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第二章 〜水晶使いの成長〜
第14話 近接試験
しおりを挟むガタガタ……ガタガタ……ガタン!
度々大きく揺れる木製の馬車。向かい合わせの席。
最後に乗ったオレ。
ざっと見、20人ほどの同い年の人。楽しそうに喋っている。
……オレ以外。
嗚呼、景色が綺麗だな。
乗り込んだ瞬間を今でも覚えている。と言うか、忘れられないだろう。
乗り込んだ瞬間、一斉にこっちを睨みつけるかのように見てきたのだから。
いや、事実、睨まれた。
その後、何事もなかったかのようにお喋りを再開していた。
確か、今年の倍率は、例年と変わらずの2倍だったか。
いや、正確には2.2倍。
昨年が2倍だから……昨年比1.1倍だ。どうせ、訓練で実力がついて、調子に乗って受けたんだろ。
その後、2つの村を通り、何人か回収し、昼前に学校に到着した。
ついでに、途中でむすびを3つ食べた。弁当を持ってきてる奴がいたが……、腹痛くなるぞ?
ま、オレの知ったことではない。
全員が敵。
ただ、それだけだ。
ようやく到着した。
オレたちは馬車を降りた。近くにいた、案内人と書かれた羽織を羽織った人が、
「え~、あちらのテントで受け付けをしていますので、あの列に並んでください」
と言って、案内してくれた。早速空いてるとこを発見した。
「こんにちは、受験生の方ですね。こちらに必要事項を記入して下さい」
「はい、わかりました」
受験者
名前 ライン・ルルクス
性別 男
戦闘タイプ (当てはまるもの全て)
✓前衛
✓後衛
✓中距離
志望配属先 (なければ書かなくてよい)
近衛騎士団
✓冒険者
うん、こんなものか。
「できました」
「はい、ありがとうございます。では、こちらがあなたの受験番号となります。現場の係員に、この2枚の紙を渡してください。それでは、ご武運を」
「ありがとうございます」
受験はその日が全て受験である。だったか?
その日の会場での行いは全て結果に影響するって、(前世の)先生が言ってたな。
えーと、次は……もう受験か。場所はグラウンドで、内容は近接戦闘の実技か。
受験番号は……168か。 お、もう何人かやってるな。
「こんにちは~。受験生の方ですね。受験番号、紙を見せてください」
と、いきなり背後から声をかけられた。動揺してはいけない、係員だ。
フーッフーッ。
よし。ここは1つ、爽やかに!
「こんにちは。受験番号168番です。紙はこちらです」
「はい、確かに。でしたら、左から2番目の列にお並びください。あ、紙は、順番が回ってきたら、出してください」
「わかりました、ありがとうございます」
背後からいきなり声をかけられて、心臓バックンバックンだ。並ぼ並ぼ。
近距離、中距離の測定のようだな。
前には8人か。
試験官は確か、鉄級か銅級の冒険者だったか……それが1人と、戦いを観察している人が1人。
後ろにも何人か冒険者らしき人がいるな。
武器が大量に入った箱。
同じ武器でも、長さ、重さとかいろいろあるからな。
あ、終わったようだ。
数十分ほどして、ようやく順番が回ってきた。
「こんにちは。番号と紙を見せてください」
「はい。168番。どうぞ」
「はい、確かに。では、開始してください。武器はここにありますので」
「わかりました。お願いします!」
少し前に、試験の内容を記した紙が回ってきて、試験の内容は把握している。
素手、剣と、他に使える武器を2つ、計4つ の武器で戦う。
1つの武器につき、1分。
魔法の使用は禁止。
身体強化の使用は認める。
と言う、シンプルな内容だった。
内容から察するに、戦闘タイプの欄の近接にペケをつけた人がここに呼ばれているんだろう。
オレは両方につけたが……おそらく、片方につけた場合は、点数2倍とかになるんだろう、
まずは、素手だな。
互いに礼をし、始める。
素手とは言っても、ただ武器を持たずに戦う状態を指すだけで、足は使ったらだめとか、そんなのはない。
早速、身体強化を発動させる。相手が攻撃してくるのを待つ……。
──来た!
