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閑話6 トラヴィスねーさんと攻略者達
トラヴィスねーさんと攻略者達:パーシヴァル
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(何これ・・・たまんない。リアル攻略者達、最高じゃない!。)
OLだった前世を思い出してから10年!やっとアンファエルン学園に攻略者が揃った。
ゲームイラストだった攻略者達は、リアルでも素晴らしい・・・、いや予想以上に麗しかった。
(さて、攻略者達よ。私をもっと楽しませて頂戴よ。)
卒業までの残りの3年間を考えて、思わずにんまり笑みが浮かんだ。
本当はこんな笑い方は、自分にはふさわしくない。何故なら自分はこの世界ではアンファエルン皇国の皇太子なのだから。
『アンファエルンの光の聖女』
前世でとことんやり込んだ乙女ゲームだ。
プレイヤーのほとんどが2部までしか進めない所、私は幻かと言われた3部に進む事ができた。よし!もう少しで完全コンプリートだ!と意気込んでいた頃、私はあえなく30才を目前にして前世の生涯を終えた・・・。
(はかない一生だったわよね・・・。佳人薄命、瑠璃脆しとはよく言ったものだわ・・・。)
だけど嘆いてなんて居られなかった。私が転生したのはゲームの中でも最大人気を誇る攻略者。
顔良し、頭良し、家柄良し、性格良し、完全無欠と言われた皇太子トラヴィスなのだから。
私は物心つかない頃から、皇太子としての教育を施され、常に周りの手本となるべく育てられた。
(本来なら子供がそんな事されたら、グレるか性格歪わよ!?。でも私ってば、本当にチートなのよねぇ。)
私は全ての教育を完璧にこなし、先生方の称賛を浴びた。しかも前世を思い出してからは、その知識をふんだんに活かし、この世界の人間じゃ考えつかないような政策、アイデアなどで周りを驚嘆させてやった。
もはやこの世界の私は、ゲームのトラヴィス以上の存在になったと自負している。だけど・・・完璧皇太子トラヴィスをやってるだけじゃつまらないのだ。
(だって、大好きだった乙女ゲームの世界に転生できたんだもんね。うふふ・・・)
せっかくだから、とことん楽しみたい!
自分と弟のパーシヴァルという二人の攻略者を見ただけで分かった。子供だろうと、リアルの攻略者は最高にイケてる!。これはもう、期待しか無いではないか!?
5才男子にして、私は今後現れるイケメン達と出会う事を楽しみに、そして前世で叶えられなかった夢もついでに達成してやろうと決心したのだ。
―――攻略者達との出会いーーー
パーシヴァル・レイヴンズクロフト
私が5才の時、弟のパーシヴァルは3歳。金褐色の明るい髪と私と同じトパーズ色の瞳。少し垂れ気味の目は、笑うともっと優しく目じりが下がる。整っているが人好きのする顔なのだ。
(かっ、かっわいいい!。さすが私の弟!)
この年のパーシヴァルは、まだ兄トラヴィスに対してはそれほど劣等感は持っていなかったと思う。会えば、「あにうえ」とたどたどしい口調で笑顔を向けてくれていた。全く、可愛い事この上ない。
だけど、自分とパーシヴァルが会う機会は少なかった。
理由は私とパーシヴァルとは母親が違うからだ。
皇妃の息子である自分に対し、彼は父が身分の低い侍女に産ませた子供だ。しかもその女性はパーシヴァルを産んで直ぐに無くなってしまった。だから彼は乳母や使用人に育てられていたのだが、皇妃にに遠慮して彼を私の前にあまり連れて来ない様にしていたのだった。
だが、私・・・トラヴィスの母である皇妃は、誇り高くかつ道義を重んじる人だ。皇帝には思う所があったようだが、パーシヴァルに対しては疎むことなく、公正に接していたと思う。
おかげでパーシヴァルは皇太子程では無いものの、きちんとした教育を受ける事が出来たのだ。しかし2歳年上のトラヴィスとはさすがに同じ事は出来ない。だから別々に授業を受ける事になっていた。これでは余計に彼と会う事が出来ない。
5才の私はこの時思った。
(このままだと良くないわ・・・)
恐らく、出来の良すぎる兄せいで、これから彼は周りに色々と言われることになる。
―トラヴィス様なら直ぐ出来ましたよ。
―トラヴィス様なら、もっと出来ましたよ。
―トラヴィス様なら、こんな風にしたでしょうに。
トラヴィス様なら・・・、トラヴィス様なら・・・、トラヴィス様なら・・・。
何せトラヴィスには欠点が無い。でも、比べられる方はたまったもんじゃ無いだろう。
何気なく発せられた言葉が、パーシヴァルの心に癒えることのない傷を残した為、ゲームでの彼は劣等感の裏返しでとんでもなくチャラ男になってしまう。しかも、兄のトラヴィスとの関係は軋轢とまでは言わないものの、ギクシャクとした溝ができてしまうのだ。
これは実に・・・勿体ない!
