戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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第二章 〜水晶使いの成長〜

第69話  デビュー

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「いらっしゃいませ。今日はどういった御用でしょう?」

 そう言ってきたのは、カウンターの奥に座る受付嬢の1人だ。

 内部の作りは、ここ数日宿泊しているホテルと似た作りだ。同じって言ってもいい。

「冒険者の登録に……」
「お名前をお伺いします」
「ライン・ルルクスです」
「……かしこまりました。すでに話は聞いておりますので、準備は整っております。暫く、あちらでお座りになって、おつくろぎください」

 とんとん拍子だ……。
 とんとん拍子で話が進んでいく……。

 一応、理解はした。つまり、オレは……!!

 ――ただ待つだけ。



 座り心地のいいソファで、特にすることもなく、ぽけーっと座っていた。
 どれだけの時間が過ぎ去ったのか……。

 ……5分ほど。
 体内時間は驚くほど正確なんだ。感覚だけど。

 

 それからもう5分後。

「ルルクス様!」

 ああ、手続きが終わったか。

「はい」
「ルルクス様、手続きが完了しました。こちら、冒険者としての証となる短剣となります」

 そう言って渡されたのは、華美な装飾が施された短剣だった。
 これ、装飾のせいで物は切れなさそうだけど……。もしかして、これは鞘か? 

「見ての通り、こちらの短剣は物を切ることはできません。あくまで、冒険者としての身分を保証する物です。なので、刀身はありません。材質は鋼のため、そこそこ丈夫ですが、魔力はこめないようお願いします。ランクが上がると、こちらの穴が埋まります」

 ふむふむ……。なるほど。短剣じゃなく、ただのオブジェじゃねえか。見た目はかっこいいのに。

「ルルクス様と言えど、最初は鉄級からとなります。本来、見習い期間は1年のところ、ルルクス様は半年で終了。その後、魔鉱級へ昇進です」

 おお! 好待遇!! いいねぇ!

「近衛騎士団長様の本部長を通しての命令のため、ルルクス様が、半年の間のみですが、ともに活動する方が決まっております。その方は、今日の夜に帰還予定ですので、明日、再びお越しください」

 おい。これはどういうことだ? なぜそこに騎士団長が関与してくる?

「こちら、冒険者に関する規則の記されたものになります。こちらも身分を証明するものとなりますので、失くさぬように」

 そう言って渡されたのは……生徒手帳…………?
 と思うほどの、小さな手帳だった。いや、これ生徒手帳がモチーフだろ。
 焼き印で名前が彫られているけど。
 この、意味があるのかわからないカバーといい、この厚さといい。

「質問はございますか?」
「いえ、ないです……」
「では、こちらの書類の空欄部分に必要事項を書いてください」

 いや、そっちが先でしょ、普通! ああ、なんか疲れる……。

 氏名、生年月日、出身領、出身村、使える武器…………。



「はい、問題はありませんね。では、これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 そして、短剣(型のオブジェ)と生徒手帳みたいな何かを持って、組合を出た。

「無事、登録は終わったようだな」
「お待たせしました」
「いや、いいさ。先ほど、騎士団長より連絡が入った。お前とパーティを組む相手だが、明日、早速依頼を受けたらしい。内容は討伐」
「具体的な魔物は?」
「……人狼だ」

 

 人狼。ミスリル級に認定される、危険な魔物。
 さらに厄介なのは、狩りを楽しむ点、群れで行動する点。
 稀に孤人狼も確認されるが、この場合、白金級パーティでも勝利を収めることができる。

 もちろん、それだけではない。
 群れには、リーダーが必要だ。
 群れに1匹いるリーダー格の人狼はオリハルコン級にもなる。



「人狼……ですか」
「現在の情報だと、数は12匹。オリハルコン級は2匹。発見に至った経緯は、金Ⅲパーティーとの遭遇。パーティーは全滅だそうだ。今わの際での『通話トーク』により、発覚した」

 事態はかなり深刻なようだ。
 人狼って、かなりやばい魔物だったよな? 狼系統で弱い魔物は、漫画にすら存在しなかった。

 ってか、冒険者デビュー初日に、それをやらせるか、普通?? 





