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第二章 〜水晶使いの成長〜
第57話 最強決定祭⑦
しおりを挟む「「――うおおぉぉぉおおおおお!!!」」
雄叫びを上げ、ぶつかる。
そして聞こえてくるのは、武器と武器がぶつかることで発生する、甲高く、硬質な音のみ。
瞬き1回する間にも、幾つもの攻防が繰り広げられている。
突き、薙ぎ、斬り、防ぎ、水晶が現れ、消え…………――――
――『晶弾』を2発発射するも、一閃のもとに斬り伏せられる。
返す刃でカウンターが放たれるが、『晶盾』で防ぐ。
「ライン、そろそろその盾も耐久度が落ちてきたんじゃないか?」
「その常識が通じるのは、一般魔術師だけだ。 オレにその常識は通用しないんだよ!!」
攻撃を受ける度、『晶盾』の魔力量が減少するため、魔力を注ぎ、耐久度を回復している。
「通りで……」
「そして、オレの切り札を見せてやろうか?」
「ぜひとも」
ここでの切り札は、『晶棘』を指す。
別に、必殺技というわけではないんだが。……あれ、体育祭で使ったっけ……? ま、いっか。
ターバのカウンターを防ぎ、『晶棘』を足元から生成する。
「ちっ! これか!」
「そうだ」
宙に浮いている状態のターバ。これは受けるしかないよなぁ?
……いや、間に合わないか。
「うっっ!!」
そして、そのまま吹っ飛んでった。だが、受け身は取っている。
だが、先ほどと同じく畳みかける。
先ほどと同じく、両者の中間地点で刃が交わる。テレパシーでもあるのかと疑いたくなる。
だが、先ほどと違うことが起きる。
異変は、少し後に起こる――
ターバにこれまでと同じように、畳みかけようとし、走り出した。
ターバも同時に走り出した。
どうせ、これまでと同じように、「どちらかが飛ばされ、またぶつかる」のだろうと思っていた。そして……
――自分が最終的に勝利する、と。
――だが、今回は別の結末を、別のシナリオを辿って迎えることとなる。
2人がぶつかったその瞬間、ラインが闘技場の壁まで吹き飛んだ。
闘技場は、上から見ると、半径30メートルの円形だ。
中央を座標(0,0)とし、2人のぶつかった位置を、(20,-10)とするなら、ラインの激突した壁は、(-20,10)。
つまり、ラインは60メートルも吹っ飛んだのだ。
「……おい、何が起きた?」
「飛んでったの…………ライン・ルルクスだよな? 水晶の……」
「生きてるのか?」
観客は騒然としていた。
『観客の皆さん、落ち着いてください! ライン選手は生きております。魔力探知で確認されています』
――何が起きた……??
確か、ターバが棍の攻撃範囲に入ったから、攻撃しようとして…………そうだ。
悪寒を感じて、咄嗟に『晶装』で全身鎧を生成したんだ……。
……『晶盾』がない。繋がりも消えている。破壊されたか……。
この鎧も、耐久度ぎりぎりだな……。
――ゾクッ!!!
おい…………嘘……だろ? この反応……。
信じたくなかった。あまりにも絶望的で、最悪のタイミングだった。
それがもたらすのは、「敗北宣言」。そう……ターバ・カイシ。彼は、
「――覚醒……!!」
覚醒したのだ。
ラインと、今にも再び攻防が再び始まろうとしたとき、体の奥底からナニカが溢れ出した。
でも、それはとても体に馴染んだ。瞬時に、こう理解した。
――制限が解除されたんだ、と。
自分でも気味が悪いと思う。
突如溢れ出した力の塊に、まるで怯えることがないんだから。
むしろ、「普通」と感じている。
だが、俺も馬鹿じゃない。自分が覚醒したってことぐらい……わかる。
ターバの顔には、右額から右頬にかけ、痣が出現していた。
右額でぐるっと回り、緩やかな曲線を描きながら落ちている。
誰の目にも明らかだった。ターバが覚醒したという事実は。
「ライン!」
「安心しろ。生きてる。水晶の硬さなめんな」
「よかった……。さて、どうする?」
「答えは言わなくてもわかんだろ?」
「結果も、言わなくてもわかる」
って思うじゃん?
