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最終章 悪役令嬢は・・・
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トラヴィスの顔色が優れない。それは洞窟のあるコールリッジ領から、夜を徹して帰って来たからだけではないだろう。
「隣国のセルナク国は、マリオット先生や他の外交官の解放の条件として、私とアリアナが直接セルナクに来るように言ってきた」
「え!?」
「前と同じだ。エメラインを落とし入れた事に対する謝罪を要求している」
トラヴィスは深いため息をついた。
「人質を無視する訳にはいかないからな・・・。私が行って何とかしてくる。父・・・皇帝にもそう報告した」
この国の皇帝も、ここ最近のセルナクの動向に頭を痛めているらしい。
「で、でもセルナクは私にも来るように言ってるんですよね!?殿下だけじゃ、人質を解放してくれないんじゃないですか?」
「それでもアリアナは行かない方が良い。もし君が行けば、エメラインは必ず君を無事で返さない。隣国には私一人で行く」
「それは駄目です!」
私は思わず立ち上がった。
「セルナクの最終的な狙いは皇国を支配する事です!だから今までも闇の組織を使って皇太子である殿下を狙って来たんです。殿下が行くのが一番危険なんですよ!」
ゲームのストーリーの中にも、皇太子暗殺のイベントは何度も出てきたのだ。選択肢によっては、実際に暗殺されるパターンだってあった。トラヴィスがいくら強いと言っても不死身では無いのだ。
「それに、セルナク行きの船の船長が精神魔術の支配下にあった事を考えると、セルナク国にも精神魔術で操られている人も大勢いるんじゃないかと私は思うのです」
私は少し緊張しながら不安な面持ちでリリーを見た。だけどリリーは真っすぐな目で私に頷いた。それだけで彼女の思いが伝わってくる。
(ありがとう、リリー!)
私はリリーの気持ちに後押しされて、トラヴィスだけでなく、ここに居る全員に向かって宣言する様に言った。
「私とリリーが力を合わせれば解術が出来ます。私達も殿下と一緒にセルナクに行きます!」
「アリアナ!」
引き止める様に、ディーンが腕を引っ張った。
「危険過ぎる!エメライン王女に殺されかけたのを忘れたのか!?」
「しっかり覚えてますよ。滅茶苦茶怖かったですから。・・・でもこのままでは戦争を止められないです!・・・トラヴィス殿下!殿下なら覚えてますよね?。前の世界の・・・「アンファエルンの光の聖女」のゲームで戦争になった時の結末を」
トラヴィスの顔に一瞬だけねーさんの影がよぎった。そして苦虫を噛み締めた様な顔をする。
隣国との戦争はゲームの中でも一番のバッドエンドなのを知っているからだ。
「セルナクとの戦争は長引きます。皇国のいろんな場所が戦場になるんです。学園の・・・先生や生徒達も、最終的に戦争に駆り出されます。魔力の強いディーンやクリフもミリア達だって・・・」
この世界に来て知り合った人達、そして大事な友人達が戦禍に巻き込まれていく。
「そんなの私は嫌です!」
皇太子のトラヴィスや皇子であるパーシヴァルだって只では済まない。アリアナの両親やクラークだってどうなるか分からないのだ。
(だから絶対に止めなくちゃいけない)
「セルナクが皇国と戦争をしたがるのも、おかしな話なんですよ。普通に見れば戦力は皇国が上なんです。セルナクだって痛い目に遭う事が分かっているはずなのに・・・」
トラヴィスが私をじっと見つめる。
「セルナクの王や、中枢貴族も精神魔術に操られていると言うのか?」
さすが皇太子トラヴィスだ。本気の時のオーラが半端ない。強い視線に怯みそうになるのを私はぐっと耐える。
「可能性は高いと思います!その場合、リリーと私で解術できれば戦争を避ける事が出来るかもしれません。それに・・・もしそうでなくても殿下は絶対に私を連れて行くべきです」
「何故だ?」
トラヴィスが訝し気に聞いた。
「私と殿下が力を合わせれば、いざとなれば隣国の城ぐらい吹っ飛ばせます」
トラヴィスが目を見開き、執務室にいる全員の動揺が伝わってきた。
(そうなんだよ。私の力は攻撃する時にだって使う事ができる。トラヴィスやクリフやディーンぐらいの能力者となら、下手したら隣国ぐらい落とせちゃうかもしれない)
「本当は・・・そんな事はしたく無いですけど・・・」
私はそう言いながら俯いた。
(私の力は人を傷つける事にも使える)
それはとても嫌な気分だ・・・。
「皇国を守る為には致し方無いだろうな」
冷静なトラヴィスの声にドキッとして顔を上げた。だけど彼の目は思いのほか優しかった。そして私の頭にポンと手を乗せると、
