戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

文字の大きさ
74 / 168
第二章 〜水晶使いの成長〜

第73話  放浪者②

しおりを挟む

 オレたちは城の中庭に移動していた。
 草木が植えられているが、低く狩り揃えられている。

 ここで本気で戦っていいものか……と、遠慮したくなる。
 なんなら、他の場所でやりたい。

 そう思う、心は一般庶民のオレだ。

「手っ取り早く決着をつけるため、防具の着用は禁止とする。審判は私、へラリア国第一王子ファル・へラリア・ワルクシースが。では、両者とも位置についてください」

 ここは、縦およそ60、横およそ30。単位はメートルな。
 木はないが、下は芝生。

 地面から攻撃する魔法――『晶棘しょうきょく』でも、出てくるのに問題はないだろう。
 芝生の下は土だ。

「第二の【魔導士】との対戦、か。楽しませてくれよ?」
「はは、お手柔らかに……」

 相手は第二王子。ここは王宮内部。

 うわーー。胃が痛くなる……。キリキリ。

「では、始め!」

 覚醒し、武器を構える。オレは刀に、第二王子はハルバードにオリハルコンを変形させる。

「――『晶弾』」

 『晶弾』を8発生成し、待機させる。



 同時生成させられる水晶の量は、数ではなく質量だった。
 このことに気づいたのは冒険者学校2年のときだった。遅すぎだ。
 間違っていたとは言え、答えを得たことで思考を放棄してしまっていたのだ。



「――ぬるい!」

 第二王子がハルバードを振る。
 一瞬で3振りし、『晶弾』はすべて真っ二つ・・・・に割れた。

 斧頭だけでなく、ハルバードに付いている槍の部分で斬ったりしていた。
 だが、大半は斧の部分で割られてた。

 おまけに、『飛撃』などの技術スキルは使っていない。

 技術スキルは三賢者が広めた。
 三賢者にしては良いネーミングセンスだ。漫画とかじゃ、普通だが?

「その程度か……?」
「まさか」

 様子見としては、『晶弾』は最適なんだヨ。手数が多いからな。

 納刀状態まま腰に提げている刀の柄に手を伸ばし、腰を落とす。居合の構えだ。

「なるほど…………な!」

 地を蹴り、即座に間合いに迫ってくる。

 てっきり、『飛撃』で遠距離攻撃を仕掛けてくるかと思っていたのだが……。
 だが、予想はしていたがな。

「はっ!!」

 そして、居合斬りを放つ。
 だが、防がれる。

 だが、二の手は用意してある。

 二の手は『晶棘』。予め、地面の中に魔力を込めておいたため、第二王子が居合を受け止めた瞬間に発動した。

「くっ! ――『水衣みずごろも』!」

 『水衣』。技術スキルだ。
 回避のために使われることの多い技術スキルで、肉体の流れ……動きを加速させる。



 他にも、これに当たる技術が3つある。

 『火衣ひごろも』。攻撃に重みが増す。
 『土衣つちごろも』。防御系で、肉体の硬さが増す。どのくらい硬くなるかは、個人差がある。
 『風衣かぜごろも』。探知能力の向上。

 どれも、オレには習得不能だった。属性特化の影響なのだろう。

 ああ、『土衣』に当たる魔法はある。

 ──『晶皮しょうひ』。
 皮膚を、薄い水晶の膜が覆う魔法だ。
 薄さの割になぜか硬かったのだが、オレの中で『土衣』に当たる魔法だったからだろう。
 この魔法を習得しようとしたところで知った。

 

