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第二章 〜水晶使いの成長〜

第21話  新クラス

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「はい、30分経ったので、席に座ってください。連絡事項を伝えたら、今日はもう終わりですので」

 ターバと別れ、席に戻った。

 チラッと見えたが、このクラス、ぼっちがいねぇ。これから生まれる可能性もあるけど。
 みんな、3、4人ほどで固まってた。
 男子で1つだけ6人組があったから、それが中心になるんだろうな。
 どこの世界も、クラスは縦社会か。

「はい、まずは1つ目。皆さん、何人か聞いたことあるんじゃないでしょうかね。バイトについてです」

 あ~。あいつらが言ってたな。オレはやりたいけど。

「1年生の皆さんは、バイトは来週からできます。今、バイトをしたいと思っている人は、挙手してください」

 はーい。あれ、意外と少ない? あ、ターバも挙手してる。

「はい。今手を挙げた人たちは、来週からできます。仕事先はこちらで決めるので、決まり次第伝えていく流れになります。で、今週の日曜、明後日ですね。少し手伝ってほしいことがあるんですよ。このクラスの人だけでね」

 手伝ってほしいこと……? なんだろ?

「このクラスはですね、入試の結果で、優秀な順に、上位40人によって構成されています。そこで、手伝ってほしいことは、狩りです」

 狩りか。村で何度かやったし、手伝ってもいいだろ。
 ただ、「手伝う」ということは、ボランティアか。ま、どうせ暇だし、いいか。

「数人いれば問題ないので、やってくれる人は、挙手してください」

 はいよ。……。オレを見て、ターバが手を挙げた。
 そんなにオレが好きなのか? オレは異性愛者だぞ? 冗談は置いといて……。

 他には3人か。スゥ・フォナイは手を挙げたいようだが、挙げない。
 まぁ、火の魔法は、狩りには向いてないしな。近接もできないそうだし。
 いい加減、フルネームで言うのもあれだな。いや、でも、話してないし……。

「──5人ですね。では、今の5人は、日曜日の朝10時に、山側の門──北門前に集合してください。昼ごはんは持ってこなくて大丈夫です」

 あれ……? 
 昼ごはんは、寮が弁当を出してくれる。で、山に入るのなら、弁当は取りに行かないといけない……。
 いや、10時なら貰えるのか……? 
 いや、寮は土日なら、食堂は開いてる。じゃあ……狩った魔獣を食べるのかな? ま、何かしらは腹に入れるだろう。

「それと、今から紙を回すので、質問に答えててください」

 ペンは、これを使えばいいのか。全員分、机に置いてある。
 えーと、なになに? 得意な武器についてのアンケート? 
 使える武器を得意順に1~5の数字を振っていけばいいのか。

 棍が1、素手が2、ナイフが3、剣が4、弓が5かな。実際、大した違いはないと思うけど。

「はい、連絡は以上です。来週の月曜日の日程を説明して、解散します」

 月曜日から授業か? 
 いや、入学式がある……のか?

「月曜日は9時過ぎから入学式です。まあ、並んで入場して、話を聞くだけなんですけどね。で、新入生代表挨拶は、ラインくんにお願いします」

 ……。聞き間違いかな? 今、ラインくんにお願いしますって聞こえた気が……?

「ラインくん? いいですか?」

 ……おい、ライン。返事しろよ。無視するとか、初日から感じ悪いぞぉ?
  ……はぁ……。しゃあない。

「いいですよ」

 あぁ~~~。めんどくせぇ~~。他のやつらがオレ見てなんか囁きあってるし。

「……ってことは、一位通過者があいつ?」
「そうじゃないのか?」
「いやでも、面接で……」
「そうか、言葉が上手いだけの可能性も……」
「いや、あれは一位通過者の仕事だろ?」

 全部聞こえてんだよ! 常時聴覚強化発動させてるから! 
 聴覚強化、視覚強化はもはや常時発動型バッシブだな。

「まあ、そんな考えなくても、それっぽいこと言っておけば大丈夫ですから」

 オレの沈黙をそう、解釈したらしい。

「……へい、わかりましたよ」

 ったく、なんでオレなんだか。一位通過者か……。
 まあ、どっちの試験でも好成績だったと思う。

「はい、連絡は以上です。さっき、バイトを希望する、と手を挙げた人は前に来てください。以上です。紙を提出してからお帰りください」

 とりあえず、バイトを希望する人は先生に名前を告げ、帰っていった。
 日曜に手伝いをする人は後ろに残っている。オレも名前を言って、後ろにいるやつらの元へ向かった。

 男2人、女3人。この3人は群れてたやつだな。おかげで話しづらい。
 ターバが助けを求める目で見てきた。

「えー、みなさん、ありがとうございますね。あまり難しい内容でもないですからね。ただ、何匹か魔獣を狩るだけですから。一応、山に異常がないかの確認も兼ねてますけど」

 そういや、最近、人に害を為す魔物が減ってるんだっけ?

