戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

文字の大きさ
33 / 168
第二章 〜水晶使いの成長〜

第32話  クラス内戦闘➅

しおりを挟む

 ターバは向こうで、オレはここで各々準備をしている。
 準備と言っても、軽くストレッチをするだけ。
 それ以上のことはやるつもりも、やる必要もない。

 オレはターバをどうやって倒すか、考えていた。

 まず、ターバ相手に、水晶を使うかどうか、について。
 これについては、基本は・・・使わない方針でいこうと思う。
 できれば、対等な条件のもとで勝利を……と思うのは、どういうことなんだろうな。戦士の心と言うやつか?
 1つ、ターバの意表をつく手がある。隙が生まれるかはわからんが。
 
 刀は、収めておこう。
 ターバは、鞘は外に投げ置いておくスタイルだからな。
 オレが刀を納刀しているとなれば、当然の如く居合斬りを警戒するだろう。

 ……やっぱり、出しておこうか。鞘は腰につけておくけど。





「10分経過しましたので、ラインくん、ターバくんは来てください!」

 ここでバックにド派手な音楽が流れ、紙テープが空中を舞い、観客からの口笛と声援の中、オレの紹介文を読まれていればなぁ……。

 もちろん、そんなことはない。総合格闘技の決勝戦じゃないんだから。
 ん? 総合格闘技だっけ? こんな演出するの。
 ……まあ、いいや。



 オレたちは無言で握手を交わす。
 声に出す必要はない。互いに、互いをどうやって足元にひれ伏せさせるかしか考えていない。

 周りにはクラスメイトが全員いる。
 ここまで瞬殺を決めてきた二人の戦いだもんな。どれくらいの時間をかけて勝者が決まるのか、気になるよな。
 だからと言って、賭けをするものではありませんよ?

 さすがに、瞬殺は無理そうだ。当たり前か。

 ターバ……恐ろしい才能の持ち主。実は現役冒険者ですって言われた方がしっくりくる。

 一方オレには、水晶というアドバンテージがある。プラスの要素だ。いや、掛け算だな。

 それなしで、ターバに勝つ。
 ハンデを背負うわけではない。同じ条件になるんだ。
 水晶を使ったら、オレの勝ちは確定する。だって、武闘より水晶のが得意だから。

 簡易的な防具を身に着け、対立する。
 刀は抜いている。鞘は腰に提げている。

 ターバも剣を抜き、鞘は外に放り投げた。
 ターバは攻めの姿勢。
 そしてオレも──攻めの姿勢。

 ターバの薄赤色の瞳が、まるで血に飢えた猛獣のように見える。硬そうな、剛毛の白髪と相まって、その姿はホワイトライオンを彷彿させる。

 だが、恐怖は感じない。 
 感じるのは、ただ一つ。

 ──戦闘欲だけだ。

「……開始!」

 身体強化を発動し、走り出す。
 
 獅子と獅子(ターバが獅子で、オレが獅子でないわけがないだろ?)の戦いが、始まる。

 そして、中心より僅かにこちら側で、衝突する。互いの武器と武器がぶつかり、甲高い金属音が鳴り響く。

 ぶつかったのは刀と片手剣。
 ターバが右手に持った剣は後ろに引き絞られている。追撃か。

 ここまでは予想通り。

 ターバが右手の剣を振り下ろすのと同時に、鍔迫り合いになっている点を軸にし、回り込む。
 その勢いを利用し、左足でターバの膝裏を蹴ろうとしたが、失敗した。

 当たったのはターバのふくらはぎ。
 踵で蹴ったから、そこそこダメージは入ったか。

 振り向くと、ちょうどターバも振り向くところだった。ここからどうするか……。

「「フーーッ」」

 互いに大きく息を吐き出す。

 黒髪と白髪。
 薄赤色の目と蒼の目。

 奇しくも……補色。



 どう攻め落とす?

 どう仕掛ける?

 どう攻めてくる?

 どう防ぐ?



 持久戦になれば、オレに分がある。
 体力が優れているわけではない。
 武器の重さだ。少し重めの刀1本と、普通の片手剣2本。
 どちらが重いかと問われれば、答えは片手剣2本の方だ。

 だが、2本ということは、息もつかせぬ連撃ができる。
 片方で防御、片方で攻撃と、攻防を同時に行うことができる。

 ──だからなんだ。

 棍でだって、刀でだってできることだ。

 暫く睨み合いが続いたが、先に動くことにした。

 大上段からの斬り落とし! ──に見せかけての……突き!!

 斬り落としの際に力をあまり乗せないことで、突きに移ることができる。

 だが、突きはギリギリのところで避けられた。  
 だが、さすがに反応しきれなかったようで、刀の先がターバの右脇腹に掠った。

 だが、ターバは左手に持った剣を振り上げている。
 さすがに首には当たらないだろうが、攻撃を受けるのは少しまずい。

 両足に力を入れ、前に向かっている力を無理やりこちら側に引き戻し、刀を斬り上げる。
 上手く今の一撃は弾けた。

 あ……。

 と思ったら、ターバの右手の剣がオレの腹目掛けて突き出されるところだった。

 なるほど。

 簡単に弾けたのは、あえて力を抜いていたためか。さっきのオレのを見て、学習したのか?

