婚約破棄されそうですが…婚約破棄という言葉の意味が分かりません…

清川和泉

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第13話 香水の効果

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「ロラン様……」
「あなたに事前に事情を伝えることができず、申し訳なかった」
「……いいえ、こちらこそ妹がとんだご迷惑をおかけして……」

 ロラン様は首を小さく横に振ると、私に自身の上着をそっと羽織らせてくれた。
 それから二人でガゼボ内のベンチに腰掛けて、ロラン様がこれまでの経緯を話し始める。

 
 まず、メアリーの香水の香りが染み込んだ私の筆跡と酷似していた例の手紙は、メアリーが私の筆跡と真似るようにと代筆業者に頼んだ物らしい。
 その手紙はメアリーが我が家の使用人に金銭を渡して侯爵家に届けさせたらしいのだ。
 また、便箋には「ロラン様と私にだけ効く香水」が振りかけてあったとのことだった。

「それは、どのような効果の香水だったのでしょうか」 

 訊いてはみたものの、おおよそ予測はついていた。恐らくは……。

「香水には記憶を塗り替える効果があったそうだ。あなたには『自分がロバーツ卿と逢瀬を重ねている』ように錯覚させ、私には『あなたが私を裏切っている』と思い込ませる効果があったそうだ」
「やはり、そうだったのですね……」

 けれど何故メアリーは、そのようなことをしてしまったのだろう。そんなことをしても、メアリーにとって良いことなど無いのに……。

「恐らくあなたの妹君は、あなたが私と婚約を破棄した後、アンリ家は面目を保つために自分自身が代わりに私に嫁ぐことを提案すると踏んでいたのだろう。そして実際にそのような前例は過去に何件かあるようだ」
「確かに……」

 それはできれば、あまり推測したくないことだった。メアリーからは良くは思われていないと思っていたけれど、ここまでとは……。

「香水を使用したこと自体は違法では無いのだが、最近王都では同様の事例が多数起きていて、近々取り締まることが本決まりになりそうなのだ。現在妹君にはレシピノートの購入経路や香水の製造方法等を法官に伝えるように、協力を願い出ているところだ」
「そうだったのですね……」
「ああ。悪いようにはならないように最大限配慮はさせてもらったつもりだ。妹君も時間はかかると思うが、取り調べが終わり次第解放されるだろう」

 それを聞いて安心したけれど、色々と配慮をしていただいたことに対して、申し訳がないという思いが込み上げてくる。
 そして沸々と本音が込み上げてきた。

「私は、婚約を『はき」したくはありません。……けれど、この婚約自体は取り消した方が良いと思うのです……」
「……それは、どういうことだ」

 ロラン様は、虚を突かれたような表情をしている。

「何しろ、メアリーが大変ご迷惑をおかけしましたから。身内の私はロラン様の妻には相応しくないと思うのです。勿論、慰謝料やその他の経費等は全てお支払い致します。お金だけの問題ではないとは思いますが……」

 婚約者の実家のいざこざでこの婚約をなかったことにすること自体が、ロラン様の経歴に傷をつけてしまうかもしれない。
 それならば一刻も早く手続きをして、せめて傷の浅いうちに婚約を解消しなければ。
 
 ただ、お金は私自身は持ち合わせていないので、申し訳ないけれどお父様に借りて、一生かけて返していこう。
 そうなると手に職をつけなければならないわ。女性の私でも、なんとか雇ってもらえるところがあれば良いのだけれど……。
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