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第二章 〜水晶使いの成長〜
第72話 放浪者
しおりを挟む「――はっ!」
ここは……? さっきまで森で人狼と戦って…………
「――お、目覚めたか?」
「爺さん、生きてたのか」
「わしはまだまだくたばらんぞ?」
落ち着きを取り戻し、ようやく自分がどこにいるのか理解できた。
「ここは王都の治療院じゃ。意識を失ったお主を、わしがをここまで運んだのよ」
「あの人狼は?」
目の前の爺さんは無傷。もちろん、回復魔法で回復させた可能性もあるが。
オレの傷はすでに治癒している。
「あの後……」
あの時、隊長人狼の仲間が1匹、あの場にいた。そいつに、オレがやられたのだろうと推測できる。
そしてなにより、そいつはとてつもなく強かったらしい。
実際に戦ったわけではないそうだが、纏う雰囲気、気配が格上だったそうだ。
だが、決して勝てない敵ではなかったとのこと。1VS1では勝率は低いだとかなんとか。
聞きたいとこはそこではないんだが。
見た目は不明、故に、種族も不明、武器も不明。
「そして、あれは闇の中からこう言った。――『お前たちに興味はない。早く行け』と」
そして、爺さんはオレを担いで撤退したらしい。言葉通り、そいつは追手を放つことはなかった。
オレを守ってくれたのか。ありがたいねぇ。
「それより、ライン。お主……そこそこ危なかったんじゃぞ?」
「いったいそれはどういう……?」
「出血多量じゃよ。回復魔法で量は戻ったが、その分かなりの体力が奪われたらしいな。3日間も眠っておったぞ? 寝坊助め」
3日!?
まじか~~。めっさ寝たやん。
まぁ、体力回復のための睡眠だし、今夜は寝れそうだな。
「え、爺さんは3日間ずっとここに?」
「そんなわけないじゃろうが! ただ、初の魔物連合隊との戦闘だったからの。国家会議に出席したぞ? 今日も出席するが、お主が目覚めたんじゃ。一緒に行ってもらうぞ?」
「え、オレ……病み上がり……」
「回復魔法で治癒して、目が覚めたんじゃ。体調は万全のはずじゃ。そうでないなら、ただの思い込み……」
「――それか、体のなまりですね」
そう言って部屋に入って来たのは、美人看護師だった。
「目覚めたようですね。では、軽く検査するので、上の服を脱いでください」
オレが今着ているのは、病院服とか言うやつだ。上下で別れているタイプ。
関節の動き、痛みがないか、脳は正常に働くかを確認され、結果、異常なしと判断され、退院した。
荷物は何もなかったため、服を――洗濯してくれていた――着替えただけだった。
そうだ、オレが眠っている間に、オリハルコンがオレと完全に馴染んだ。
その影響で、武器・防具の色が変化していた。
剣、刀、斧などの刀身が水晶のような、白色透明になっていた。
棍、棍棒、モーニングスターにいたっては、全部が白色透明だった。
銃は漆黒。モーニングスターの持ち手は革とまったく同じ触感で、黒地に金の装飾。
防具はどういうわけか、オリハルコンのときとまったく変わっていなかった。
「防具の見た目は変化しておらんのか。お主はそれが気に入っておったようじゃな。とことん変わったやつじゃの」
ああ、なるほどな。たしかに、防具はこの色が気に入っていた。
変わってるってことは、みんな、自分好みの色彩になっているのか。
まあ、性能に影響はないからいいけど。
そこから少し歩き、王城に到着した。
「おお! レイハル坊! ミュイ嬢!」
「爺さん、坊はやめてくれって言ってるだろう?」
「エドガーさん、嬢はやめてくださいと……」
「はっはっはっは!」
この3人の反応を見るに、いつも繰り返されているやりとりなのだろう。
実際、不快気にしている様子は微塵もない。
「それと、ライン。回復おめでとう」
「ありがとうございます、騎士団長」
「まさか、大当たりだったとはな……すまなかった」
「いえ、これは仕方のないことです。オレが行かなくても、他の誰かがこの役目を背負っていたでしょう」
これは不幸、もしくは幸運の遭遇ではなかった。こちらの意図的な遭遇だった。
なら、これは責めるべきではない。
それに、蛇が出るか鬼が出るかの状態だった。
蛇にしろ鬼にしろ、倒さねばならなかった。
