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しんにゅう2
しおりを挟む俺たちがフリーズする中、海は咳払いをして顔を正す。
「ええっと、こちらの方は、僕ら室内楽団の責任者を担ってくださる日之本先生だよ」
「えっ。せ、責任者⁉」
男はドアに凭れ掛かり、俺たちへと微笑みを向けている。
男の髪はアッシュグレーで、頭の上部に丸みをつけて襟足にレイヤーを入れた、いわゆるマッシュウルフ。背は浦野くらいで、180センチちょとはありそうだ。
清潔感を感じさせつつも、ハイブランドのスーツを着崩す小慣れ感から見て、社会人三年目くらいかなと俺は勝手に推測した。
正直、あまりいけ好かない……。
「わ~責任取ってくれるの~? ありがとぉ~」
ラブ沢はスキップをしながら責任者の前まで行くと、ゆら~っと腰を右に傾け、ゆっくり元の位置に戻した。これはラブ沢なりの感謝のお辞儀だ。
動く度にいい匂いを漂わせるラブ沢に、いつものエフェクトが纏う。たぶん瞳を輝かせて嬉しそうに笑っているのだろうなと、左右に揺れている後ろ姿から俺は想像した。
「ハハハッ! 責任者決まったかー!」
「まじでかっ⁉ ほな先生っ、責任よろしゅうお願いしますっ!」
「お、おい。何だかやたら責任ばかり強調してくるんだな、君たちは……」
責任者の男は、やれやれといった感じで長い前髪を掻き上げる。指の間からするすると零れ落ちる毛先と流し目が、鼻に付くとは言え色気を感じた。
「私は日之本景諭。この学校のOBで、今日投入されたばかりの新米教師だ。そして海くんのご紹介通り、これから君たちの活動を視させてもらうよ。ついでに言うと、名字から察しが付いたと思うが、私はこの学園の日之本理事長の孫でもあるんだ」
日之本は薄い唇から白い歯を少し覗かせて、嬌笑を浮かべる。その余裕たっぷりな大人の魅力が、俺にはとても鬱陶しく感じたのだけれど、ラブ沢の明るい言葉で思い直した。
「ジェーピー先生が来てくれたから、これでコンテストにエントリー出来るねぇ~。それで結果次第では部活に昇格~。なんだかボク、すっごくやる気になってきたぁ~」
確かにだ。春から顧問探しを始めて、もう少しすれば夏休みを迎える。これまで誰も取り入ってくれなかっただけに、こんな旨い話があるのだろうかと斜に構えてしまいそうだけど、そんなのもったいない。
待ち望んでいた機会なのだから素直に喜ぼう!
「海。続けてきて良かったな!」
「うんっ、やっとここまで来た!」
いつにも増して嬉しそうに目を細める海と一緒に、皆で「JPって呼ばれるの嫌だなぁ」と頬を引きつらせる日之本を囲んだ。
「絶対予選通過するぞー」やら「部活の承認貰うぞー」などと盛り上がった。
「しかし皆。私がお爺様……理事長の孫だという立場を利用して、個人的な感情で健気な君たちを応援していくには少し条件があってね」
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