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クララの恋
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ルーベンスが黙ったので、クララも何も言えなかった。
想いが違う、そんなこと今言わなくたって良いじゃない。
私は記事を見て悲しかったし噂も否定して欲しかった。
嘘でもいいから、同じ気持ちだって信じさせて欲しい。
「私のこと、好きって」
目が潤んでくる。
泣いたらダメ、優しいルーは困って話を止めてしまうかもしれない。
ルーのことだから、よく考えて出した結論なんだと思う。
だから聞かないと。
そう思うのに、胸が締め付けられる。
「好きだよ。クララのことは大好きだ」
「じゃあ」
「でも、クララが思っているのとは違う」
「わかるように言って、やっと気持ちが通じたと思ったのに」
子どもみたい、と自分でも思った。
「クララが、他の従兄弟より僕を選んでくれて嬉しい。でも、クララに思ってもらえるような奴ではないんだ。本当は。」
ルーベンスは水を飲んだ
「クララに嫌われたくなくて優しいフリをしていた。従兄弟というのを利用して。クララは僕と穏やかに過ごしたいと言ってくれたけど、僕は穏やかな人間じゃない。嫉妬ばかりだし、仕事も中途半端で自信がなかった。
それでもクララが好きと思ってくれるなら、勘違いをしたまま婚約して結婚しようと思った。でも」
ルーベンスはクララをまっすぐ見つめた。
「情けないけれどクララにがっかりされて、従兄弟としても戻れないのは嫌だ。ずるくてごめん。」
ルーベンスが席を立とうとした
「やだ!」
「クララを置いて帰らないよ。ちょっと預けているものがあるんだ。」
しばらくして戻ったルーベンスは小さな鉢植えを持っていた。
ピンク色の小さなバラだった。
クララはその花を見つめた。
「これ、僕が見つけた新種なんだ。可愛いだろう」
可愛いけど、仕事の話を聞く余裕は今はない。
「この花の学名の一部をクララで登録したよ。」
「えっ?」
「クララは興味ないだろうし、園芸を趣味にしてる人も学名は知らないかもしれないけど。
永久に残るから、発見者と学名は。僕の名前とクララをセットで残したかった。どうしても。」
「ルー」
「な?重いだろ?クララは嫌かもしれないけど、クララとの繋がりが一つでも残って欲しかった。
僕の想いはこの花に閉じ込めてもいいんだ。クララが……優しい穏やかな僕を好きだった記念に」
「待って、ルー、なんで悲しそうなの?」
「だって、クララが好きでいてくれるわけない」
「どうして?こんなに素敵なことをルーが考えてくれていたなんて喜ぶに決まってるじゃない」
「本当に?」
「だって、こんなこと誰も真似しようとしても出来ないわ。」
「良かった。
クララを一番にできて。
やっぱり無理してでも
クララに渡せて良かった」
「無理って?」
「その、来週、王女殿下に花を献上する予定で。」
「え?」
クララの表情が変わった
「それを見つけたのは偶然で!たまたま!クララのために新種を見つけようとしていて、もう一つ全く別の植物なんだけど」
「へえ、」
ルーベンスは汗をかいた。
エドガー様にそっくりだ
「まだ箝口令が敷かれているので、詳しくは言えないけど……
王女殿下の名前を学名に付けた花があるんだ。でもそれは僕と共同発見者の名前も付けた。それから、この国の名前も。
我が国の固有種なんだ。
王女殿下は遠い国に行かれることが決まっていて。
そんなに遠くない未来に。そこへは、我が国のものは身に付けて行けない決まりらしいんだ。
だから、将来は国交が進めば花なら愛好家が取引できるから……
個人的な愛情ではなくて国民としての親愛と、僭越ながら応援する気持ちで。
でも、クララに先に捧げたかったんだ。真心くらいしか僕にはないから。
でも、そのせいで忙しくて会えなかった。
ごめん」