仕方ない。
「さて、ではそろそろ、中に入ろう」
騎士団長を筆頭に、後ろに副騎士団長、爺さん、最後尾にオレ。
全員、戦闘服だが、鎧などの武器・防具は解除している。
つまり、着てるのはただの服となんら変わりはない。
王宮の2階にある会議室に到着した。
――コンコン
返答はすぐに、動作をして返って来た。
――ガチャリ
観音開きの扉の片側が軽く開かれ、そのわずかな隙間から目が出てきた。
「騎士団長様、副騎士団長様、オプノヒス様ですね」
こちらが怪しい者でないことを確信したのか、目の主が姿を現した。
やはり、槍を持った男だった。男は、オレを見据えると、
「……して、そちらは?」
「近衛騎士第一隊所属、ライン・ルルクスだ。遭遇者だが、深手を負い、治療院にて治療していたのだ」
オレが口を開くまでもなく、騎士団長が紹介してくれた。
「了解しました。では、皆さま、お入りください。もう少ししたら会議も始まります」
中は、ほどよく陽光を取り入る作りとなっており、明るかった。
机は円卓。だが、大半の席は空席で、その代わり、机の上に映像伝達の魔法具が置かれていた。
その中の一席には、すでに1人、座っていた。
「おや、殿下も参加なされるのですか?」
「ああ。これでも冒険者だからな。兄上も参加するぞ。父上と共に、そろそろ来る頃合いだろう」
ああ、この国の第二王子か。名前は知らんけど。
見た目は短く揃えた銀髪に、濃紺の瞳。よく整った目鼻。クールな雰囲気。
悪役令嬢系の登場人物みたいだ。冷徹だけど~~みたいなキャラ。
「にしても、【魔導士】と同じ、近衛騎士兼冒険者、か。……ラインと言ったか。これが終わった後、手合わせしてくれないか? 俺はオリハルコン級だ。不足はないと思うのだが?」
「ええ、構いませんよ」
魔法というものはかくも偉大だな。病み上がりの感覚がまったくない。
「そうか、そいつは楽しみだ。【魔導士】のときは瞬殺されたからな」
そのとき、部屋の扉が開かれ、2つの人影が姿を現した。
「4人とも、よく来てくれた。ライン、病み上がりにすまないな」
「もったいないお言葉」
これで合ってたか? 漫画の知識だが。
「ほう、よく勉強しておるのだな」
合ってたーーー!! よかったぁーーー!
「さて、そろそろ始まる。各々、席に着きたまえ」
ああ、名前の書かれた札が置かれている。
……ってか、このファンキーな見た目の割に、「王様」と聞いてイメージする通りの口調だな。
後ろの第一王子は何も言わないけど。
銀髪に、国王と同じ黒の瞳。高身長で、細身の体付き。
頭良さそうなオーラ出しまくりだが、印象は良さそうだ。他人を見下すことはなさそうだ。
国王に言われた通り、自分の当てられた席に着く。
そして、ものの数秒後、すべての魔法具が起動した。
そこには様々な顔が浮かんでいた。
まあ、箱も、前見たときよりも大きいタイプだ。
「ではこれより、魔物連合対策会議を始める! 進行は私、へラリア国王ナガン・へラリア・ワルクシース。では、各国の保持する情報の交換から始めるとしよう」
ああ、へラリアは苗字じゃなかったのか……。なら、他の領主たちもそんな感じなのかな。
そんな時、他の――どこのどちらさんか存じないが――参加者が口を開いた。
『いや、それはこの2日間で出し尽くしたはずだ。今回はもう1人の遭遇者から話を聞くべきでは?』
『私もその意見に同意します』
「わかりました。では、ライン。あの人狼と出会ってからの様子を話してくれ」
げっ! 初っ端から当てられんのか! 話を聞く傍らで考えておこうと思ってたのに!
ええい! ままよ!
「かしこまりました」
そして、あの人狼たちと出会ってから、気を失うまでの様子を詳しく話した。
「以上になります」
『ふむ……話を聞く限り、ラインは相当の実力者だな』
「その辺りについてですが、この後、第二王子シュース・へラリア・ワルクシースと模擬戦を行う予定です」
『シュース王子と…………』
『良い物差しですな』
結構優秀なんだな。シュース王子、ねぇ。
「では、これにて会議を終了します。では、場所を移動しましょう」
王子との模擬戦の開始だ。
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