戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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第二章 〜水晶使いの成長〜

第59話  卒業試験②

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 2本と1本の剣がぶつかり、1本の剣が宙に舞う。

「――っ!」
「隙ありですね!」

 舞った剣の所持者は、ミュイ・ライトリクス――副騎士団長。

「ぐっ!!」

 丸腰の副騎士団長に、容赦なくターバが攻撃を加える。
 副騎士団長は着用していた手甲ガントレットで防ぐが、攻撃の勢いは消せず、手が痺れているようだ。

 イヤらしいターバがその隙を見逃すわけもなく、副騎士団長の腹に蹴りを入れ、飛ばした。

「あ、これ……返します――ね!!」

 そう言って両手の剣を地面に突き刺し、近くに落ちていた、さきほど降って来た副騎士団長の剣を右手で持った。
 そして、「ね」の部分で思いっきり投げた。

「ぐぐ…………」

 迷うことなく副騎士団長の右肩を目掛けて飛んだ長剣ロングソードだったが、間一髪のところで、両手で止められてしまった。

 両の手のひらで止めたとはいえ、剣はかなりの速度だった。それをギリギリとはいえ、止めるあたり、さすがは副騎士団長と言うべきか……。

「ターバ…………強いな。想定以上だ」
「お褒めにあずかり光栄です」
「はっきり言って、隊長級だ」
『――いや、それは言い過ぎだ。もちろん、その辺の団員よりも強いが、隊長級ではない。…………現時点では、な』

 話に入ってくんのかい。
 魔法の効果で遠くにいるはずの2人の会話も鮮明に聞こえるし、鮮明に届けることができる。

 オレは聴覚強化で聞こえている。
 覚醒のおかげで、よりはっきりと音を拾えるようになったんだ。
 魔力探知の一歩手前の視力強化でも、よりはっきり見えるようになった。

 もちろん、勝負は終わっていない。
 試験とはいえ、内容は戦闘――決闘だ。
 どちらかが戦闘不能になる、もしくは敗北宣言をするまで行われる。

『ミュイ、お前でも危ない。確かに、お前であれば勝てるかもしれないが、それなりの犠牲を強いられる』

 この会話を聞いた限り、隊長ってのも結構強いんだな。

「副騎士団長様は、隊長の方々よりも強いのですよね?」
「隊長たちでも、全員に勝てるわけではない。特に、第三隊の隊長には勝てない。――まあいい。続きをしようか」
「ええ、構いません――」
「――『飛撃』」

 突きが、ターバ目掛けて飛ぶ。
 何も、斬撃に限った話じゃなかったのか。『飛撃』はオレも使える。
 魔力消費がバカみたいに少ないから重宝している。

「よ、がまだあったのに…………――『飛撃』!」

 ターバのは、クロスさせた『飛撃』。交点と副騎士団長の、点の『飛撃』がぶつかる。


 数学で出てきそうだ。2直線A、Bの交点を求めよってやつ。
 中1で習ったっけ? あの、連立方程式を使うやつ。

 こんなことはどうでもいい。今は2人の勝負の行方を見届けないとな。



 二つの『飛撃』は拮抗している。
 ターバのは2つ分だから、副騎士団長の技量が目に見える。
 そしてそれを悟り、副騎士団長の『飛撃』に対し、2つの『飛撃』で迎え撃ったターバ。

 巷では、【双剣士】って呼ばれている。
 他にも双剣を使っている人はいるのにな。オレには【水晶使い】だと。
 ちなみに、【貴公子】は覚醒し、現在も健在だ。マジ天才、オレは天災、yeah!
 何やってんだろうな。



 そして、2つの『飛撃』は霧散した。
 『飛撃』は魔力を消費するが、物理攻撃だ。一応、耐久度も存在する。

 そして、霧散した場所にはすでに2つの人影があった。ターバと副騎士団長である。

 だが、副騎士団長の方がコンマ数秒速い。
 副騎士団長の斬り下ろしを、双剣を左右から平行に薙ぐことで受け止める。

 ――1本と2本の剣がぶつかり、金属特有の甲高い音が鳴り響く。

 ……ノットイコールのようだ。イコールがターバ、打ち消し線が副騎士団長。

「素晴らしいな、ターバ。若くしてこれほどの実力とは」
「へえ……。基準がわからないので、なんとも言えませんね」
「誇っていい。史上最年少隊長就任も夢じゃない」

 史上最年少隊長就任?
 じゃあ、現在の記録は一体何歳なんだ?