 翌日。
 時刻は朝の8時。ここは王都の門の外。

「ほっほっほ。お主がラインかの?」

 そう声をかけてきたのは、一言で言うなら「ファンキー爺さん」。筋骨隆々な肉体、白く染まった髪と髭。

 だが、実力は本物らしい。オーラというべきか。それは、要塞をイメージさせる。
 笑顔の裏にあるのは、要塞。

「そんなに緊張する必要はないぞ。さて、自己紹介から始めんとな。オリハルコン級冒険者、エドガー・オプノヒス。年は先々月誕生日を迎えて、67じゃ。さて、お主の番じゃ」
「鉄Ⅲ級冒険者、ライン・ルルクスです。年は、10月に18になるので、今は17です」
「そうかそうか。ああ、レイハル坊から話は全部聞いておる。と、言うよりあやつ、隠すつもりはないようじゃったがな。その証拠に、ほぼすべての――近衛騎士はどうかは知らんが――冒険者は知っとるぞ?」

 おい、極秘任務的なこと言ってたよな? なんでばれてんだよ?
 ターバたちは予め知ってたらしいけど。

「あまりいい印象は持たれていないようじゃがな」

 そう言うと、爺さんは愉快そうに笑った。
 笑い声に合わせ、金属が重なり合うときに発生する、チャラチャラとした音がした。
 服の下に鎖帷子くさりかたびらでも着ているな。

 オレも戦闘衣装を着用済みだ。
 衣服は昨日、副騎士団長に店を教えてもらい、そこで買ったものだ。
 前払いで、近衛騎士の分・・・・・・の給料をもらった。

 宿も移った。宿泊費は自腹だ。
 だって、どっちの寮も使えないし。立場的に。

 冒険者の寮は騎士団長からのダメだしが理由だったが、本当の理由は今さっき、爺さんの何気ない一言で判明した。

 ちなみに、近衛騎士の分の月給は銀貨60枚だ。前世の感覚だと、60万円。

 本来の近衛騎士の給料と比較すると、隊長より多く、副騎士団長より少ない。
 騎士団員は40枚、隊長は50枚、副騎士団長は70枚。【魔導士】もオレと同じだけもらっているらしい。



 買ったのは、白地に青と金のアクセントの入ったトレンチコート、黒の装甲靴サバトンと手袋、ズボン、コートの中に着る服、鞘を付けることのできるベルト。

 どれも特殊な素材でできており、魔力を注げば修復される。
 また、汚れが付かない・・・・。試しに水をぶっかけたら弾かれた。  
 風通しもいい。どこから空気が出入りしているのかは謎だが、魔法具にそんなこと言ってもしょうがない。

 おかげで、合計金額は銀貨47枚…………。残高は銀貨23枚と少し。今月いっぱいは余裕だ。

 手袋は、手甲ガントレットの下に着用する用だ。
 滑り止めだ。汗も吸収してくれる。

 そして、近衛騎士からペンダントを支給された。これは、着用者の体温を一定に保つ魔法具だ。
 買ったら高いんだろうなぁ。大事に使おう。

「お主、武器は?」
「本来なら棍ですが、人狼が相手とのことなので、刀でいきます」
「うむ」

 爺さんの装備は、いたってシンプルだ。

 背中に背負った大剣(オリハルコン製)、スパイクの生えたごつい手甲ガントレット、白いマント。
 マントで遮られていて、中は見えない。マント越しでもわかる筋肉ってどんだけだよって思った。

「勤勉でよろしい。さて、今回の魔物――人狼。魔物連合の一員の可能性がある」

 魔物連合。
 オレとターバ、スゥが第一発見者の、様々な魔物の集合体。

 あれ以降、いくつか判明した事実がある。
 どれもにわかには信じられないものだ。

 まず、やつらは知恵がある魔物である。その最たる例としては、人との遭遇頻度の低さ。

 そして、強い。
 ゴブリンなんかも確認されているが、あくまで捨て駒扱い。

 そして、驚愕の事実。
 指揮能力の高さだ。高確率で、連合の頭は混合型。それも、かなり厄介な進化を遂げたもの。

 確認された魔物の中には、人狼も含まれていた。

「体のどこかに目立つ──覚醒とは違う、2本の痣があれば、魔物連合の魔物じゃ。それに、やつらは部隊で行動するらしいが、その頭はな――」

 その後に続けられた言葉は、到底理解しえないものだった。



 ――話が通じるんじゃ。
 


 話が通じるリーダー。それは、その魔物の知能の高さ……ひいては、その魔物の強さ、厄介さを表す。

 2本の痣っていうのは、アフリカの部族とかが塗るやつと同じようなものだろう。

「さて、行こうかの」

 農作業に行く前のような調子で言うと、森の方へ歩き出した。

「ああ、徒歩じゃぞ? どこで遭遇するかわからんからの。ただ、やつらはあまり動き回る性質は持ち合わせておらん。場所はわかっとるから、すぐに遭遇できるじゃろうて」

 魔物討伐は農作業と同義語なのだろうか……?


 

 
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