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4. 最速で外堀を埋められました
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ミルクティーを渡されて飲んでいる。
並んで横にラルフ様が座った。
立たせておくことなんて出来ないから、仕方がない。
並んで座るなんて初めてのことで視線に困るけれど、仕方ない。
カップだけ見ていようと思った。それにしても、ラルフ様の足が長くて、視界に入ってしまう。私は足が浮くくらいなのに、とても窮屈そう。
飲み終わってしまったカップをもて余していたらラルフ様が給仕を呼んで下げてくれた。
「フローラ嬢、落ちつきましたか」
頷く。本当は近くにラルフ様がいるだけで心臓がもたない。
「どうか、あなたにお願いがあります。
私との婚姻を考えて欲しい」
何を言われているのか一瞬わからなかった。
「なぜですか?」
「あなたと人生を一緒に送りたいと思ったからです」
「私に?結婚、わたしに……」
だって。
仕事のためって。
「私、役に立ちませんが……?」
するとラルフ様は笑った。
「役に立つかどうかではなく、あなたが良いんです。それに、あなたが居てくれると私は助かる。」
「ラルフ様はお仕事が忙しいんですよね?」
「そうですね、忙しい時期が多いです。そういう夫が嫌だと仰るなら努力しますが」
まるで叱られた犬のように伏し目がちになる。
はっ!
わかりました!
忙しくて奥さまを構う暇がないので、私なら放置していても取り乱さず機嫌を損ねずおとなしくしていると思われたのではないでしょうか。
派手ではないし、浮気の心配もない手のかからない妻。
それなら少し納得できます。
ラルフ様にとっての好条件とはそういうことでしょうか。
その相手に私を選んでくださると言うことは少なくとも信頼しているという表れでしょう。
それは、期待に応えたい。
「私でよろしいのならば」
そう答えてしまいました。
「本当に!?ありがとうフローラ嬢。すぐに正式に伺うよ。」
もしかしたら、本当にラルフ様に好きな方が出来たときに妾にされたり離縁したりする可能性もあるかもしれません。
それでも、ラルフ様ならもしそうなった時も誠実に対応してくださるような気がしました。
それまでラルフ様がお仕事に集中できるようにお仕えしたいと思いました。
滅多にない笑顔のラルフ様は見ているだけでも幸せな気持ちになりました。
それでも、恋人期間のない政略でもない婚約というものが不安定なものだと私はまだ理解していませんでした。
翌日、王太子の執務室で
上機嫌のラルフは仕事の速度も上がり、周りを圧倒していた。
「その様子ではうまくいったようだな」
「はい。彼女も了承してくれました。あとは最小の労力で最速で結婚できれば……」
「いやいやいや、女性にとって結婚は一生の晴れ舞台だと聞く。労力という言い方は良くないと思うぞ?」
「しかしきっと彼女は派手なことを好まないと思うので、さっさと同じ家に暮らせれば充分なのですが私は」
「待て、ラルフ?お前は危険だぞ。なまじ仕事が早いから何もかも独断的に決めそうだ。よく話し合うことだ。彼女の意思を尊重するんだぞ?」
「そういうものでしょうか」
「そういうものだ」
並んで横にラルフ様が座った。
立たせておくことなんて出来ないから、仕方がない。
並んで座るなんて初めてのことで視線に困るけれど、仕方ない。
カップだけ見ていようと思った。それにしても、ラルフ様の足が長くて、視界に入ってしまう。私は足が浮くくらいなのに、とても窮屈そう。
飲み終わってしまったカップをもて余していたらラルフ様が給仕を呼んで下げてくれた。
「フローラ嬢、落ちつきましたか」
頷く。本当は近くにラルフ様がいるだけで心臓がもたない。
「どうか、あなたにお願いがあります。
私との婚姻を考えて欲しい」
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「なぜですか?」
「あなたと人生を一緒に送りたいと思ったからです」
「私に?結婚、わたしに……」
だって。
仕事のためって。
「私、役に立ちませんが……?」
するとラルフ様は笑った。
「役に立つかどうかではなく、あなたが良いんです。それに、あなたが居てくれると私は助かる。」
「ラルフ様はお仕事が忙しいんですよね?」
「そうですね、忙しい時期が多いです。そういう夫が嫌だと仰るなら努力しますが」
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はっ!
わかりました!
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それなら少し納得できます。
ラルフ様にとっての好条件とはそういうことでしょうか。
その相手に私を選んでくださると言うことは少なくとも信頼しているという表れでしょう。
それは、期待に応えたい。
「私でよろしいのならば」
そう答えてしまいました。
「本当に!?ありがとうフローラ嬢。すぐに正式に伺うよ。」
もしかしたら、本当にラルフ様に好きな方が出来たときに妾にされたり離縁したりする可能性もあるかもしれません。
それでも、ラルフ様ならもしそうなった時も誠実に対応してくださるような気がしました。
それまでラルフ様がお仕事に集中できるようにお仕えしたいと思いました。
滅多にない笑顔のラルフ様は見ているだけでも幸せな気持ちになりました。
それでも、恋人期間のない政略でもない婚約というものが不安定なものだと私はまだ理解していませんでした。
翌日、王太子の執務室で
上機嫌のラルフは仕事の速度も上がり、周りを圧倒していた。
「その様子ではうまくいったようだな」
「はい。彼女も了承してくれました。あとは最小の労力で最速で結婚できれば……」
「いやいやいや、女性にとって結婚は一生の晴れ舞台だと聞く。労力という言い方は良くないと思うぞ?」
「しかしきっと彼女は派手なことを好まないと思うので、さっさと同じ家に暮らせれば充分なのですが私は」
「待て、ラルフ?お前は危険だぞ。なまじ仕事が早いから何もかも独断的に決めそうだ。よく話し合うことだ。彼女の意思を尊重するんだぞ?」
「そういうものでしょうか」
「そういうものだ」
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