虐めていた義妹に今さら好きだったなんて言えません

仙桜可律

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婚約者は一味違うらしい

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リズは重い頭を押さえながら起きた。
寝返りばかりしていたけど少しは眠れたようだ。

夢だったのかなとも思う。それでも、夜遅くにフィオナがもう一度やってきて抱きついてきた。
かなりワインの匂いがしたフィオナは、本当に嬉しそうだった。
「おやすみなさい、お姉様」
といって、親族のキスを頬にしてくれた。

じんわり心が温かくなった。
そう、フィオナがこんなに喜んでくれる。公爵夫妻とも良好な関係を築いている。そう、エリオット様にとって私が好ましいのは、そういう点かと思った。
子供の頃からお世話になっているから、馴染みがある。どんなに素晴らしい令嬢でも嫁ぐということは気苦労が多いと聞く。エリオット様が奥さまと家族の問題に板挟みになるのを懸念されたのかもしれない。

恋愛感情よりは先々の心配を取り除くことを優先させる方かもしれない。

夢かもしれないと思いながら、あの方に求められるならどんな理由でも探して納得しようとしている。
自分でも矛盾しているかもしれないけれど、エリオット様はずっと特別だったから、冷静になんてなれない。


フィオナと公爵夫妻と、エリオット様とずっと一緒にいられる。
そんな幸せなことがあって良いのかしら。

夜明け前だった。
また水を飲みに厨房に降りた。

ダイニングルームの扉が開いているのでそっと覗くと、エリオットがテーブルに突っ伏していた
恐る恐る近づくと、眠っている。
ワインの瓶があった。

フィオナと一緒に飲んだのかしら。

まさか一晩中?

「エリオット様、」

声をかけても反応がない。
厨房で水を汲んできた。
やっぱり起こしたほうが良いわよね……今日も出勤されるだろうし

肩をゆすると、瞼がゆっくりとあいた。
「リズ……?」

少しかすれた声。

「エリオット様、大丈夫ですか?お水飲めそうですか」

「……頭が痛い
ああ、飲みすぎたのか。フィオナのやつ……」

額を押さえて上体を起こす。

「すまないな、みっともないところを見せて」
「いえ、そんな」

「そうだな、これから家族になるからみっともない姿ばかり見せるかもしれない」

そう言ってはにかんで笑う姿に、リズは声も出せなかった。

夢じゃなかった、

「目覚めて初めて見るのがリズで良かった。」

ま、眩しすぎる。

水を、とにかく水を渡すと、直視出来なくてうつむいてしまった。

「もう少し待つつもりだったんだが、昨日は我慢できなかった。急な求婚で驚いたよな」

頷く。

「それでも、リズが良かった。家族になって欲しい」

涙が溢れてきた。

「はい、私でよかったら」

ふっと笑って、つむじの辺りにキスをされた。

「ありがとう。感謝する」

エリオットは自室に戻った。
残されたのは、真っ赤になったリズ。

「あんなの、断れるわけないじゃない……」

婚約者になってしまったら、甘かった。
視線も、声も。
いつも冷静なエリオット様が、私にだけだと思うとドキドキする。
もともと家族には優しい人だから。


エリオットは部屋に戻る前に、入浴することにした。
というか湯はなかったけれど水を浴びた。

危なかった。

リズに手を出すところだった。自分が酒臭いことに気づいてとどまった。
誉めてやりたい。

まあ婚約したからいつでも手を出しても良いといえば良いのだろうけれど、リズのペースに合わせるのが男の包容力ではないか。



耐えてみせる。
エリオットはそう思って拳を握った
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