【完結】巻き戻りましたので、もれなく復讐致します!

白雨 音

文字の大きさ
14 / 20
本章

12


「偉そうにしてっけど、あいつ、王宮でも立場は低いんだろ?」
「ああ、オリヴィア様と結婚して、公爵家を味方に付けないとヤバイらしいな」
「あいつ、一生、オリヴィア様と公爵家に頭が上がらないな!」
「あーあ、誰か、王の子じゃないって、証明してくれねーかな」
「あいつ、どんな顔するかなー?」
「そうなったら、もう、表には出られないだろ___」

男子生徒たちは笑いながら、男子部棟に入って行った。

「今の話…本当?」

サマーがわたしたちを見たが、当然、わたしもエイプリルも知らない事だ。

「聞いた事ないわ、ただの噂でしょう、気にする事無いわよ。
ウイリアム様を妬んでいるのよ、貶めたいんでしょう」

わたしは軽く言い、肩を竦めた。
証明出来ていない様だし、触れない方がいい。
変な噂が立てば、ウイリアムが困る事になる。

二人には「忘れましょう」と言って別れたが、実際、頭から追い出すのは難しかった。

「忘れるのよ!」

所詮、噂じゃないの!
だけど、真実を知らなければ、対処も出来ないわ…

「対処?馬鹿ね、彼はそんな事、わたしに期待なんてしていないわよ…」

自分でも笑ってしまう。
だが、どれだけ卑屈に考えても、やはり気になってしまい、
わたしは放課後、エイプリルに断りを入れ、図書室に行き、調べる事にした。


クリスソール王国、国王アレキサンダーには、前王妃ガブリエラとの間に、王子が三人、王女が一人いる。
王太子である、第一王子リチャード、第二王子ニコラスは、既に結婚し、
第一王女アリアンナは異国に嫁いでいる。
第三王子ウイリアムは、兄姉とは年が離れていて、前王妃はウイリアムを出産し、僅か二週間後に亡くなっている。
記録には事故死とある。
王はその一年後に、公爵令嬢だったサブリーナと結婚した。二人の間に子はいない。

同時期の宰相の記録だが、エルヴィス・バルフォアという名と、在任期間のみで、罷免の印が押されていた。
エルヴィスの在任期間は、前王妃が亡くなった年だ。
罷免という事もあるし、何か問題があった事は確かだ。

本当に、心中だったのかしら?
それとも、誰かが面白おかしく話を作ったの?

ウイリアムに聞くのが一番確かではあるが、そんな事はとても聞けない。
それに、そんな権利は、わたしには無い___

「ウイリアムは、オリヴィアと結婚しなくてはいけないのね…」

暗い噂のあるウイリアムが王子である為には、強固な後ろ盾が必要だという事は分かる。
だが、それがバーレイ公爵家となれば、どうしても受け付けられない。

血も涙も無い、冷酷無比な、あのバーレイ公爵家…

わたしは苛立ちを拳にし、机を叩いた。


◇◇


食堂の一件以来、オリヴィアたちは大人しくなった。
小声で陰口を言う位で、あまり害はない。
それもあり、『あの男子たちを嗾けたのはオリヴィアだろう』と、わたしは推測していた。

「大事になって困るのは、オリヴィアだものね」

わたしは、オリヴィアの事も、ウイリアムの事も、一旦忘れる事にして、ドレスの縫製に勤しんだ。
何かに没頭していると、余計な事を考えなくて済む。

放課後は毎日、エイプリルと共に縫製室に通い、
週末も教師の許可を取り、作業をさせて貰った。

少しづつ、形になっていく…
目に見える成果は、わたしに満足感を与えてくれた。


◇◇◇


毎日の様に雪の降る日が続いている。
教室を出ると凍える様に寒く、マントは欠かせなくなった。
縫製室には小さなストーブがあったが、それでも、寒く、手が震え、ドレス作りは困難になった。

「うう…寒いわね…暖炉が欲しいわ…」
「はい、寒いです…でも、頑張りましょう!」

創立記念パーティまでは、後二月程だ。

何とか、パーティには間に合わせたい___

最初は、ただ、エイプリルの意識をウイリアムから離したかっただけだが、
今となっては、別の意味も出て来た。

前の時、エイプリルのドレスは、彼女が唯一持っている淡い桃色のドレスだった。
それを着て倒れている姿を、わたしは今でも思い出せる。
それに、わたしもだ…

もし、違うドレスを着ていたら…

運命は変えられるのではないか?
そんな風に思えるのだ。

あのドレスは縁起が悪いもの、絶対に、完成させなきゃ!