嘘の下手なルーベンスが外交上の機密について、つっかえながら話してくれた。
クララは笑った。
「ルーのバカ」
想いが違う、そんなこと今言わなくたって良いじゃない。
私は記事を見て悲しかったし噂も否定して欲しかった。
嘘でもいいから、同じ気持ちだって信じさせて欲しい。
「私のこと、好きって」
目が潤んでくる。
泣いたらダメ、優しいルーは困って話を止めてしまうかもしれない。
ルーのことだから、よく考えて出した結論なんだと思う。
だから聞かないと。
そう思うのに、胸が締め付けられる。
「好きだよ。クララのことは大好きだ」
「じゃあ」
「でも、クララが思っているのとは違う」
「わかるように言って、やっと気持ちが通じたと思ったのに」
子どもみたい、と自分でも思った。
「クララが、他の従兄弟より僕を選んでくれて嬉しい。でも、クララに思ってもらえるような奴ではないんだ。本当は。」
ルーベンスは水を飲んだ
「クララに嫌われたくなくて優しいフリをしていた。従兄弟というのを利用して。クララは僕と穏やかに過ごしたいと言ってくれたけど、僕は穏やかな人間じゃない。嫉妬ばかりだし、仕事も中途半端で自信がなかった。
それでもクララが好きと思ってくれるなら、勘違いをしたまま婚約して結婚しようと思った。でも」
ルーベンスはクララをまっすぐ見つめた。
「情けないけれどクララにがっかりされて、従兄弟としても戻れないのは嫌だ。ずるくてごめん。」
ルーベンスが席を立とうとした
「やだ!」
「クララを置いて帰らないよ。ちょっと預けているものがあるんだ。」
しばらくして戻ったルーベンスは小さな鉢植えを持っていた。
ピンク色の小さなバラだった。
クララはその花を見つめた。
「これ、僕が見つけた新種なんだ。可愛いだろう」
可愛いけど、仕事の話を聞く余裕は今はない。
「この花の学名の一部をクララで登録したよ。」
「えっ?」
「クララは興味ないだろうし、園芸を趣味にしてる人も学名は知らないかもしれないけど。
永久に残るから、発見者と学名は。僕の名前とクララをセットで残したかった。どうしても。」
「ルー」
「な?重いだろ?クララは嫌かもしれないけど、クララとの繋がりが一つでも残って欲しかった。
僕の想いはこの花に閉じ込めてもいいんだ。クララが……優しい穏やかな僕を好きだった記念に」
「待って、ルー、なんで悲しそうなの?」
「だって、クララが好きでいてくれるわけない」
「どうして?こんなに素敵なことをルーが考えてくれていたなんて喜ぶに決まってるじゃない」
「本当に?」
「だって、こんなこと誰も真似しようとしても出来ないわ。」
「良かった。
クララを一番にできて。
やっぱり無理してでも
クララに渡せて良かった」
「無理って?」
「その、来週、王女殿下に花を献上する予定で。」
「え?」
クララの表情が変わった
「それを見つけたのは偶然で!たまたま!クララのために新種を見つけようとしていて、もう一つ全く別の植物なんだけど」
「へえ、」
ルーベンスは汗をかいた。
エドガー様にそっくりだ
「まだ箝口令が敷かれているので、詳しくは言えないけど……
王女殿下の名前を学名に付けた花があるんだ。でもそれは僕と共同発見者の名前も付けた。それから、この国の名前も。
我が国の固有種なんだ。
王女殿下は遠い国に行かれることが決まっていて。
そんなに遠くない未来に。そこへは、我が国のものは身に付けて行けない決まりらしいんだ。
だから、将来は国交が進めば花なら愛好家が取引できるから……
個人的な愛情ではなくて国民としての親愛と、僭越ながら応援する気持ちで。
でも、クララに先に捧げたかったんだ。真心くらいしか僕にはないから。
でも、そのせいで忙しくて会えなかった。
ごめん」
嘘の下手なルーベンスが外交上の機密について、つっかえながら話してくれた。
クララは笑った。
「ルーのバカ」
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