【完結】《BL》殺るか、ヤられるか??悩める転生勇者、この雑用係は魔王の配下らしい!

白雨 音

文字の大きさ
7 / 19
本編

しおりを挟む

念の為に、九階層まで降りてみたが、変わりは無かった為、地上に戻る事にした。
地上に戻る際には、ドーンの魔法陣で移動出来る為、時間は掛からなかった。
勿論これは、ドーンが疲労していないからこそ使える方法だった。

ギルドに行き報告を済ませ、討伐料を受け取り、魔石と素材を買い取って貰い、借家に戻った。
討伐料、魔石と素材の料金は、メンバーで均等に分ける事にしていた。
《雑用係》は給金が決まっている為、含まれないのだが、メンバー皆が「ディーにも分けるべき」と声を上げた。
《勇者パーティ》は国からも補助金が出ているし、俺たちへの依頼は高額案件が多い。マックスは食事と女遊び、ドーンは魔術研究の資金、ロリーは食事と骨董、クリスタルは薬や薬の研究資金…皆それなりに散財はしているものの、収入も多い為、困窮はしていない。病的に金に執着する者もいなかった。

「私は討伐には加わっていませんので、必要ありません、私には給金だけで十分です」

ディーも金に執着するタイプではない。金に執着するタイプであれば簡単なのだが…

「ディー、これを受け取ってくれ」

俺は過分の金貨が入った袋をディーに差し出した。

「新しい町へ行く旅費と宿代、何かを始める為の資金には十分になるだろう」

俺の言葉にディーではないく、周囲にいたメンバーが反応した。

「おい!ディーを辞めさせる気か!?」
「アレク!馬鹿言うな!ディーはパーティに必要だって!」
「そうですわ、今回の事でもお分かりでしょう、これ程快適だった事はありませんわ、それを捨てる等、どうかしています」
「…!…!」

確かに、快適だった。
マックスとロリーは満腹感で機嫌が良かったし、クリスタルとドーンは寝心地の良い寝床を気に入っていた。
皆、動きが良く、力を発揮出来ていた。ディーはメンバー皆の力を底上げしたと言っても良い。
だが、そんな風に言う事は出来ない…

「当初の約束の一月は過ぎた、最初から雇うのは短期だと言った筈だ」
「ディーは十分に能力を示しただろ!大荷物抱えて、俺たちに付いて来た!それだけで十分だろ!?」
「そーだよ!あたしらが居て欲しいっていってんだ!幾らリーダーだからって、勝手に決めんなよ!」
「そうですわ、皆の意見で決めるべきです」
「…!」

皆が口々に言うのを俺は何処か冷めた目で眺めていた。
雇わざるを得ない、そうなる様に仕組まれているのか?やはり、ディーが魔王軍四天王の一人なのか?

「わーた!んじゃ、俺が個人的にディーを雇ってやる!」

言い出したのはマックスだった。それに、皆も同調した。

「そーだな、個人で雇うならアレクの許可も要らないよな!」
「私もそれで良いと思いますわ」
「…!」

ディーの給金位、簡単に出せるだろう。
だが、これでは意味が無い___

「駄目だ、不満ならば《勇者パーティ》から出て行ってくれ」
「アレク!おまえ!!」

マックスが俺の胸倉を掴み上げた。マックスは二メートル近くあり、俺の足は簡単に地上から離れた。

「止めて下さい!!」

それを止めたのは他でもない、ディーだった。

「アレク様を離して下さい!アレク様は何も悪くありません!原因は私です…」

ディーが悲し気に微笑み、俺はギクリとした。

「《勇者パーティ》に、例え雑用係であっても、黒人種なんて、居てはいけない存在です。
不吉と忌み嫌われる者がいては、《勇者パーティ》の名を貶めるでしょう…」

俺はマックスの腕を力で離させ、「違う!そうじゃない!」と叫んだ。
その通りだ、おまえが黒人種だから雇えない___そう言えば簡単に追い出せた筈なのに、俺は必死に否定していた。

「黒人種なんて関係無い!そんな事で名を貶められる程、《勇者パーティ》は安くはない!
大体、黒人種なんて、肌の色が黒いだけだ、俺たちと何も変わらない。
おまえはもっと、堂々と生きろ___」

「アレク様…」

ポロリ…
綺麗な黒曜石の瞳から、透明な輝きが零れ落ちた。
俺はどうしてだが、ディーが小さな子供に見え、抱きしめずにはいられなかった。
「よしよし」と宥める様に背中を叩く。
こんなに大きくなったのに、まだまだ子供だな…なんて、微笑ましく思っていた所、