攻撃をすり抜け、相手の速度を利用し、腹にパンチ!
そして、回し蹴り!
前世じゃ、こんな動きできなかったから、気持ちがいいな。
腹に2連撃! いや、2発目は脇腹か。
「で……では、剣を持ってください」
「え、あの人……」
「素手での戦いはあの人、というように、担当があるので、大丈夫ですよ」
めちゃめちゃ目立っちゃったよ……。
あの人、失神してんだもん。
次は剣か。流石に刃はない。
お、これちょうどいいな。長さは一般的な長さだが、少し重め。
特徴をメモしておこう。
「それでは、開始!」
「お願いします!」
「あ、あぁ」
互いに礼をして、スタート。
今度は、オレからだ。
納刀状態のまま走り、居合斬りを放つ。
──ガキィィン!
防がれたか。居合は自身あったんだがな。そこから斬り結んだ。互いに無傷。
次だ! ……と思ったところで、
「──そこまで! では、次。得意な武器を1つ、選んでください」
「ありがとうございました」
礼をして、次の武器を選ぶ。
選んだのは、ナイフ。ただ、オレは二刀流のため、二本一組の物を選んだ。
また別の人だ。柔らかそうな目だな、と思った。
「──開始!」
「お願いします!」
「ああ。よろしく頼むよ」
今回もオレから攻撃を仕掛ける。すぐに近づき、斬り結んだ。
後ろに飛び、距離を取る。頬と腕に薄い切り傷が、幾つかあった。
相手は無傷か。刃がなくても、上手くかすったら、薄く切れるからな。
身体強化を発動させているな。
発動してなかったのは、一人目だけだ。
「今度はこちらから行くぞ!」
「クッ!」
なんとか防御できた。突きは防御しにくいんだよな。
回転し、左手のナイフで相手のナイフに攻撃を加えつつ、右手のナイフを逆手に持ち替え、突きを放つ。
──決まった……!
だが、避けられた。
「──そこまで! 最後の武器を選んでください」
「ありがとうございました!」
「こちらこそ」
最後か。やっぱり、これでしょ! ──棍。
2メートルほどの長さがちょうどよかったから、これにした。
2メートルだから、オレより50センチは長いことになるな。
「それでは、開始!」
「「お願いします!」」
相手は少し短めの棍だった。
これも、オレから攻める。
だが、相手も同時に走り出した。
振り下ろしを仕掛けるつもりなのか、大上段に構えている。
であれば、やることは一つ。
「ゼリャアア!」
「ホッ!」
振り下ろされた棍に対し、横薙ぎを入れる。そしてそのまま回転しながら、頭目掛けて振るう。
だが、防がれてしまった。
後退しようとした相手を追いかけ、勝負を続ける。
薙ぎや突きを放ち合い、防ぎ合う。
少し繰り返していると、上手く攻撃が入り、相手を吹き飛ばすことに成功した。
そのまま追いつき、相手が棍を構える前に突きを3発放つ。
「グホッ!」
怯んだすきに、大きく振りかぶって渾身の突きを放つ。どうやら、気絶したようだ。
「そ、そこまで! これにて近接試験は終了です」
「ありがとうございました!」
試験官の人は、紙を受け取ってどこかへ行こうとするオレを呼び止めた。
「あ、あと君、魔法も使えるんだって?」
「はい」
「だったら、向こうに行って。一度グラウンドを出て、左に進んで行けばわかるから」
「ありがとうございます! では」
オレに対し、何人もの視線が浴びせられた。
後ろで回復魔法を唱える声が聞こえる。あの試験官、回復術士だったのか。
よし! よし!! 一度も負けなかった!
剣とナイフは、あのまま戦っていれば負けただろう。
……ってか、一人目はなんだったんだ。身体強化も発動させずに……。
でも、後の3人はちゃんとしてたな。武器にも魔力を通していた。
次は魔法か。一番得意だから、大丈夫だろ。
近接試験で自信がついた!
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