虐めていた義妹に今さら好きだったなんて言えません

仙桜可律

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リズの心

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夢だと思った。

子供の頃に王子様にプロポーズされる夢。

でも、その相手は顔の見えない王子だった。エリオット様で考えたことなどなかった。想像することすら、申し訳ないような雲の上の人だったから。

「結婚してくれないか」

結婚
エリオット様と

私が

血が沸騰したかのように身体が熱くなった。

無理、そんなの無理だ。
毎日このお顔を眺めるなんて。
絶対に心臓がどうにかなってしまう。
「リズ?」

腰を屈めてエリオットがリズの顔を覗き込む。

「ひえええ」

「嫌か?」

「めっそうもない、そんな」

「良かった。断られたらどうしようかと思った」

(え?)

ぎゅっと抱き締められた。

「え、エリオットさま?」

「ありがとうリズ!大事にするよ」

そう言ってエリオットは二階に上がっていった。

「え?私、返事したっけ」

「おめでとう!リズ姉さま!!」

フィオナが駆け降りてきて、抱きついた。

「待って、私さっき返事をした覚えがないのだけれど」

周囲の使用人たちに視線で訊いても、みんな笑顔だったからそれ以上は言い張ることができない。

「でも、あの状態のお兄様を止めるのは無理だもの。」
フィオナが二階を指差した。

「リズにプロポーズをしようと必死だったから。それなのに取り消しなんてしたら寝込んでしまうかもしれないわ」

「そんな、私なんかのせいでエリオット様が?まさか」

「私もリズ姉様なら安心だわ!お兄様は結婚するのか心配だったから」

リズはやっぱり、これは夢に違いないと思った。
早く寝よう……。

握ったままの花束が、潰れかけていた。

「大変、お水を……」

「生けてお部屋にお持ちしますね」

一旦メイドに渡したときに、自分でもビックリするくらい手が淋しくなった。

部屋に戻ってストンとソファに座る。
ずるずるともたれかかったまま、動けない。

エリオット様が本当に私を望んでくださっているのか

そんなわけない

子供の頃から別世界の人だとわかっていた

ノックの音がしてメイドが花を運んできた。

「リズ様、眠れないのでしたらハーブティーをお持ちしましょうか」
「お願いしようかしら。やっぱりわかりますか」
「ええ。いくらおめでたいことでも興奮されると疲れも出ますし眠れないかもしれませんね」
「エリオット様は、どうしてらっしゃるのかしら」

メイドは、言えるわけがないと思った。

浴びるようにフィオナ様にお酒を飲まされています。
気持ちが通じた今、リズ様にあって我慢できなくなると困るので浮かれるまま酔わされています。

言えない。
幸せな顔をしたエリオット様と、鬼のような形相のフィオナ様は見せられない。


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