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第二章 〜水晶使いの成長〜
第58話 卒業試験
しおりを挟む今日は卒業試験の日です。
3年間、1組の担任でしたが、3年間ずっと受け持った、優秀な人たちもいます。
今日の試験は、覚醒者の試験です。
ターバ・カイシくん。
1年生のときの最強決定祭の決勝で覚醒。双剣を上手く使い、反撃の隙を与えません。
流しも得意です。
ライン・ルルクスくん。
属性特化型で、近距離攻撃も得意という、異常ぶり。
ターバ君の一撃を受けた際に覚醒。その後は気絶したそうですが……。
ヤマル・コラヤンさん。
2年生の半ばに行った授業中に覚醒。あのときの感動は今でも思い出します。
リーイン・ケミスさん。
つい一月前に覚醒したため、少し出遅れているようですが、もう3年も鍛えられるそうなので、問題ないでしょう。
今期は、この4人。
覚醒がすべてではないのですが、1組の数人はやはり、少し落ち込んでいる様子です。
覚醒者の卒業試験は、他のみんなと同じテストに加え、戦闘試験があります。
相手は近衛騎士団の隊長の方が来てくださいます。
ですが今年は、副騎士団長ミュイ・ライトリクス様が来てくださりました。
ターバくんとラインくんのためだそうです。
戦闘訓練の内容は、ただ近衛騎士の方と戦うだけです。
負けたからといって不合格、お前冒険者ね、なんてことにはなりません。
あくまで、実力の確認です。
はっきり、ターバくんとラインくん相手だと、僕も勝てません。
一応、生徒たちには内緒にしてますが、僕も覚醒者なんですよ。
実力は……せいぜいミスリル級ですかね。
卒業後の選択は、3つ。
1つ。これは覚醒者のみに当てはまり、半強制。
行き先は近衛騎士団育成学校。ここで3年間訓練し、その後、適した隊に配属され、ようやく近衛騎士団員となる。
2つ。ほとんどの生徒はこれ。冒険者だ。
ほとんどの生徒は自領の組合に配属されるが、人数の関係上、他領や他国に配属される場合も少なくない。
人間がこういったこと──役割分担、分業──に
適しているからだ。
3つ。極稀だが、冒険者学校の教師となる。
近衛騎士団育成学校の教師には、ある程度の経験を積まねばなれない。
怪我や病気、その他もろもろの理由で引退した冒険者、近衛騎士の行き先になりやすい。
僕はこの3年間、出る幕がありませんでした。
1年生の最初のクラス内戦闘で、スゥさんの『火槍』は、ラインくんが防ぎましたし、他の訓練中の事故も、ラインくんの水晶の魔法や、ターバくんの剣の投擲術に助けられました。
……僕は、「良い先生」になれたのでしょうか。それだけが気がかりです。
おっと試験が終了したようです。
一つ、どうしても言いたい……ツッコみたいことがあります。
ラインくん、ターバくん。
なんで副騎士団長様に勝ってるんですか……? まだ冒険者学校3年生ですよね?
世界は、思っていたよりも広いようです……。
少し前。
オレたち覚醒者はグラウンドに集まっていた。
「これより、ターバ・カイシ、リーイン・ケミス、ヤマル・コラヤン、ライン・ルルクスの卒業試験を行う!」
いよいよ最後の卒業試験か!