ま、実際そうなんだけど。ただ、降参するのは格好悪いからしない。
それだけだ。
オレにできるのは、生き残ること。
「よし、続きといこうかぁあ!」
『おおっとぉ! ライン選手、まだ立ち上がるようです! よく見ると、なんと! 無傷!! ですが、相手は覚醒者! どこまで戦えるのでしょう!?』
「いいのか?」
「――ああ」
その一言で、ターバが迫って来た。瞬きする時間だけで、目の前に迫っていた。だが……
──知っている。
だから、防御の構えをしていたんだ。狙うのは、カウンター。
せめて、一矢報いたかった。それだけで、十分だった。
「――じゃあな」
プログラミングは、何も変形だけじゃない。
決められた時間、決められた場所で生成させることができる。
──言わば、時限発動式魔力操作だ。
無数の『晶弾』がターバの背後に生成され、一斉に発射される。
殺傷能力はある。
こうでもしないとダメージが入らない。
それに、覚醒者はゴキブリ並みにしぶといらしい。大丈夫だろう。
ただでさえ丈夫なターバだ。しぶとさはゴキブリ以上だろう。
「くっ!」
ちっ! 気付かれたか。
ターバは足を止め、後方に体を傾け、地面すれすれの高さで後ろ向きに跳んだ。
もちろん、『晶弾』はこちらを向いている。
――だが、想定の範囲内だ。
『晶弾』の指導権を獲得し、方向転換させる。
この中を無傷で突破することはほぼ不可能だ。
確かに、一つ一つは簡単に破壊できる。
だからこそ、数の暴力を利用している。
なんだ? 剣に魔力を集めている……?
突然の不可解な行動。漫画じゃ、こういうのにやられるんだ。
もちろん、やられるのは悪役。……オレ?
「おお!!」
そして、ターバが剣を振るった。その軌跡に『晶弾』があるわけではない。一体何を……?
『……者、ターバ・カ…シせ……!! ライ………手は、回……術師が手………行っておりま…。命の心配は……………。繰り………ます、命の心…………りません』
朧げなオレの脳内に、そんな音が流れていた。
目の前は、薄っすらとしか見えない。視界が……薄黒く塗られているようだ。
夢……?
違う、現実だ。何が起きた?
なぜこうなった?
そうだ……――――
「――!!!」
目が覚めた。
え~~っと……そうだそうだ。あの時――
「おお!!」
ターバが剣を振り下ろす――正確には、双剣を斜めに振り下ろした――と、クロスされた剣筋が飛んできた。
『飛ぶ斬撃』だ。
前世の男子で憧れない人はいない、あれ。
まさかここでお目にかかれるとは………なんて言ってる場合じゃない。
速い。やべ──
――ドオォォオオン!!!!
そして、オレは意識を失った。
「あ、目が覚めましたか」
ベッドの脇には、チョビ髭の30手前ぐらいの人が丸椅子に座っていた。で、白衣を着ている。
誰だってわかる。医者だ。
回復術師か、薬学師かは知らんが。
「オレは、どれくらい眠って? 体は? 最後はどうなって?」
「眠っていた時間は1時間弱。無傷。君の防御魔法は間に合ったが、勢いは消せず、闘技場の壁にぶつかり、意識を失う。以上」
……終了。
普通そこは、「落ち着いて」じゃないの? 全部返された……。
「あれを受けて、無傷、か……」
「水晶の全身鎧を身に着けていたよ。意識を失ったせいで、すぐに消えてたけど」
「間に合ってなかったら、死んでたんですかね?」
「いや、生きてたよ」
あれ、意外としょぼい攻撃だったってことか?
「気付いていないのかい?」
「? 何にです?」
「君も──」
その後、この人の口から発せられた言葉は、耳を疑うようなものだった。
あのときのターバは、力加減が完璧ではなかった。
あの攻撃は、オレの魔法が水晶だったこと、反射で防御できたことといった条件が組み合わさることで防げた。
つまり、常人なら死んでもおかしくなかった。
にも関わらず、オレは無傷。
気絶の原因は、打ち所が悪かったから。
つまり、導きたされる結論は──
「──覚醒したんだよ」
「覚醒……オレも…………」
まじかよ。
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