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魔術師団へ行ったジオスの話
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ジオスは王宮に納品に来ていた。
王宮や騎士団で使う薬などを発注されたからだ。そのうち栄養剤を魔術師団に至急届けるように頼まれた。
元職場に行くのは少し気を使う。
険悪になったわけではないけれど、城下で暮らしてみたあとは
「うわあ、ひどいな」
魔術師団の建物に一歩入ると、気の流れそのものが澱んでいる。
あちこちに椅子に座ったまま寝ている団員がいる。
「お疲れ様です」
「ジ、ジオスなのか……?」
あちこちで起き上がってよろよろと近づいてくる、元同僚たち。
「お前、一度も顔見せないから心配してたんだぜ」
「元気、か、ゲホッ」
「顔色もいいな、やっぱり日光浴びると人間らしさを取り戻せるのか?」
アンタらこそ死にかけじゃないっすか!
「これ、よかったら」
栄養剤と、サンプルを配る
「ありがとう、生き返る」
「ジオスは調合上手かったよな」
涙を流す者もいる。
「俺が辞める前も人不足でしたけど、ここまでじゃなかったですよね?何かありました?」
「団長が……!」
「女の子が!」
「夜食!」
「これで離婚なんてことになったら」
みんなが一斉に言うから聞き取れない。
「団長、結婚してもう落ち着いてるのでは?」
「それが、まだ魔力が暴走してて。嫁が可愛すぎるって言いながら机を叩いたら地面まで振動が伝わって温泉湧いたんです」
「まあ、俺たちも団長のお陰で侍女さんと仲良くなったんですけどね!」
「その話詳しく教えて」
「ん?ジオスも居れば良かったのにな。
あのな、リーゼさんの先輩か魔術師を探してて狙ってるらしくって。それで夜食の差し入れとかしてくれたんだよ。」
「そのお礼の時かな、団長がリーゼさんに会って一目惚れして」
「魔力が乱高下して、俺たちはバリアと後始末に追われている……と。そういうわけ」
「ジオスならいつも結界とか助かったのに」
「カトリーヌさんだっけ、あの美人さんと知り合えたのにその後も名乗りでないってあり得る!?」
「ない、と思う」
セルジオ副団長が戻ってきた
「ジオス久しぶり。差し入れ?」
「差し入れと、王宮からの注文で納品に来ました」
「なんならうちの設備使って作ってくれたら保存がラクだし輸送費浮くのに」
「いいんですか?」
「うん、言っとくよ。彼女にも会えるし王宮に顔繋いどく方がいいでしょう」
「ありがとうございます」
「いいっていいって。ジオスみたいに辞めても他でも生きていけるって思ったら、みんなも生きる希望が湧くから」
「目立たないけど副団長も相当精神やられてますね」
魔術師たちが、口を開けている。
「え、ジオス彼女できたのか」
「辞める前にあんなに病んでたのに?やっぱり外の世界のほうが女の子と知り合えるのか?」
「いや、知り合ったのはここで。
最近、再会したんだ」
「そんな夢みたいなことがあるんだな」
ジオスが帰ったあと。
「いいなー。俺たちなんか団長のノロケを聞いて死にそうなほど激務なのに」
「それにしても、ジオスは愛想もないし社交的でもないのにいつの間に……」
「魔力がないってあんなに落ち込んでたのに」
「ジオスは手先が器用だったから。気も良くつくし。
ハンドクリームが売れてるみたいだよ。
彼女にもクリームをあげたのがきっかけ」
セルジオがニヤニヤしながら言った。
「妻にジオスのクリームをあげたら喜んでくれたよ。」
あ、ここにも嫁のノロケで団員を疲れさせる人がいた。
みんながそれぞれの持ち場に戻ろうとしたときに
「あ、ちなみにジオスの彼女、カトリーヌ嬢だから」
それを聞いて、魔術師たちはガクンと崩れ落ちた。四つん這いになって
「ずるい……!ジオスずるい!」
と床を拳で叩いた。
王宮や騎士団で使う薬などを発注されたからだ。そのうち栄養剤を魔術師団に至急届けるように頼まれた。
元職場に行くのは少し気を使う。
険悪になったわけではないけれど、城下で暮らしてみたあとは
「うわあ、ひどいな」
魔術師団の建物に一歩入ると、気の流れそのものが澱んでいる。
あちこちに椅子に座ったまま寝ている団員がいる。
「お疲れ様です」
「ジ、ジオスなのか……?」
あちこちで起き上がってよろよろと近づいてくる、元同僚たち。
「お前、一度も顔見せないから心配してたんだぜ」
「元気、か、ゲホッ」
「顔色もいいな、やっぱり日光浴びると人間らしさを取り戻せるのか?」
アンタらこそ死にかけじゃないっすか!
