どうせ政略結婚だから、と言われた話

アルテは少しずつ扉を開く

アルテはブルーノが離れたときにじっくりと見た。
近すぎてまともに見ることができなかったから。

幼い頃は無邪気に追いかけていたけれど、成長して並んだときにブルーノの顔がアルテよりずいぶんと高くなってしまってから、直視できない。

それに、夜会などのエスコートのときにはブルーノはアルテのことを褒めなかったから。
周囲がブルーノを褒めるたびに、ますます釣り合っていないと思えてアルテは下を向くしかなかった。
ブルーノはそんなアルテを弱虫だと思っていたし、嫌われていると思っていた。自分の横で身を固くするアルテをどうすればいいかわからなかった。入場と帰るときだけエスコートして、途中は離れているほうがアルテも気楽だろうと思っていた。

「ブルーノ、今日は良いんですか？」

「何が」

「いつものように親しい方達のところへ行かないので」

「ああ、あいつらか」

ブルーノのほうを見てニヤニヤしている数人は、悪友だ。
『よかったな』
と言われた。アルテと婚約できないと落ち込んでいた姿を見られていたから。

二人が並んでいるところを見て、頑張れとサインを送ってくれた。
「アルテから離れたくない。他の男達からダンスに何度も誘われたと聞いた。」

「そんなには誘われていません。お兄様のお友達とか、ほんの少しだけです」

「それでも、俺が嫌なんだ」


「本当は誰にも見せたくないくらい」

「俺だけのアルテならいいのに」

真っ赤になって頬を押さえるアルテを見つめて、次々に独占欲をぶつけてくる。

「悪い。怖いか？こんなに執着してるって知らなかっただろう」

「だって、いつもは全然」

「アルテが兄貴を好きなら……もし二人が婚約したら全部なかったことにしないといけないから言えなかった。」