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第14話 真実
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立ち上がり、深く一礼をしてからこの場を立ち去ろうとしたら、不意に手首をロラン様に掴まれた。
「……先程、あなたは何と言ったか」
「……慰謝料は支払いますと」
「違う、その前だ」
「その前ですか?」
寸秒考えた後、あることに思い至った。
「婚約はきはしたくないけれど、婚約は取り消した方が良い、と言う言葉でしょうか」
「ああ、そうだ。その言葉だ」
「それが何か……」
「意味が通らないのだ。何しろ、婚約を破棄することと解消することは、ほぼ同意語だからだ」
婚約はきが……、婚約を解消するという意味だった……、ということかしら……。
「そ、そうだったのですね……」
思わず膝をその場についてしまった。酷い脱力感も襲ってくる。
あの時私はロラン様に、婚約を解消するって言われたのね……。今更ながら心が切り裂かれるように酷く痛んだ。
「大丈夫か?」
「……はい」
ロラン様は私の手を取って、優しい手つきで立たせてくれた。
「実は私は、ずっと婚約はきの意味が分からずにいました」
「それは……、言葉通りに受け取って良いのだろうか」
「はい。……ロラン様に婚約はきを告げられた時から、何故かその言葉の意味に至ることができずにいたのです」
ロラン様は目を見開いて、しばらく口元に手を当てて何かを思案してから小さく頷いた。
「……推測に過ぎないが、香水の効果が中和、もしくは軽減されて意識操作がうまく作用しなくなり、代わりに『はき』の意味が分からないようになっていたのかもしれないな」
「そんなことがあるのでしょうか。それに何故そのようなことが……」
起こったのかと言おうとした瞬間、ロラン様の瞳と視線が合った。そうだわ……もしかしたら……。
「サシェの香りが、中和してくれたのかもしれないですね」
「サシェか。確かに考えられなくもないな」
胸に熱いものが、込み上げてくるように感じた。
「ロラン様に贈っていただいたサシェが、きっと私にとって聞きたくない言葉から私を守ってくれていたのですね……」
目の奥がじんわりと熱くなってきた。
「私が贈ったサシェを、常に身につけてくれていたのだな」
その穏やかな笑顔を見たら胸が締め付けられて、何故か涙が止まらなくなる。
「私は、あなたと婚約を破棄したくはない。あの時、香水の効果があったとはいえ、あのような言葉をあなたに言ってしまったことをずっと後悔していた。改めて謝罪をしたい」
言葉の意味がわかった今となっては、確かに心が引き裂かれるような感覚もある。
けれど、ロラン様の真摯な想いが傷ついた心を癒してくれるように感じた。
「私と結婚して欲しい」
「私で……よろしいのですか……」
「ああ、あなたが良いんだ。自分の意思を強く持ち、貫くことのできるあなたが」
ロラン様は、そっと私の涙をその指で拭ってくれた。
そして私たちはしばらく、お互いを穏やかな表情で見つめ合っていたのだった。
──ロラン様に贈っていただいた、サシェの香りに包まれながら。
「……先程、あなたは何と言ったか」
「……慰謝料は支払いますと」
「違う、その前だ」
「その前ですか?」
寸秒考えた後、あることに思い至った。
「婚約はきはしたくないけれど、婚約は取り消した方が良い、と言う言葉でしょうか」
「ああ、そうだ。その言葉だ」
「それが何か……」
「意味が通らないのだ。何しろ、婚約を破棄することと解消することは、ほぼ同意語だからだ」
婚約はきが……、婚約を解消するという意味だった……、ということかしら……。
「そ、そうだったのですね……」
思わず膝をその場についてしまった。酷い脱力感も襲ってくる。
あの時私はロラン様に、婚約を解消するって言われたのね……。今更ながら心が切り裂かれるように酷く痛んだ。
「大丈夫か?」
「……はい」
ロラン様は私の手を取って、優しい手つきで立たせてくれた。
「実は私は、ずっと婚約はきの意味が分からずにいました」
「それは……、言葉通りに受け取って良いのだろうか」
「はい。……ロラン様に婚約はきを告げられた時から、何故かその言葉の意味に至ることができずにいたのです」
ロラン様は目を見開いて、しばらく口元に手を当てて何かを思案してから小さく頷いた。
「……推測に過ぎないが、香水の効果が中和、もしくは軽減されて意識操作がうまく作用しなくなり、代わりに『はき』の意味が分からないようになっていたのかもしれないな」
「そんなことがあるのでしょうか。それに何故そのようなことが……」
起こったのかと言おうとした瞬間、ロラン様の瞳と視線が合った。そうだわ……もしかしたら……。
「サシェの香りが、中和してくれたのかもしれないですね」
「サシェか。確かに考えられなくもないな」
胸に熱いものが、込み上げてくるように感じた。
「ロラン様に贈っていただいたサシェが、きっと私にとって聞きたくない言葉から私を守ってくれていたのですね……」
目の奥がじんわりと熱くなってきた。
「私が贈ったサシェを、常に身につけてくれていたのだな」
その穏やかな笑顔を見たら胸が締め付けられて、何故か涙が止まらなくなる。
「私は、あなたと婚約を破棄したくはない。あの時、香水の効果があったとはいえ、あのような言葉をあなたに言ってしまったことをずっと後悔していた。改めて謝罪をしたい」
言葉の意味がわかった今となっては、確かに心が引き裂かれるような感覚もある。
けれど、ロラン様の真摯な想いが傷ついた心を癒してくれるように感じた。
「私と結婚して欲しい」
「私で……よろしいのですか……」
「ああ、あなたが良いんだ。自分の意思を強く持ち、貫くことのできるあなたが」
ロラン様は、そっと私の涙をその指で拭ってくれた。
そして私たちはしばらく、お互いを穏やかな表情で見つめ合っていたのだった。
──ロラン様に贈っていただいた、サシェの香りに包まれながら。
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