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5. 世の中の皆さんはこんなことを
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ラルフ様が当家に婚約を正式に申し込まれたという噂が広まったようです。
先日の夜会でも並んで座っていたところを見られているし、ラルフ様が女性と親しく笑顔で話していることが珍しかったのでしょう。
恋の噂が広まる前に婚約の情報が上書きしていったそうです。
夜会での多くの男性は社交辞令だったとしても色々な令嬢を誉めますしダンスもされます。
語り合う姿も目立ちません。
普段のラルフ様の堅物ぶりを少々恨みたいほど、注目されてしまったのです。
家に届いたたくさんの招待状が物語っています。
お茶会、夜会、サロン
親しい方からだけでなく今まで壁の花の私に目もくれない方や笑っていた方からも届いています。
親しい方は「急に婚約の噂を聞いたけれど、本当に?環境が変わって忙しいだろうけど、体に気をつけてね。また落ち着いたらお話を聞かせてくださいね。あと、嫉妬に気をつけて」
というような心配する内容が殆どでした。
そうでもない付き合いの方は、形式的な招待状なのですが好奇心が透けて見えるようでした。
「うう、面倒くさい。ケイティ、これはお返事しないといけないのよね」
「お嬢様、仕方ありません。通過儀礼です。女性には女性の社交がありますからね。侯爵夫人になってからも必要なことです」
長年使えてくれて姉のようなケイティは、ただの侍女以上の存在。
実際に高度な教育を受けているのでフローラの話し相手としても認められている。
お洒落に興味がなく、たいていの令嬢のする花嫁修業にも熱の入らないフローラを両親は心配していたが、ケイティが取りなしてくれたこともある。
「お嬢様は無駄が嫌いとおっしゃいますがケチではありません。必要のない経費や労力が苦手なのです。目に見えない部分を見えるようにすれば真面目に熱心に取り組まれています。家を取り仕切る能力は嫁がれても必要なので、お嬢様はどこへ行かれてもナメられません。無能なくせに奥様を新参者と侮る使用人はどこにでも居ますもの。
お嬢様ならにっこり笑って人員削減されるでしょうね」
両親は、むしろケイティの影響で娘がそうなったんじゃないか?と思った。
「あー、こんな人間関係無駄ですわ。どうせラルフ様のことを聞かれるだけでしょう。
もったいないわ」
フローラは机に突っ伏している。
「確かに果てしない作業ですわね。」
返事を書いている途中に更に同じ家から催促が届く。
「また文面を書き直さないと、もったいない」
「もったいない、とは紙ですか?時間ですか」
紅茶を置きながらケイティが聞く。
「どちらも。それに、」
添えてくれたチョコレートを口に放り込む。
頭痛を和らげるマッサージをケイティがしてくれる。
「ラルフ様のことを興味本位の他の人に話すなんて、もったいないじゃないの」
おや。
ケイティは顔に出さず微笑んだ。
ご両親は心配されていたけれど、お嬢様はちゃんと恋をされているらしい。
「親しい方と、そうでもない方を別の日程でお茶会に招待するというのは如何でしょうか。」
「あ、それは良いわね。
しかも長居できないようなちょっとした催しを開くといいわ」
お嬢様の表情が明るくなりました。
「令嬢のお話は長くてつまらないから、立食形式にしましょう。それから音楽会がいいわ。演奏中は喋っていたら失礼だもの。あとは孤児院のバザーも、それから」
「ストップ。大がかりなものにしては本末転倒です」
「そうね。ラルフ様にも相談してみるけれど令嬢方に、一度で説明する機会があるのは良いことだわ」
「お嬢様、説明とは違いますね。ラルフ様との馴れ初めなど聞かれますよ。」
「馴れ初めなんて私もわからないのに無理でしょう。どうにか納得してくださればいいのよ」
「甘いですね、お嬢様。
