を解消を求められる。 恋する相手は平民であり、正反対の可憐な美少女だった。 アリスティアには拒否権など無く、了承するのだが。 側近を婚約者に命じ、あげくの果てにはその少女を侯爵家の養女にするとまで言われてしまい、大切な家族まで侮辱され耐え切れずに修道院に入る事を決意したのだが…。 「ならば俺と永遠の愛を誓ってくれ」 意外な人物に結婚を申し込まれてしまう。 一方真実の愛を見つけた婚約者のティエゴだったが、思い込みの激しさからとんでもない誤解をしてしまうのだった。

俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。 俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。 そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。 こんな女とは婚約解消だ。 この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。