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第二章 〜水晶使いの成長〜
第15話 遠隔試験
しおりを挟むさてさて、近接試験は終わった。
次は遠隔試験か。魔法の試験だよな。
えーと、多分、あの人に聞けばいいのかな。
「こんにちは、遠隔試験を受けたいんですけど、どこに並べばいいですか?」
「ではまず、番号と紙を見せてください」
近接試験の時と同じやり取りをして、右端の列に並ぶように言われた。礼を言って、並びに行く。
やり取り、会話の内容……丸暗記させられてんのかな。
けど、先に近接試験を受けていただけあって、人が多いな。
オレたちの馬車が、少し早めに着いたからな。他の受験者が続々とやって来る。
でも、人が多い割に、近接試験から来る人が全然いない
試験内容は見た感じ、的当てだな。
「はい、遠隔試験の受験者ですね。番号と紙を見せてください」
また同じセリフだ。
「168番です。紙はこちらです」
軽く目を通して、紙は返ってきた。
「近接試験も受けてるんですね。どうでした?」
と、軽く話を振ってきた。多分、オレが最後だろうからかな。
「結構よかったんじゃないですか? 一度も負けなかったですし」
「……え!? 負けなかった? 普通、負けると思うんだけど……。いや、でも引き分けなら……」
ブツブツと言っていて、何を言ってるのか聞き取れなかった。
今は聴覚強化は発動させてないからな。聴覚強化だけじゃなくて、何も発動させてないけど。
聴覚強化を発動させたら、うるさかったからな。
話は終わったようだし、大人しく並んでおこう。
「あ、これ試験内容ね。順番が来るまでまだ少し時間はあるけど、目を通してね」
「わかりました」
えーと、試験内容か。
一つ目が、的当て。好きな魔法で、30メートル先の的に当てればいいわけか。
二つ目は、近接試験と同じ、実技、戦闘だな。これも、身体強化は使用可能。身体強化を発動させているか、いないかでは、魔法の威力に大きな差が出るからな。
この2つだな。ただ、前の人たちを見るに、戦闘時間は少し長めだ。近接試験が一つ1分だったから、多分3分ぐらいだな。
的当ても1発限りではなく、数発放っている。見た感じ、30秒の間、的に魔法を放ち続けている。
おそらく、当たった数/放った数で点数がつけられるのだろう。
とは言え、放った数も見られてはいるだろう。当たった数/放った数だと、必ず当たる1発を放てば、1/1で即合格だ。
数分待つと、1人、すごい奴がいた。火を扱う女だった。
隣の列だったが、放つ魔法は全て的に当たり、試験官に圧勝していたのが見えた。
魔法詠唱がないところをみると、おそらくはオレと同じ属性特化型。火に特化しているのだろう。
そういや、確かフォーレンさんが、
〈──属性特化型はな、生まれつきなんだよ。だから、どうすることもできない。だが、才能があれば、並の魔術師よりも強くなる。三賢者も、属性特化型だったらしいぞ〉
って言ってたな。
あいつは、才能があったんだろうな。
後ろ姿だが、覚えておこう。同じ特化型同士、何かあるかもな。
目の前の人が終わったら、次はオレだな。
すると、
「──もし、攻撃魔法をまだ習得していないのであれば、こちらの魔法具を選んで、使ってください。左から順に、『水球』、『火球』、『石弾』、『風弾』が込められています」
見ると、確かに短杖が4本並べられていた。目の前のやつも、使っている。
だが、オレには水晶がある。
「いえ、属性特化型なので、大丈夫です。ありがとうございます」
と、礼を述べておいた。あ、終わったようだ。
う~わ~。きれいにオレだけ残ってるじゃん。
「では、次の方どうぞ」
「はい!」
「では、受験番号と紙を見せてください」
そして、一連のやりとりを終え、的当てとなった。
的当てとなると、やはり『晶弾』が最適だろう。
生成にかかる時間が少ないから連発できる。
しかも、コースは直線だから、まっすぐ飛ぶ。
できれば中心を狙いたいから、多数を一度に生成するのはやめて、機関銃のように連続発動しようか。
「制限時間は30秒。では、スタート!」
右手を前に構え、機関銃のように『晶弾』を発射していく。
1秒間に4、5発は撃ててるんじゃないか? 加えて、全部ド真ん中だ。
まあ、形状を維持するのに魔力はいるけど、『晶弾』は、何かに当たると消えるからな。
的に当たれば消える。『晶弾』は小さいため、維持魔力は自然回復量より少ないし。
「やめ! ……何発中、何発ですか?」
「うむ。153発、全弾命中。しかも、全弾真ん中に命中」
あれ、秒間5発超えてら。
やめって言われたら、まだ当たってないものもカウントされないからな。……実質30秒ないんじゃないか?