ここは、問答無用で愛されてる感を見せびらかすだけで充分ですよ。何を聞かれても微笑んで頬を染めときゃ良いんです。おまかせください」
ケイティ、悪い顔でにっこりと笑っています。
先日の夜会でも並んで座っていたところを見られているし、ラルフ様が女性と親しく笑顔で話していることが珍しかったのでしょう。
恋の噂が広まる前に婚約の情報が上書きしていったそうです。
夜会での多くの男性は社交辞令だったとしても色々な令嬢を誉めますしダンスもされます。
語り合う姿も目立ちません。
普段のラルフ様の堅物ぶりを少々恨みたいほど、注目されてしまったのです。
家に届いたたくさんの招待状が物語っています。
お茶会、夜会、サロン
親しい方からだけでなく今まで壁の花の私に目もくれない方や笑っていた方からも届いています。
親しい方は「急に婚約の噂を聞いたけれど、本当に?環境が変わって忙しいだろうけど、体に気をつけてね。また落ち着いたらお話を聞かせてくださいね。あと、嫉妬に気をつけて」
というような心配する内容が殆どでした。
そうでもない付き合いの方は、形式的な招待状なのですが好奇心が透けて見えるようでした。
「うう、面倒くさい。ケイティ、これはお返事しないといけないのよね」
「お嬢様、仕方ありません。通過儀礼です。女性には女性の社交がありますからね。侯爵夫人になってからも必要なことです」
長年使えてくれて姉のようなケイティは、ただの侍女以上の存在。
実際に高度な教育を受けているのでフローラの話し相手としても認められている。
お洒落に興味がなく、たいていの令嬢のする花嫁修業にも熱の入らないフローラを両親は心配していたが、ケイティが取りなしてくれたこともある。
「お嬢様は無駄が嫌いとおっしゃいますがケチではありません。必要のない経費や労力が苦手なのです。目に見えない部分を見えるようにすれば真面目に熱心に取り組まれています。家を取り仕切る能力は嫁がれても必要なので、お嬢様はどこへ行かれてもナメられません。無能なくせに奥様を新参者と侮る使用人はどこにでも居ますもの。
お嬢様ならにっこり笑って人員削減されるでしょうね」
両親は、むしろケイティの影響で娘がそうなったんじゃないか?と思った。
「あー、こんな人間関係無駄ですわ。どうせラルフ様のことを聞かれるだけでしょう。
もったいないわ」
フローラは机に突っ伏している。
「確かに果てしない作業ですわね。」
返事を書いている途中に更に同じ家から催促が届く。
「また文面を書き直さないと、もったいない」
「もったいない、とは紙ですか?時間ですか」
紅茶を置きながらケイティが聞く。
「どちらも。それに、」
添えてくれたチョコレートを口に放り込む。
頭痛を和らげるマッサージをケイティがしてくれる。
「ラルフ様のことを興味本位の他の人に話すなんて、もったいないじゃないの」
おや。
ケイティは顔に出さず微笑んだ。
ご両親は心配されていたけれど、お嬢様はちゃんと恋をされているらしい。
「親しい方と、そうでもない方を別の日程でお茶会に招待するというのは如何でしょうか。」
「あ、それは良いわね。
しかも長居できないようなちょっとした催しを開くといいわ」
お嬢様の表情が明るくなりました。
「令嬢のお話は長くてつまらないから、立食形式にしましょう。それから音楽会がいいわ。演奏中は喋っていたら失礼だもの。あとは孤児院のバザーも、それから」
「ストップ。大がかりなものにしては本末転倒です」
「そうね。ラルフ様にも相談してみるけれど令嬢方に、一度で説明する機会があるのは良いことだわ」
「お嬢様、説明とは違いますね。ラルフ様との馴れ初めなど聞かれますよ。」
「馴れ初めなんて私もわからないのに無理でしょう。どうにか納得してくださればいいのよ」
「甘いですね、お嬢様。
ここは、問答無用で愛されてる感を見せびらかすだけで充分ですよ。何を聞かれても微笑んで頬を染めときゃ良いんです。おまかせください」
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