魔物学、植物学、武魔術の試験は難なくクリア。
合格ラインはたったの20点。基礎問題だけで半分の50点はあった。
「今日来てくださったのは、なんと! 近衛騎士団副団長、ミュイ・ライトリクス様です!」
「やぁ、どうも。先に言っておくが、騎士団長もこの戦いを見ることになる」
そう言いながら副騎士団長が取り出したのは、薄紫色の立方体だった。
魔力を帯びていることから、魔法具であることがわかる。
「これは――」
『――失礼するよ、卒業生の諸君』
立方体の一面が、明るくなったと思ったら、男の声が聞こえた。
ま、どこから、誰が発したものなのか、予想はできているが。
『この立方体は映像と声を届ける魔法具だ。『通話』のさらに上位の魔法具だと認識してくれ。さて、紹介が遅れたな』
そう言うと、明るくなった面に高そうな衣服に身を包んだ20代半ばぐらいの男の人が映り込んだ。
『私は近衛騎士団団長、レイハル・ストロークだ』
やっぱりな。にしても、これが騎士団長か。若いな。
現騎士団長、レイハル・ストロークは昔から、神童と言われていたらしい。
現在も、その武勇伝は多い。
アンデッドの討伐、ドラゴンの討伐、単騎で覚醒者が数人存在する盗賊の討伐……などなど。
アンデッド、ドラゴンは指定危険魔物に分類される。
指定危険魔物とは、覚醒者でないと討伐が困難な魔物が分類されたものだ。テストに出た。
アンデッドは、主な例としては吸血鬼が挙げられる。
だがアンデッドとは、体力の底が知れない魔物のことを言う。
近年、姿を見せることは稀だ。大抵、近くにいる魔鉱級の冒険者に討伐される。
騎士団長が討伐したのは、屍鬼に近いアンデッドだった。
とは言え、騎士団長も深手を負ったらしい。
ドラゴンは、硬い鱗に守られ、息吹を吐くことで厄介極まりない魔物だ。
覚醒者が魔力を通した武器を使用したり、槍系の魔法を使用した場合、鱗はある程度、無視できる。
ちなみにドラゴンの上位種は龍。
これは伝説の中の存在と思われがちだが、存在する。
知能が高いため、そもそも滅多に人を襲うことはない。【魔力の目覚め】以前は知性の低い龍が人を襲うことはあったらしい。
『ライン、ターバ。2人の戦いは最強決定祭で見てきた。期待している。そして、ヤマルにリーイン。先に言っておくが、君たちは故郷の国に配属する予定だ。何か問題は?』
「いえ、ありません」
「大丈夫です。お気遣い、感謝します」
『そうか。なら、早速試験を始めてくれ。ミュイ、頼んだぞ。――決して手加減はするな』
「かしこまりました」
配属先まで決められていて驚いたが、まあいい。
1年の体育祭の屈辱、ここで晴らさせてもらおうか……。
オレと副団長。
経験という点において、条件はフェアじゃない。
だが、今回はオレも覚醒している。
それにより、水晶の硬度が上昇している。
他にも、身体能力の向上により、判断力も向上している。つまり、生成スピードが大幅に上昇した。
覚醒したおかげか、素の状態での身体能力も上昇した。
前回の戦いの、特にアンフェアに感じた条件がこれだ。
「さて、では、出席番号順でターバ。君からだ」
「お願いしまっす!」
『覚醒した直後に、斬撃を飛ばす――『飛撃』を覚えた天才だ。私より潜在能力が高い可能性がある』
【神童】よりも高い潜在能力か。
まあ、【神童】が何を指すかによるか。
技の習得に関してなのか、戦闘センスなのか、判断力なのか。
戦闘に関する項目で天才だったのは確定だが。
「審判は私、クーラ・デインが務めさせていただきます。距離は40メートル、合図は、手を叩くので、それを合図としてください。他に質問は?」
「ない」
「ないです」
副騎士団長は長剣を、ターバは双剣を構えた。
刃はある。そのため、回復術師が待機している。
「では……」
――パァン
『通話』の応用、拡声魔法で音を大きくしたのか。こんな使い方もあるんだな。
合図と同時にターバは覚醒し、副騎士団長は走り出した。
いつのまにか、覚醒している。
瞬く間に距離を詰めた副騎士団長は情け容赦の欠片もない横薙ぎを繰り出した。
「のわっ!!」
――が、間一髪で避けられた。
だが、攻撃のできる態勢ではないターバは、後ろに跳躍し、態勢を整えようとするも、距離を詰められてしまう。
だが、ターバの持つ、テンプレの1つだった。
そもそも、跳躍した先で態勢を整えるのは、実にナンセンス。
なのになぜ、跳躍した先で態勢を整えるのか。
それは、空中での体のひねりが難しいから、が主な理由だ。
だが、そこをオレたちは練習してきた。
――そして、成功した。
宙に浮かぶターバ、距離を詰める副騎士団長。
副騎士団長は、ターバの右肩目掛け、突きを繰り出すつもりだ。
これで仕留めるつもりなんだろう。
そして剣が弾かれ、宙に舞う――
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