「分かった、一緒に行こう。戦争を回避しに。リリーも危険だが、私と一緒に来てくれるか?」
「もちろんです!」
リリーは力強く頷いた。
「隣国のセルナク国は、マリオット先生や他の外交官の解放の条件として、私とアリアナが直接セルナクに来るように言ってきた」
「え!?」
「前と同じだ。エメラインを落とし入れた事に対する謝罪を要求している」
トラヴィスは深いため息をついた。
「人質を無視する訳にはいかないからな・・・。私が行って何とかしてくる。父・・・皇帝にもそう報告した」
この国の皇帝も、ここ最近のセルナクの動向に頭を痛めているらしい。
「で、でもセルナクは私にも来るように言ってるんですよね!?殿下だけじゃ、人質を解放してくれないんじゃないですか?」
「それでもアリアナは行かない方が良い。もし君が行けば、エメラインは必ず君を無事で返さない。隣国には私一人で行く」
「それは駄目です!」
私は思わず立ち上がった。
「セルナクの最終的な狙いは皇国を支配する事です!だから今までも闇の組織を使って皇太子である殿下を狙って来たんです。殿下が行くのが一番危険なんですよ!」
ゲームのストーリーの中にも、皇太子暗殺のイベントは何度も出てきたのだ。選択肢によっては、実際に暗殺されるパターンだってあった。トラヴィスがいくら強いと言っても不死身では無いのだ。
「それに、セルナク行きの船の船長が精神魔術の支配下にあった事を考えると、セルナク国にも精神魔術で操られている人も大勢いるんじゃないかと私は思うのです」
私は少し緊張しながら不安な面持ちでリリーを見た。だけどリリーは真っすぐな目で私に頷いた。それだけで彼女の思いが伝わってくる。
(ありがとう、リリー!)
私はリリーの気持ちに後押しされて、トラヴィスだけでなく、ここに居る全員に向かって宣言する様に言った。
「私とリリーが力を合わせれば解術が出来ます。私達も殿下と一緒にセルナクに行きます!」
「アリアナ!」
引き止める様に、ディーンが腕を引っ張った。
「危険過ぎる!エメライン王女に殺されかけたのを忘れたのか!?」
「しっかり覚えてますよ。滅茶苦茶怖かったですから。・・・でもこのままでは戦争を止められないです!・・・トラヴィス殿下!殿下なら覚えてますよね?。前の世界の・・・「アンファエルンの光の聖女」のゲームで戦争になった時の結末を」
トラヴィスの顔に一瞬だけねーさんの影がよぎった。そして苦虫を噛み締めた様な顔をする。
隣国との戦争はゲームの中でも一番のバッドエンドなのを知っているからだ。
「セルナクとの戦争は長引きます。皇国のいろんな場所が戦場になるんです。学園の・・・先生や生徒達も、最終的に戦争に駆り出されます。魔力の強いディーンやクリフもミリア達だって・・・」
この世界に来て知り合った人達、そして大事な友人達が戦禍に巻き込まれていく。
「そんなの私は嫌です!」
皇太子のトラヴィスや皇子であるパーシヴァルだって只では済まない。アリアナの両親やクラークだってどうなるか分からないのだ。
(だから絶対に止めなくちゃいけない)
「セルナクが皇国と戦争をしたがるのも、おかしな話なんですよ。普通に見れば戦力は皇国が上なんです。セルナクだって痛い目に遭う事が分かっているはずなのに・・・」
トラヴィスが私をじっと見つめる。
「セルナクの王や、中枢貴族も精神魔術に操られていると言うのか?」
さすが皇太子トラヴィスだ。本気の時のオーラが半端ない。強い視線に怯みそうになるのを私はぐっと耐える。
「可能性は高いと思います!その場合、リリーと私で解術できれば戦争を避ける事が出来るかもしれません。それに・・・もしそうでなくても殿下は絶対に私を連れて行くべきです」
「何故だ?」
トラヴィスが訝し気に聞いた。
「私と殿下が力を合わせれば、いざとなれば隣国の城ぐらい吹っ飛ばせます」
トラヴィスが目を見開き、執務室にいる全員の動揺が伝わってきた。
(そうなんだよ。私の力は攻撃する時にだって使う事ができる。トラヴィスやクリフやディーンぐらいの能力者となら、下手したら隣国ぐらい落とせちゃうかもしれない)
「本当は・・・そんな事はしたく無いですけど・・・」
私はそう言いながら俯いた。
(私の力は人を傷つける事にも使える)
それはとても嫌な気分だ・・・。
「皇国を守る為には致し方無いだろうな」
冷静なトラヴィスの声にドキッとして顔を上げた。だけど彼の目は思いのほか優しかった。そして私の頭にポンと手を乗せると、
「分かった、一緒に行こう。戦争を回避しに。リリーも危険だが、私と一緒に来てくれるか?」
「もちろんです!」
リリーは力強く頷いた。
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