「最近、魔物が減ってるんですよ。それも、人に害を為す魔物が」

 この場合、『人』とは鬼やエルフなども含まれる。人間種という意味だ。

 やけに真面目な顔だった。こんな顔もするんだなぁ。

「それがなんで悪いんですか? いいことなんじゃないですか?」

 女1の質問に、女2が答える。

「原因がはっきりしている状態での変化なら、ね。でも、急に減っている。そうですよね?」
「そうです。さて、少しこの5人で交友を深めていてください。そしたら、帰っていいですよ」

 どうするか……。

「名前、覚えてる?」

 女1が、そう、問いかけてきた。

 女1、ヌー・サガラターナ。女2、クォーサ・ヘブン。この2人は同郷らしい。この領の端っこの村の出身らしい。どの方向にある端っこか知らないけど。
 で、女3、ヤマル・コラヤン。緑の髪に、空色の瞳。なんと、鬼だ。種族が鬼。決して、顔が怖いとか怒っているとかではない。

「ヌー・サガラターナ、クォーサ・ヘブン、ヤマル・コラヤン、ターバ・カイシ」

 フッ。不可知の書を持つ我の辞書に、忘れるという字はないわ!

「驚いた……。なんで覚えてるの?」
「いや、クラス全員の名前は覚えたぞ? 少しばかり自信があってな」
「じゃあ、改めて自己紹介せんか? 俺は一応、念の為、しといたほうがいいと思うケド?」

 ターバ、お前……名前忘れたんか? いや、そりゃ覚えてないか。





 で、一通り自己紹介が終わった。
 近接はオレ、ターバ、ヤマルの3人。
 あとの2人は、遠距離型──魔法型だ。

 う~ん。やっぱりこの世界は、みんな下の名前で呼び合うらしい。
 個人的に、初対面で名前からはさすがに抵抗があるからやらないけど。

 ターバも、女3人も、下の名前で呼び合っている。
 ちなみに、鬼のヤマル。たしかに、よく見ると角があった。

「鬼の角は、出し入れできるの。ただ、身体強化を発動させると、勝手に出てくるんだけどね。ま、正確には、出し入れと言うより、伸び縮みするの」

 そりゃそうだろうよ。出し入れする隙間ないだろ。

 さて、自己紹介も終わったし、

「じゃあ、もう帰るか?」

 と、問えば、

「帰るか」
「そうだね」

 と返ってきた。

「そういや、明日は何か予定ある? 私の部屋で、クォーサ、ヤマルでゲームをするんだけど」
「いや、女子の部屋に上がるのはまだちょっと……」
「オレは友達と領都に遊びに行く」
「ラインはともかく、ターバ、大丈夫。襲うつもりなんて、ないから。まだ」

 と、クォーサが言った。まだ、が気になる……。はっきり、ターバはそこそこイケてると思う。話しやすいし。

「そう? じゃあ、行ってもいいか? 俺はゲーム無敗の男だからな!」
「どうぞどうぞ」
「別に、何人か女子の部屋に来たり、男子の部屋に行ったりしてるから大丈夫よ。それに、私も無敗」

 あ、そうなんだ。たった1日しか過ごしてないのに、お早いことで。 

 無敗と無敗が勝負か……。日曜日に結果を聞いてみようか。

 ヤマルがボソッと、

「私、勝ったことないんだけどなぁ」

 と言っていたのを、オレは聞き逃さなかった。
 誰も聴覚強化発動させてないのかな。いや、そりゃ発動させないか。

 あ……。買い物するにしても、食料品どうしよ……。
 宅配システムあるかな。

 なければ、また日を改めて行くか。別に、料理をする必要はないわけだし。
 ただ、少し作れたらいいな~ってぐらいだし。
 お菓子作りとかやってみたいけどさ。

 とりあえず、明日領都に行ったりときに見てみるか。とりあえずは服だ!


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