「これ、よかったら」
栄養剤と、サンプルを配る
「ありがとう、生き返る」
「ジオスは調合上手かったよな」
涙を流す者もいる。
「俺が辞める前も人不足でしたけど、ここまでじゃなかったですよね?何かありました?」
「団長が……!」
「女の子が!」
「夜食!」
「これで離婚なんてことになったら」
みんなが一斉に言うから聞き取れない。
「団長、結婚してもう落ち着いてるのでは?」
「それが、まだ魔力が暴走してて。嫁が可愛すぎるって言いながら机を叩いたら地面まで振動が伝わって温泉湧いたんです」
「まあ、俺たちも団長のお陰で侍女さんと仲良くなったんですけどね!」
「その話詳しく教えて」
「ん?ジオスも居れば良かったのにな。
あのな、リーゼさんの先輩か魔術師を探してて狙ってるらしくって。それで夜食の差し入れとかしてくれたんだよ。」
「そのお礼の時かな、団長がリーゼさんに会って一目惚れして」
「魔力が乱高下して、俺たちはバリアと後始末に追われている……と。そういうわけ」
「ジオスならいつも結界とか助かったのに」
「カトリーヌさんだっけ、あの美人さんと知り合えたのにその後も名乗りでないってあり得る!?」
「ない、と思う」
セルジオ副団長が戻ってきた
「ジオス久しぶり。差し入れ?」
「差し入れと、王宮からの注文で納品に来ました」
「なんならうちの設備使って作ってくれたら保存がラクだし輸送費浮くのに」
「いいんですか?」
「うん、言っとくよ。彼女にも会えるし王宮に顔繋いどく方がいいでしょう」
「ありがとうございます」
「いいっていいって。ジオスみたいに辞めても他でも生きていけるって思ったら、みんなも生きる希望が湧くから」
「目立たないけど副団長も相当精神やられてますね」
魔術師たちが、口を開けている。
「え、ジオス彼女できたのか」
「辞める前にあんなに病んでたのに?やっぱり外の世界のほうが女の子と知り合えるのか?」
「いや、知り合ったのはここで。
最近、再会したんだ」
「そんな夢みたいなことがあるんだな」
ジオスが帰ったあと。
「いいなー。俺たちなんか団長のノロケを聞いて死にそうなほど激務なのに」
「それにしても、ジオスは愛想もないし社交的でもないのにいつの間に……」
「魔力がないってあんなに落ち込んでたのに」
「ジオスは手先が器用だったから。気も良くつくし。
ハンドクリームが売れてるみたいだよ。
彼女にもクリームをあげたのがきっかけ」
セルジオがニヤニヤしながら言った。
「妻にジオスのクリームをあげたら喜んでくれたよ。」
あ、ここにも嫁のノロケで団員を疲れさせる人がいた。
みんながそれぞれの持ち場に戻ろうとしたときに
「あ、ちなみにジオスの彼女、カトリーヌ嬢だから」
それを聞いて、魔術師たちはガクンと崩れ落ちた。四つん這いになって
「ずるい……!ジオスずるい!」
と床を拳で叩いた。
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