「まさか、同じことをしてくるとはな」
「いろいろ学んで身につけないと、強くなれないだろ?」
「それもそうだな」

 互いに少し距離をとる。振り出しに戻ったな。
 6を連発すればいいというわけではなさそうだな。1~6、全ての出目を上手く出す必要があるな。

 ……そう、まだ手はある。だが、出すにはまだ早い。
もう少しだ。

 ターバが動き出した。
 ただ、直線に突っ込んでは来ずに、少し右回りだ。なんの意味がある? 
 刀の間合いに入ったところで、右手の剣を突き出してくる。

 囮の可能性……あり得る。が、囮に見せかけているだけの可能性もある。なら……。

 突きを半身で躱し、右腕を束縛する。
 脇の下で剣を挟んでいるため、攻撃はできまい。

 予想通り、右手は囮だったようだ。
 左手を振りかぶっていた。だが、そんなんでやられるオレではない。

 ターバの利き腕は右。つまり、左は右より力が入りにくい!

 オレの肩目掛けて振られた剣を、横向きから思いっきり跳ね返す。剣の先を狙ったから、ターバの手に伝わる衝撃はかなり大きくなった。

 ……はずだった。
 これで剣を落としてくれたらよかったのだが、まだ手の中にある。ただ、さすがに少し痺れたらしい。
 これ以上の追撃はないようだ。

 さて……この右腕どうしよう? よし、離すか!
 拘束を緩め、後ろに跳んだ。予想通り、オレのいた場所を2筋の剣閃が走った。

 また、ふりだしにもどる、か。

 今度はお互いに動き出し、斬り結ぶ。
 ターバはずっと両方の剣を振り続け、オレは時に避け、時に跳ね返し、時に攻めるを繰り返した。



 まだ。

 まだ。

 まだ。

 まだ。

 ──来た!!

 ターバの剣が2本とも攻撃を止めた。

 もちろん、ターバも意図的だったわけではない。 
 そもそも右と左では、攻撃の回数、タイミングなどが合ってなかったのだ。

 あれだ。最小公倍数を求めるみたいな。
 2つが噛み合ったタイミングが、今だ。

 オレは、一番威力の高い大上段からの斬り落としを繰り出した。
 跳び上がったため、威力が少し高くなる。

 そうだよな。避けることはできない。
 なら、2本の剣で受け止めるしかないよな。

 ごくごく当たり前の判断と行動だ。ターバが頭の上で2本の剣を交差させた。 



 ──だが、オレは斬り下ろさなかった・・・・・・・・・
 
 投げ下ろしたのだ。

 ターバの懐に入り込み、鳩尾に1発、2発、3発。そして掌底で頸部に1発! 後ろから首を掴み、地面に叩きつける。

 その間に『晶鎖しょうさ』で刀を拾い上げる。



 半径20メートル以内で、自分が認識できる範囲なら、水晶を操作できるから、刀に巻きつけることができる。
 生成も半径30メートル以内だったかな。
 やってみりゃわかるけど、今じゃない。



 ちなみに、ちゃんと仕組みがある。
 まず、迎撃や防御をするには、相手の攻撃と反対の向きに力を向ける必要がある。
 だから、オレの斬り下ろしを防ぐ際、上向きに力を入れていた。

 だが、オレは剣を投げ下ろした。
 大上段からの一撃は、かなり重いものになる。だから、余計力を入れていて、引き戻すのが遅れた。

 そして、鳩尾を攻撃することで体内の空気を外に出し、行動を遅らせた。
 これが、オレの用意した策の1つだ。

 背中をオレに向けた状態で、オレに攻撃はできない。
 万が一を考え、両足でターバの両腕を踏む。そして、後頭部に刀を突きつける。

「終わりだな、ターバ」
「──そこまで! クラスの最強は、ライン・ルルクスに決まりました!!」

 おお~~、と大歓声だ。全員拍手してくれてる。ターバくぅんん、見てますかぁ? ん?

「おーい、ターバやい」

 返事がない。ただの屍のようだ。

 いや、まさかね。 呼吸確認! 呼吸あり!
つまり!──気絶。

 地面に叩きつけた時だろうなぁ。
 ターバの足を払ってから叩きつけたから、そこそこ痛かったのかな。
 気絶するほどかは知らないけど。

「ほら、ターバ。お前のことも褒め称えてるぞ」

 返事はないだろう。独り言のつもりで呟いたのだが……

「──聞こえてるよ」

 …………。

「おい、いつから起きてた」
「最初から、だ。一度も寝てないけど? 負けたのは少し悔しいけど、いいもん見れたわ」
「いいもんってなんだ?」
「感傷に浸るライン・ルルクス」
「ばっ……浸ってねぇ!」
「いやいや浸ってたって!」
「うるせぇ! それ以上言うなら、ほんとに意識を刈りとってやろうかぁ? その負けたときのままの格好じゃぁ、何もできねぇもんなぁ?」
「……悪かったって」

 自分の不利を悟ったか。フッ……。


「──あ、みなさん、明日からは授業が始まりますからね」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

処理中です...