戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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第二章 〜水晶使いの成長〜

第71話  デビュー③

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『はぁ……はぁ……やってくれたな、人間ども……』

 まだ息があったか。

 だが、そこそこのダメージは入っている。
 HPゲージ黄色ラインか? 赤に入りかけかも。  

 ゲームならここでボスは覚醒する場合が多いんだが、現実《リアル》じゃそんなことはないだろ。

『だが、負けるわけにはいかん! せめて片方の首はもらっていく!』

 そう言うと、隊長人狼は手に炎を纏った。
 はい、フラグ回収。
 迅速な行動、ありがとうございます。

『――『火纏い』! ──『飛撃』!』

 『火纏い』か。
 もともと持ってた技の可能性もあるな。
 技名って、意外と悩むんだよな。オレは詠唱が必要ないからそこまで悩む必要はないけど。
 『飛撃』とか『重撃』は詠唱がいるんだけど、オレが考えた技じゃない。

 で、なんでこんなに余裕なのかと言えば、相手の目標がオレじゃないから。

 もちろん、何もしないわけにはいかない。
 隊長人狼に向け、拳大の『晶拳』を、3つ放つ。

 そして、周りに先端に槍の穂先のようなものを付けた『晶鎖』を4本待機させる。

 オレ、傍から見れば強キャラっぽくね? 主人公サイドの強キャラな。

 

 放った『晶拳』は、2つは避けられたが、1つは顔面ヒット!

 口の端から血を垂らし、こちらを睨む・・・・・・

「余所見厳禁!」

 ──ドゴッ

 隊長人狼の後頭部と背中に、『晶拳』がヒットする。

『──グガハッ』

 けど、やっぱり毛皮のせいか、ダメージは少ない。
 だが、今の衝撃で集中力が切れたのか、『火纏い』は消えた。

『ゴボッ』

 ──ぺしゃっ

 隊長人狼は吐血した。まあ、もともと傷は酷かったんだし、仕方ないか。


 
 近年、「人」に深刻な被害を出している魔物連合。「隊」がどの位置にあるのかは不明だが、とりあえず、「長」と付く魔物を倒すのは、こちらにとって大きな一手となる。

 だが、魔物連合は不明な点だらけの連合だ。捕らえて、情報を吐き出させる方がいい。

「じいさん、こいつの動きを抑えれる?」
「できんこともないが、タイミング次第じゃ。何を……いや、聞くまでもないな」

 流石は高位のベテラン冒険者だ。察しがいいな。

『ほう……我を捕らえる気か? 面白い!』

 そして隊長人狼は、再び『火纏い』を展開した。

『──『飛撃・連』!』

 隊長人狼は、ただひたすらに爪を振る。そのすべてが、火を纏った、飛ぶ斬撃となり、オレたちに襲い掛かった。

 木を掠めるだけで、火が燃え移っている。魔力の制御ができていないのか、熟練度が足りないのか、木が燃える。

 だが、他の木に燃え移る様子はない。そこだけはちゃんとできんだな。

「ライン!」
「わかってる! ――『晶壁』!」

 オレと爺さんの前に『晶壁』を展開する。

 幸いにも、『晶壁』を軽く溶かすだけのようだ。

『ぅおおお!!』

 半ばやけくそか。
 隊長人狼は、ただひたすらに爪を振り続ける。
 『晶壁』に、火の刃が降る。だが、どんなに大雨でも、これはゲリラ豪雨。

 やがて、音がしなくなった。

 上を見上げると、空高く、隊長人狼が跳びあがっていた。
 上からの奇襲のつもりだったのだろうが、見え見えだ。

「――『晶盾しょうじゅん』」

 上に大盾ラージシールドサイズの『晶盾』を展開する。自由落下状態の隊長人狼は、そのまま『晶盾』にぶつかった。

「――『晶弾・龍』」

 晶弾が隊長人狼目掛けて上昇する。『晶弾・龍』が『晶盾』にぶつかる直前、『晶盾』を消す。

 だが、予想外だった。
 本来、予想せねばならない事柄だったのに、オレはしなかった。勝利を確信し、慢心していた。

『――『火纏い』』

 ――隊長人狼が激しく燃えていた。

 言うなれば、それは火の鎧。それも、驚くほどの高熱。
 迫る『晶弾』が溶ける。いくつかはなんとか原型を留め、隊長人狼に当たるが、溶けてどろどろのため、大したダメージが入らない。

『…………っ!』

 ――――!!