それに、こんな可愛い弟とは、もっともっと仲良くしたいではないか!。
(トラヴィスって完璧なんだけどさ、自分が皇太子として立つ事が中心にあったから、弟の心のケアまでは気が回らなかったんだろうね。)
第一、子供にそこまで求めるのは無理ってものだろう。
5才までの記憶をたどってみても、弟に対する親愛の情は持っているし、大切な存在ではあったのだ。だけど、いかんせん、接触が少なすぎる!。
(完璧皇子とはいえ5才の子供。まわりの言う事を聞くしかなかったのよね。ふふ・・・だけど、私は違うのよねぇ。)
だから早速行動に出た。
「パーシヴァルに教える時、私の話を出すのはやめて欲しい。いや・・・一切禁止して貰いたい。」
私は全ての教育係に徹底して、これを伝えた。
剣術の先生、魔術の先生、政治学の先生、ダンスの先生、礼儀作法の先生、全ての者に徹底して言明した。
そして、パーシヴァルが彼なりに達成した事があれば、とことんそれを褒めてやって欲しいと指示した。
皇太子とは言え5才の子供にこう言われた大人たちは、皆一様に驚いた。しかしながら彼らは概ね私の願い通りに行動してくれた。
(これで、私に対して過剰な劣等感を持つことは防げるはずよ。)
そしてさらに、私は父と母に、パーシヴァルと一緒に過ごす時間が欲しいと頼んだのだ。
OLだった前世を思い出してから10年!やっとアンファエルン学園に攻略者が揃った。
ゲームイラストだった攻略者達は、リアルでも素晴らしい・・・、いや予想以上に麗しかった。
(さて、攻略者達よ。私をもっと楽しませて頂戴よ。)
卒業までの残りの3年間を考えて、思わずにんまり笑みが浮かんだ。
本当はこんな笑い方は、自分にはふさわしくない。何故なら自分はこの世界ではアンファエルン皇国の皇太子なのだから。
『アンファエルンの光の聖女』
前世でとことんやり込んだ乙女ゲームだ。
プレイヤーのほとんどが2部までしか進めない所、私は幻かと言われた3部に進む事ができた。よし!もう少しで完全コンプリートだ!と意気込んでいた頃、私はあえなく30才を目前にして前世の生涯を終えた・・・。
(はかない一生だったわよね・・・。佳人薄命、瑠璃脆しとはよく言ったものだわ・・・。)
だけど嘆いてなんて居られなかった。私が転生したのはゲームの中でも最大人気を誇る攻略者。
顔良し、頭良し、家柄良し、性格良し、完全無欠と言われた皇太子トラヴィスなのだから。
私は物心つかない頃から、皇太子としての教育を施され、常に周りの手本となるべく育てられた。
(本来なら子供がそんな事されたら、グレるか性格歪わよ!?。でも私ってば、本当にチートなのよねぇ。)
私は全ての教育を完璧にこなし、先生方の称賛を浴びた。しかも前世を思い出してからは、その知識をふんだんに活かし、この世界の人間じゃ考えつかないような政策、アイデアなどで周りを驚嘆させてやった。
もはやこの世界の私は、ゲームのトラヴィス以上の存在になったと自負している。だけど・・・完璧皇太子トラヴィスをやってるだけじゃつまらないのだ。
(だって、大好きだった乙女ゲームの世界に転生できたんだもんね。うふふ・・・)
せっかくだから、とことん楽しみたい!