いや、最初の1発が的に当たってから30秒か?
「過去最高点じゃないんですか?」
「いや、全弾真ん中命中は過去にも何人か存在しとる。数年に1人はおるしの。さて、次は儂と勝負じゃ。どこからでもかかってきなさい」
次はこの爺さんとか。ん? 他のやつらは違った気がする。
「ちょ、ちょっと待ってください。勝負は俺がするはずです」
「お主だと不安での」
「んな!?」
かわいそうに……。
どうでもいいけど、さっさと勝負させてくれよ。
「私がやります」
「ふむ……。お主なら、いいか」
「わかりました……。お願いします」
受け付けの人に決まったようだ。
おそらく、あの冒険者の反応から最低で金以上、または近衛騎士。
勝てばいいわけじゃないから別にいいか。
「お願いします!」
「加減はなしよ?」
「ええ、承知してます」
軽くやりとりを交わし、互いに30メートル離れる(互いに、とは言っても、相手が的の元まで下がるだけ。オレは動かない)。
「開始!」
と同時に身体強化を発動!
魔力感知も発動!
ちなみに、身体強化が1だとすると、魔力感知は2、他の五感強化は1だからな。
魔力感知を発動させれば、どこから魔法攻撃が来るのかが見える。
これは使えない人もいるそうだ。感覚頼りだからな、身体強化は。
とりあえず、どう攻めるべきか……。
初手は、出の早い『晶弾』だな。
だが、目くらましになるわけでもない。ただ、相手の反応を見るだけなんだよな。
まあいい。避けるにしろ、迎撃するにしろ、時間のロスだ。
──その間を叩く!
よし! 『晶弾』を3発生成し、両肩、腹を狙う。コンマ数秒遅れて、接近する。
この力は、接近戦の方が向いているんだ。
「は! え!? 接近……?」
そう。
一瞬の油断が──
「終わり、ですね」
──命取り、だ。
至近距離から『晶弾』を連発する。
本来なら、『晶弾』の同時生成は4発まで可能。そう、「同時」なら。
タイミングをずらせば、4ヶ所以上から『晶弾』を放つことができる。
どこに生成するとか、決まってはいない。おまけに、至近距離だ。
俺の周りから発射された『晶弾』の雨に、全身を撃たれる!
殺傷能力を低くしてあるからな。
元のままだと、鎧を着けているとはいえ、頭なんかは着けてないため、死んでしまう。
「──ガッ……!!」
そのまま倒れてしまった。
「フーッ、やれやれ。──『回復』」
「やっぱり、あなたは回復術師でしたか」
「おや、気づかれていたのか」
役目を冒険者だと思っていた。
だが、サイズの合っていない鎧、しかも、時々動きずらそうにしていたからな。
「オ……ゴホン、私が戦った、この方は一体?」
「鉄級の冒険者だ。ちなみに、去年の卒業生だ」
「なんで、私と勝負を……? あんな芝居までして」
「いや、この列の担当は、もともと彼女だよ」
……え、そうなの? じゃあつまり……あれ、でもなんでだ?
「──え~と、その、私のせいですね。ハイ」
そう言って現れたのは、オレをこの列に案内してくれた係員の人だった。
「どういうことだね?」
「この子は、近接試験も受験してるんです。なので、魔法はこの列でいいだろう、と」
「魔力測定はしなかったのか?」
「はい」
つまり、近接試験も受けたならそんなに魔法は得意ではないだろう。より細かく測るために、卒業生にやらせてみよう、と。
「まあ、あそこまで圧倒的な勝利を掴みとられてはな。合格じゃ。近接試験でも合格しているのじゃろ? では、向こうに見える体育館へ行くがよい。最終試験、面接じゃ」
「──わかりました。ありがとうございました!」
大きく礼をして立ち去ろうとした。
その時、
「私が案内するわ。体育館は2つあるから、どちらに行けばいいかわからないでしょうし、おそらく、体育館の係員は撤収してるでしょうから」
「ええ、お願いします」
次で最後か。面接……。精神鑑定を含めているって聞いたな。
最後試験──面接、待ってろよ。その壁、2倍の高さで飛び越えてやるぜ!
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