 なるほどな。

 ――キャパオーバー・・・・・・・か。

 あまりの高熱に、詠唱者自身が焼かれているのか。世話ないな。
 だが、大事な情報源だ。あの世に逃がしてたまるか!

 今現在より生成した『晶弾』にプログラミングする。同時並行で『通話トーク』を起動させる。

『爺さん、オレがあいつをどうにかする。だから、この『晶鎖』で捕らえるまで、爺さんが抑えてくれ』
『……策があるんじゃな。わかった。任せよう』


 
 そろそろ十分か。隊長人狼の上には、いくつもの水晶の塊があった。『晶拳』だ。
 それも、1つ1つの大きさは人の頭より1周りも2周りも大きい。

 爺さんが『飛撃』で攻撃し、オレも『晶弾・龍』で攻撃をしている――範囲を広げ、当たらない弾の数の方が多くなるようにしてある――ため、ばれてはいないようだ。

『無駄無駄無駄! やはり貴様らでは我は倒せない! ……我がただ燃えているだけかと思ったか? 残念!』

 そろそろ頃合いか。

「その言葉、そっくりそのまま返すぜ……。――『晶け』……『流晶群』!!」

 流星群は、星が群れで流れる。オレのは、水晶だ。だから『流晶群』。
 こういう技名を考えているときって、ほんとに脳みそがフル回転している気がする。

『ぐあぁぁぁああっっ!!』

 うわーー。情け容赦のない攻撃だな。

 これだけの攻撃を受けてもなお、火は消えない。防御系の魔法なのか?

『あああっ!! ――『陽光フラッシュ』!!』

 その瞬間、あたりが光に包まれた。こんなもの、オリハルコンのグラサンで……

 ――ざしゅっ

 脇腹に走る痛み。

 なんだ? 『陽光』で辺りに魔力が満ちているせいで魔力探知が使えない。
 グラサンで目は守っているが、光が強すぎる! サングラスに追加で魔力を注ぎ、『陽光』の魔力を打ち消している状態だ。

 隊長人狼の姿は見えない。だが、断言できる。――これは、隊長人狼じゃない。
 根拠はない。そして、隊長人狼よりも強い!

 覚醒のおかげで、痛みは少ない。武器は刺さったままか。これは…………骨?

 脇腹に刺さっていたのは、見た感じ、骨だった。人骨かどうかは定かではない。

 爺さんがどこにいるのかわからない以上、攻撃ができない! 光が収まるのを待つし――



 次の瞬間、首筋に痛みが走り、辺りが光に満ちている中、オレの意識は暗闇の中に沈んでいった。





 光が止み、そこには重傷の隊長人狼と爺さん。そして、闇の中に1つの気配。

『――――』
「……」

 爺さんは気を失っているラインを担ぎ、離脱した。

『なぜあの者たちをみすみす逃したのですか!? 貴方様と私であれば、たやすく屠れる相手で――』
『理由は2つ。1つ。お前の隊の小隊の壊滅。2つ。我らが主がお呼びだ』

 隊長人狼の問いかけに、食い気味で返事があった。その声は、どこか神経にくるものだった。

 そして、その声の主が姿を現した。

 ――骸骨スケルトン
 それはアンデッドの一種で、文字通り、動く骨だ。
 1体であれば、白金級の冒険者パーティーでも倒すことができる。だが、これは違う。

 表現するなら、鬼の骸骨スケルトン
 骸骨スケルトンの混合型――異形の見た目を持つ異形型であり、性能面などで、他より優れている進化型でもある型――である。

 そして、装備も充実していた。
 特に、腰に下げている剣。それは、オリハルコン製だった。

『第十隊隊長、バルクスよ。来い。ああ、回復が先だな。これを使え』

 そういって差し出したのは、緑色の石ころだった。

『ここに来る途中で仕留めた冒険者が持っていたものだ。治癒の魔法が込められている』
『は! ありがたく使わせていただきます。――『回復ヒール』』

 使用すると、緑の石は音もなく、まるで初めからなかったかのように消え去った。

『人が来ないうちに行くぞ。魔力は残っているか?』
『はい。どこに向かえば?』

 魔物連合は本拠地を持たない。そのため、どこにいるのかわからない。連絡事項は伝令を使って伝えられる。

 そして、現在魔物連合が存在し、次に血を見る場所は――

『――ハーマルだ』

 

 
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