自分と弟のパーシヴァルという二人の攻略者を見ただけで分かった。子供だろうと、リアルの攻略者は最高にイケてる!。これはもう、期待しか無いではないか!?
5才男子にして、私は今後現れるイケメン達と出会う事を楽しみに、そして前世で叶えられなかった夢もついでに達成してやろうと決心したのだ。
―――攻略者達との出会いーーー
パーシヴァル・レイヴンズクロフト
私が5才の時、弟のパーシヴァルは3歳。金褐色の明るい髪と私と同じトパーズ色の瞳。少し垂れ気味の目は、笑うともっと優しく目じりが下がる。整っているが人好きのする顔なのだ。
(かっ、かっわいいい!。さすが私の弟!)
この年のパーシヴァルは、まだ兄トラヴィスに対してはそれほど劣等感は持っていなかったと思う。会えば、「あにうえ」とたどたどしい口調で笑顔を向けてくれていた。全く、可愛い事この上ない。
だけど、自分とパーシヴァルが会う機会は少なかった。
理由は私とパーシヴァルとは母親が違うからだ。
皇妃の息子である自分に対し、彼は父が身分の低い侍女に産ませた子供だ。しかもその女性はパーシヴァルを産んで直ぐに無くなってしまった。だから彼は乳母や使用人に育てられていたのだが、皇妃にに遠慮して彼を私の前にあまり連れて来ない様にしていたのだった。
だが、私・・・トラヴィスの母である皇妃は、誇り高くかつ道義を重んじる人だ。皇帝には思う所があったようだが、パーシヴァルに対しては疎むことなく、公正に接していたと思う。
おかげでパーシヴァルは皇太子程では無いものの、きちんとした教育を受ける事が出来たのだ。しかし2歳年上のトラヴィスとはさすがに同じ事は出来ない。だから別々に授業を受ける事になっていた。これでは余計に彼と会う事が出来ない。
5才の私はこの時思った。
(このままだと良くないわ・・・)
恐らく、出来の良すぎる兄せいで、これから彼は周りに色々と言われることになる。
―トラヴィス様なら直ぐ出来ましたよ。
―トラヴィス様なら、もっと出来ましたよ。
―トラヴィス様なら、こんな風にしたでしょうに。
トラヴィス様なら・・・、トラヴィス様なら・・・、トラヴィス様なら・・・。
何せトラヴィスには欠点が無い。でも、比べられる方はたまったもんじゃ無いだろう。
何気なく発せられた言葉が、パーシヴァルの心に癒えることのない傷を残した為、ゲームでの彼は劣等感の裏返しでとんでもなくチャラ男になってしまう。しかも、兄のトラヴィスとの関係は軋轢とまでは言わないものの、ギクシャクとした溝ができてしまうのだ。
これは実に・・・勿体ない!
それに、こんな可愛い弟とは、もっともっと仲良くしたいではないか!。
(トラヴィスって完璧なんだけどさ、自分が皇太子として立つ事が中心にあったから、弟の心のケアまでは気が回らなかったんだろうね。)
第一、子供にそこまで求めるのは無理ってものだろう。
5才までの記憶をたどってみても、弟に対する親愛の情は持っているし、大切な存在ではあったのだ。だけど、いかんせん、接触が少なすぎる!。
(完璧皇子とはいえ5才の子供。まわりの言う事を聞くしかなかったのよね。ふふ・・・だけど、私は違うのよねぇ。)
だから早速行動に出た。
「パーシヴァルに教える時、私の話を出すのはやめて欲しい。いや・・・一切禁止して貰いたい。」
私は全ての教育係に徹底して、これを伝えた。
剣術の先生、魔術の先生、政治学の先生、ダンスの先生、礼儀作法の先生、全ての者に徹底して言明した。
そして、パーシヴァルが彼なりに達成した事があれば、とことんそれを褒めてやって欲しいと指示した。
皇太子とは言え5才の子供にこう言われた大人たちは、皆一様に驚いた。しかしながら彼らは概ね私の願い通りに行動してくれた。
(これで、私に対して過剰な劣等感を持つことは防げるはずよ。)
そしてさらに、私は父と母に、パーシヴァルと一緒に過ごす時間が欲しいと頼んだのだ。
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