◇◇


漸く雪が収まった頃、昼休憩の食堂で、

「この週末は空いている?《雪まつり》を見に行かないか」

ウイリアムが皆に声を掛けた。
皆、それは、ザカリー、エイプリル、サマー、わたしだ。
ウイリアムの中で、わたしたちは《友》、《仲間》として、認識されている様だ。

《雪まつり》は、王都で毎年開催される、大々的な祭りで、
中央の大広場には、雪の彫刻がズラリと並び、夜には蝋燭の灯りで飾られる。
郊外の湖ではスケートが楽しめ、出店も出される。
祭りの期間は一月程で、その間、観光客が多くあつまって来る。
興味が無い訳ではないが…

でも、雪まつりになんか行ったら…

オリヴィアが激怒する姿が浮かんだ。
わたしは断ろうと口を開いたが…

「週末は…」

「勿論、行きます!」

サマーの声が大きく、わたしの声は搔き消された。

「王都の雪まつりですよね?行ってみたかったんです!」
「大きな祭りで、毎年賑やかだよ」
「ルーシー様もエイプリルも、勿論、行くでしょう?行きましょうよ!」
「え、わたしたちは…」

チラリとエイプリルを見ると、エイプリルは『お願い!』という目でわたしを見ていた。
うう…この表情には、弱いのよね…

「絶対に行くべきよ!」

サマーが強く主張した事もあり、わたしとエイプリルも行く事を決めた。


◇◇


週末、わたしたちは他の学院生の目を避ける為、寮から少し離れた、教会区の広場で待ち合わせる事にした。
教会区は、教会、修道院等があり、信仰の篤い生徒以外、あまり立ち寄る事もなかった。
それでも、一応、目立たない様に、ワンピースの上にフード付きのコートを着ている。
わたしたちが広場に着くと、フードを被ったローブ姿の男性二人が近付いて来た。

「やぁ!来たね!」

明るい声に、エイプリルとサマーが笑顔になった。

「ウイリアム様!」
「お待たせしました」
「いや、僕たちも少し前に着いた処だよ」

ローブの色は町人が良く使う、色味の薄いカーキー色なので、
一見、旅人の様にも見えるが、中身は王子様とその護衛だ。
二人にも、「目立たない恰好で来て」と注文しておいたのだ。
尤も、黒いブーツはピカピカだけど!

「ルーシーも来てくれてありがとう。
この格好はどうかな?及第点?」

ウイリアムがフードの奥でニヤリと笑う。

「ええ、とってもお似合いです、殿下」
「折角、変装したんだから、殿下は止めて欲しいな」

ウイリアムは楽しそうに、白い歯を見せて笑った。

「さぁ、行こう、馬車に乗って!」

ウイリアムに急かされ、わたしたちは荷馬車の荷台に乗り込んだ。
馬車は郊外の湖に向かう。
小さな湖で、冬になると凍り、スケートを楽しめるらしい。
わたしも話に聞いただけで、実際に来るのは初めてだった。
一年生の時は、誘ってくれる友などいなかったし、独りで行く程には興味も無かった。

それが、こうして、五人で湖に向かっているなんて…

前の時とは違い過ぎていて、自分でも信じられなかった。

未だに、夢の中だなんて事はないわよね?
ああ、どうか、夢ではありません様に!

あまりに楽しくて、幸せで、そう思わずにはいられなかった。

あなたにおすすめの小説

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

何もしなかっただけです

希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。 それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。 ――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。 AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。 けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。 それでも旦那様は優しかった。 冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。 だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。 そんなある日、彼女は知ってしまう。 旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。 彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。 都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る 静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。 すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。 感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく

死ぬまでに叶えたい十の願い

木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」 三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。 離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する—— 二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。