「まぁ!黒人種という事で苦労なさっていますのね~」

クリスタルがわざとらしく言い出し、俺は嫌な予感がした。

「そーいや、差別?とか、あんだろ?」
「だからフード被ってんのか!」
「生き難いですわよね~、ディーさんは自信が無い様ですし、自信を付けさせる為にも、《勇者パーティの雑用係》はよろしいんじゃありません?」
「!!成程!《勇者パーティの雑用係》っていやー、一目置かれるもんな!」
「言うは易し行うは難しですわ、ディーさんが堂々と生きていく為に、言葉だけでなく、力をお貸しなさっては?」
「おお!いいじゃん!これぞ勇者の善行だな!ひゃっひゃっひゃ!」

俺はディーからパッと手を離し、皆を睨み見た。

そんなの認められるか!
今、こいつから離れなければ、益々離れられなくなるだろう。
一度快適さを覚えれば、そこから抜け出す事は難しい…いや、もう既に遅いか?
そんな事を頭で考えながらも、俺の口は全く違う事を言っていた。

「ならば、命を賭けろ!
おまえに少しでも疑わしい所があれば、俺は迷わずおまえを斬る!
その覚悟があるなら、暫くは置いてやる」

ディーはその手を胸に当て、「承知致しました、何処までもお供させて下さい」と真摯に誓った。

結局は振り払えない、皆の後押しの所為ではない、
これは俺の《甘さ》だ___


だが、魔王戦だけは絶対に連れて行かない!

俺におまえを殺させないでくれ___!



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】オーロラ魔法士と第3王子

N2O
BL
全16話 ※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。 ※2023.11.18 文章を整えました。 辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。 「なんで、僕?」 一人狼第3王子×黒髪美人魔法士 設定はふんわりです。 小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。 嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。 感想聞かせていただけると大変嬉しいです。 表紙絵 ⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

邪魔はさせない

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 病棟で知り合った2人。生まれ変わって異世界で冒険者になる夢を叶えたい!

【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。

キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。 しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。 迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。 手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。 これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。 ──運命なんて、信じていなかった。 けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。 全8話。

【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。 一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。 もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。 ルガルは生まれながらに選ばれし存在。 国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。 最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。 一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。 遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、 最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。 ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。 ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。 ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。 そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、 巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。 その頂点に立つ社長、一条レイ。 冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。

【完結】トリップしてきた元賢者は推し活に忙しい〜魔法提供は我が最推しへの貢物也〜

櫛田こころ
BL
身体が弱い理由で残りの余生を『終活』にしようとしていた、最高位の魔法賢者 ユーディアス=ミンファ。 ある日、魔法召喚で精霊を召喚しようとしたが……出てきたのは扉。どこかの倉庫に通じるそこにはたくさんのぬいぐるみが押し込められていた。 一個一個の手作りに、『魂宿(たまやど)』がきちんと施されているのにも驚いたが……またぬいぐるみを入れてきた男性と遭遇。 ぬいぐるみに精霊との結びつきを繋いだことで、ぬいぐるみたちのいくつかがイケメンや美少女に大変身。実は極度のオタクだった制作者の『江野篤嗣』の長年の夢だった、実写版ジオラマの夢が叶い、衣食住を約束する代わりに……と契約を結んだ。 四十手前のパートナーと言うことで同棲が始まったが、どこまでも互いは『オタク』なんだと認識が多い。 打ち込む姿は眩しいと思っていたが、いつしか推し活以上に気にかける相手となるかどうか。むしろ、推しが人間ではなくとも相応の生命体となってCP率上がってく!? 世界の垣根を越え、いざゆるりと推し活へ!!

【8+2話完結】氷の貴公子の前世は平社員〜不器用な恋の行方〜

キノア9g
BL
氷の貴公子と称えられるユリウスには、人に言えない秘めた想いがある――それは幼馴染であり、忠実な近衛騎士ゼノンへの片想い。そしてその誇り高さゆえに、自分からその気持ちを打ち明けることもできない。 そんなある日、落馬をきっかけに前世の記憶を思い出したユリウスは、ゼノンへの気持ちに改めて戸惑い、自分が男に恋していた事実に動揺する。プライドから思いを隠し、ゼノンに嫌われていると思い込むユリウスは、あえて冷たい態度を取ってしまう。一方ゼノンも、急に避けられる理由がわからず戸惑いを募らせていく。 近づきたいのに近づけない。 すれ違いと誤解ばかりが積み重なり、視線だけが行き場を失っていく。 秘めた感情と誇りに縛られたまま、ユリウスはこのもどかしい距離にどんな答えを見つけるのか――。 プロローグ+全8話+エピローグ

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

処理中です...