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19.お守り
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「わあ、街のほうまで見えるんですね」
アメリアが窓から景色を見たいというのでフレディも寄った。危険のないように塔の外側に防御魔法をかける。
「高いところは怖くない?」
「下を見たら少し。でも木を見下ろすって変な気分です」
「僕はここにずっといるから慣れた。
この間庭園でお弁当を食べたときに、久しぶりに緑色を見た。アメリアの瞳は綺麗。葉っぱを見上げたときの太陽に透けた色みたい。」
アメリアは近くで目を覗き込まれて、緊張した。
でもフレディは淡々とした調子で続ける。
「僕はずっと魔術のことしか考えてなかったから、何もできない。何が苦手なのかもわからない。でも他の魔術師からも欠陥品のように言われているから足りない人間なんだと思う。
アメリア、
本当に僕なんかでいいの?ってずっと考えてる」
「ずっとここにいて寂しかった?」
「最初は少し。でも、僕の魔力は強すぎて他の魔術師を傷つけてしまった。誰かに嫌われるくらいなら最初から僕のことを誰も知らない方がいい。それに、本当に一人が楽だったんだ。
君に会えなくて辛い以外は」
散らかった仕事机と椅子が一つしかないので床に敷物をひいてサンドイッチを食べた。
「君に渡したいものがあるんだ」
小さなネックレスだった。紫色と緑色が対角線で区切られた四角のペンダントトップ。
「瞳の色ね!」
「そう。魔力を込めた。君が危ないときに僕に異変がわかるようになっている。だいたいの危険度と、場所がわかる。」
自分の耳にお揃いの飾りをつけた。
「ありがとう」
「一人暮らしは心配だから」
アメリアには言わなかったけれど、アパートのドアは男の力で無理やり押し入ることもできそうだった。
エデンまで送る間、手を繋ぐ。
「来週、3日ほどお休みしますね。帰って母と会って来ようと思うの。」
「そう、か。母上は今どこに?」
「ヨーク伯爵領よ。アガット様が帰られるのと一緒に連れていってもらうの」
「アガット様はヨークの領主様だったのか。美食家と言われるのもわかるね」
ヨーク領は山からの水が豊かで作物がよく実る。海のものと山のものが出会う物流の拠点の一つで、食材の味を生かした料理が有名だ。
「フレディは詳しいのね。魔術以外は何も出来ないなんてもう言わないで。」
「たまたま、転移する魔法陣の以来を受けたら調べるだけだよ。本当は僕が行けばいいんだけど人任せにして陣の最終確認だけしていたり。
もし良かったらアメリアの母上のいる屋敷と君のアパートを繋ぐこともできる。そうすればいつでも会える。」
「本当に?
……でも、私、何年も母から逃げていて。喜んでくれるかどうか……」
瞳に不安が揺れる
「きちんと話せるといいね」
「そうね、頑張る。」
アメリアは、ネックレスをぎゅっと握った。
「ねえ、魔法陣でいつでも会えるなら、ここと私の家を繋いだらいつでも会えるんじゃない?」
ふと思い付いたように言ってしまってから、アメリアは後悔した。
フレディが赤くなったから。
自分の言った内容を脳内で繰り返して、赤くなった。
「それも、正直少し考えたんだけど、そうしたら君から離れられなくなりそうで怖い。
君がイキイキと働いているのが好きだし、僕も……」
そこで、フレディは息を整えた。
「君にがっかりされないように、ちゃんと仕事をする男って思われたいから。魔法陣を使うのは制約があるから、もし母上の住まいに書くなら僕が一緒に転移するよ。だから、その、母上に紹介できるようなきちんとした大人に見えるように頑張るよ」
アメリアはエデンに入る時も、手を振って笑った。
アメリアが窓から景色を見たいというのでフレディも寄った。危険のないように塔の外側に防御魔法をかける。
「高いところは怖くない?」
「下を見たら少し。でも木を見下ろすって変な気分です」
「僕はここにずっといるから慣れた。
この間庭園でお弁当を食べたときに、久しぶりに緑色を見た。アメリアの瞳は綺麗。葉っぱを見上げたときの太陽に透けた色みたい。」
アメリアは近くで目を覗き込まれて、緊張した。
でもフレディは淡々とした調子で続ける。
「僕はずっと魔術のことしか考えてなかったから、何もできない。何が苦手なのかもわからない。でも他の魔術師からも欠陥品のように言われているから足りない人間なんだと思う。
アメリア、
本当に僕なんかでいいの?ってずっと考えてる」
「ずっとここにいて寂しかった?」
「最初は少し。でも、僕の魔力は強すぎて他の魔術師を傷つけてしまった。誰かに嫌われるくらいなら最初から僕のことを誰も知らない方がいい。それに、本当に一人が楽だったんだ。
君に会えなくて辛い以外は」
散らかった仕事机と椅子が一つしかないので床に敷物をひいてサンドイッチを食べた。
「君に渡したいものがあるんだ」
小さなネックレスだった。紫色と緑色が対角線で区切られた四角のペンダントトップ。
「瞳の色ね!」
「そう。魔力を込めた。君が危ないときに僕に異変がわかるようになっている。だいたいの危険度と、場所がわかる。」
自分の耳にお揃いの飾りをつけた。
「ありがとう」
「一人暮らしは心配だから」
アメリアには言わなかったけれど、アパートのドアは男の力で無理やり押し入ることもできそうだった。
エデンまで送る間、手を繋ぐ。
「来週、3日ほどお休みしますね。帰って母と会って来ようと思うの。」
「そう、か。母上は今どこに?」
「ヨーク伯爵領よ。アガット様が帰られるのと一緒に連れていってもらうの」
「アガット様はヨークの領主様だったのか。美食家と言われるのもわかるね」
ヨーク領は山からの水が豊かで作物がよく実る。海のものと山のものが出会う物流の拠点の一つで、食材の味を生かした料理が有名だ。
「フレディは詳しいのね。魔術以外は何も出来ないなんてもう言わないで。」
「たまたま、転移する魔法陣の以来を受けたら調べるだけだよ。本当は僕が行けばいいんだけど人任せにして陣の最終確認だけしていたり。
もし良かったらアメリアの母上のいる屋敷と君のアパートを繋ぐこともできる。そうすればいつでも会える。」
「本当に?
……でも、私、何年も母から逃げていて。喜んでくれるかどうか……」
瞳に不安が揺れる
「きちんと話せるといいね」
「そうね、頑張る。」
アメリアは、ネックレスをぎゅっと握った。
「ねえ、魔法陣でいつでも会えるなら、ここと私の家を繋いだらいつでも会えるんじゃない?」
ふと思い付いたように言ってしまってから、アメリアは後悔した。
フレディが赤くなったから。
自分の言った内容を脳内で繰り返して、赤くなった。
「それも、正直少し考えたんだけど、そうしたら君から離れられなくなりそうで怖い。
君がイキイキと働いているのが好きだし、僕も……」
そこで、フレディは息を整えた。
「君にがっかりされないように、ちゃんと仕事をする男って思われたいから。魔法陣を使うのは制約があるから、もし母上の住まいに書くなら僕が一緒に転移するよ。だから、その、母上に紹介できるようなきちんとした大人に見えるように頑張るよ」
アメリアはエデンに入る時も、手を振って笑った。
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完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
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