 そんなオレの思いを代弁するかのように、ターバが尋ねてくれた。

「現在の最年少記録は何歳なんですか?」
「25歳だ。近衛騎士育成所を20で卒業し、そのわずか5年後だ。そして、その人物は――」
「――現騎士団長ですね。聞いたことがあります。昔の偉人とばかり思っていましたが、まさか現騎士団長だったとは……」

 両者ともにバックステップし、再びぶつかる。
 繰り返される剣戟。一進一退ではない。拮抗している。
 ……いや、わずかにターバが押されている。

 少しずつ、ターバの体に生傷が増えている。
 もちろん、副騎士団長の体にも。

 腕と足、胸に簡易的な防具を着用してはいるが、その他は服のみだ。
 腹や二の腕、肩に太もも。

 この戦い、一般人視点だと、何が起こっているのかわからないだろう。
 とにかく速い。

 特にターバ。
 2本の剣を攻撃に使うことで、手数を増やしている。
 防御にも使えるように、2本は同時に使っていない。

 まあ、それを捌いている副騎士団長も凄いんだが……。
 長剣ロングソードの長さを活かし、ほとんど手首の動きだけで捌いている。

「す……すごい……」
「目で追えているか、ヤマル、リーイン?」
「一応」
「な、なんとか……」

 2人はすでに魔力探知までは行かずとも、視力強化は獲得している。

目だけ覚醒させることで、なんとか目で追えているようだ。

「そういうラインは?」

 ヤマルに同じ質問を返されてしまった。

「余裕だ」
「「…………」」

 沈黙!!

 別にいいじゃないか。はっきり見えていても。
 ターバと副騎士団長――2人が斬り合っているように見えるかもしれないが、実は時々『飛撃』を打ち合っている。

「……時々2人が『飛撃』を打ち合っているのは?」
「あ、やっぱり? 2人の距離と剣が交わる位置がおかしいと思ったんだ」
「なんとなく、あれ? ってなったけど、そういうことだったの……」

 ヤマルはわかっていたが、リーインは感覚でなんとなく、か。
 ヤマルもけっこう優秀なんだな。





「おおぉぉぉぉおおおお!!!」
「はあぁぁぁぁああああ!!!」

 未だ拮抗している2人。
 副騎士団長――ミュイ・ライトリクスは焦っていた。
 ミュイは切り札を有しているが、後にラインが控えている。

 ミュイは、ターバよりもラインを警戒していた。その警戒心が、ターバ相手に切り札を切るかどうかの判断を鈍らせていた。

 そして今、ようやく決定した。

 ――切り札は切らない、と。
 
 しかし、そのような判断を決断したと同時に、左肩に大きい傷を負ってしまった。

「ぐぅっ!!」
「おお!!」

 ターバはそのまま剣を上に振り抜き、副騎士団長の肩を大きく抉った。

 だが、副騎士団長もそれなりに場数を踏んできた、一流の戦士だ。
 滅多なことで思考が鈍ることはない。

「ふぐっ……!」

 ターバの左脇腹に、剣が刺さっていた。
 だが、浅い。

「気づかれるとは思ってなかったぞ。直前で体を捻ったか」
「おかげで、あなたへの致命的な傷を負わせることはできませんでしたが、ね」
「フッ…………合格だ。いいだろう。…………私の負けだ」

 副騎士団長が敗北宣言!?
 いや、このままやれば勝てるでしょうよ。肩に傷を負ったとは言っても、利き手側ではないし、見た感じだと、そんなに傷は深くない。

「いいんですか?」
「構わない。それに、近い将来、本当にこう言うようになる」
「…………買い被り過ぎです……」
「もっと自信を持て。すでに隊長級に手をかけていると、私は思う」

 隊長級か……。オリハルコン級でも上位、か。
 ……ってことは、ターバはすでにオリハルコン級ってことか。すごいじゃん。

「では、回復しますね」
「ああ、頼む」
「副騎士団長様は、『全快フルポーション』でよろしいでしょうか?」
「ああ、頼む。だが、大丈夫か?」
「私のことでしたら、問題ありません」

 ちなみに、この回復術師も覚醒者らしい。『回復ヒール』なら見たことはあるが、『全快フルポーション』は初めてだ。
 覚醒した回復術師のみが扱える、最高位の回復魔法。

 回復魔法は大抵、対象の体力、もしくは魔力を消費する。
 もちろん、詠唱者も魔力は消費する。

 『回復ヒール』の魔法は治癒できる傷の度合いの範囲が広く、その傷の具合、重さ、大きさにより、対象者の消費する体力、魔力は変化する。

 だが『全快フルポーション』は、詠唱者が大量の魔力を消費するが、対象は何も消費しない。
 欠点としては、消費魔力量が極端に多いことと、必ず・・無傷の状態まで回復させてしまうこと。 

「では──『回復ヒール』、そして──『全快フルポーション』」

 『回復ヒール』でターバの傷が癒え、『全快フルポーション』で副騎士団長の傷が癒えた。

「では、少々、魔力の回復を行いますので、代わりの者を置いておきます。彼女も覚醒者ですので、ご安心ください。では、失礼いたします」
「ありがとう」
「ありがとうございました」

 回復術師が礼をし、出ていくと同時に別の女性が現れた。

「では、次を行おう」
「わかりました。では、リーインさん」
「はい!」  

 
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