 『水衣』によって『晶棘』を間一髪で回避し、第二王子は、回避の際に後ろに引いた足で蹴りを繰り出す。
 その蹴りはオレの顔面を狙っている。

「――ハッ!」

 ブオン、と重い音が鼻の先で鳴った。間一髪で避けることができた。

 避けるときに重心を後ろに傾けたため、そのまま後ろに跳んだ。
 その間に『晶弾』を複数生成し、放つ。
 追いかけるように、第二王子が距離を詰めてくる。

 相手にも予定外だったようで、すべてを弾くことはできなかった。
 放った『晶弾』の1発が、第二王子の右太ももに命中する。

「ぐっ!」

 ちょうど地面に足を着いたタイミングで命中したため、第二王子は大きくバランスを崩す。

 その隙に『晶弾』を4発生成し、放つ。
 それぞれ、左脛、右肩、左脇腹に命中し、右頬骨を抉る。

 だが、それで怯むような戦士ではなかった。
 痛むなら、我慢すればいい。それだけだが、それほどだった。

「――『飛撃』!」

 ハルバードを大上段に構え、振り下ろす。『飛撃』が地面を割きながら、こちらに向け、進んでくる。地面を割きながらも、進む速度は遅くなっていない。

 綺麗に刈り揃えられていた草が…………。

「――『晶盾』」

 水晶で大盾……タワーシールドを生成する。

 ――ガギィィィイイン!!

 硬質なもの同士がぶつかり、甲高い音を立てる。それから一泊置き、辺りに白い煙が発生する。
 つまり、勝ったのはオレの『晶盾』。だが、僅かに縦方向にひびが入っていた。

「かってぇなぁ」
「水晶だからな」

 第二王子とは、さきほどここへ来る道すがらに少し話し、敬語を使うことがなくなった。



 そして、霧が晴れる。
 その瞬間、第二王子が迫ってくる。だがオレだって、準備はしていた。

 居合斬りの構え。
 それに加え、周囲に『晶鎖』を展開。先端は、槍の穂先状にしてある。
 刺突攻撃、殴打攻撃が可能だ。斬撃は……やりようによってはできるかな?

「――ヒュッ」
「はっ!」

 居合斬りを放ち、それを向かい討つようにハルバードによる突きが放たれる。

 ――ガキンッ!

 刀と槍の先端がぶつかる。その勢いは拮抗している。だが、それでいい。

「――『晶鎖』!」

 周囲に待機させておいた3本の『晶鎖』を向かわせる。

「――『水衣』」

 第二王子は『水衣』で一瞬だけ動きを加速させ、ハルバードを引く。そして、ハルバードを振り回し、『晶鎖』の攻撃を弾く。

 中空での動き。
 そこに隙が――一瞬だけだが――生まれる。一瞬。それは覚醒状態では、大きな隙となる。

 もちろん、オレの手は2つだけではない。ここまで予期していたわけではないが、なんとなく・・・・・、用意しておいた方がいいと思ったんだ。

「――『晶弾・龍』…………『み』!!」

 第二王子を挟み込むように、二方向から『晶弾・龍』が迫る。
 ハルバード1本で防ぎ切れるはずがない。
 もう1つ武器を持っていたとしても、体勢を崩している状態で、この量を捌き切るのは難しいだろう。

「――『土衣』!」

 第二王子は、防御系技術スキルを使用し、それと同時に盾を召喚する。
 だが、ハルバードを所持している右手側は、完全に防げず、怪我を負っている。
 ああ、もちろん、殺傷能力はない。刺突ではなく、殴打攻撃だ。

 それは、地に足が着いた後も変わらなかった。

 ――ドガガガガガガガガガガガッッッ!!!

 『土衣』も、最早意味を成していない。ないよりはましなのだろうが、な……。

 ああ、そろそろ残りが少ないな。
 あの霧が出ていた短い時間に、魔法を維持しながら作り続けたわけだからな。
 残存魔力量はまだまだ余裕はあるが、これを続けることに意味はない。

 刀を構え、左右から攻撃を受ける第二王子に接近する。
 こちらにも一応注意を向けているが、攻撃のしようはないはずだ。

「くっ!」

 第二王子は、足元に短剣を召喚し、蹴る。
 その矛先は、オレの方を向いている。当たり前か。
 だが――

「――甘い!」

 刀で短剣を遠くに弾き飛ばす。
 そして、第二王子との距離が、棍の・・間合いに少し及ばないほどの距離となった。

「――くっそ!!」

 盾を消し、ハルバードも…………

 その前に、刀を棍に変える。もう、終わらせようか。

「――『音砲ショックキャノン』!!」

 棍を突き出し、その先に水晶で薄い半円状の膜を生成し、そこに棍がぶつかる。



 『音砲ショックキャノン
 簡単に言うなら、音の砲撃。音をビームのように一転集中させる。めっちゃうるさい。



 攻撃に『重撃』を加え、水晶の膜を魔力で覆う。膜の形も合わさり、音だけでなく、衝撃も飛ばす。
 つまり、内部からの破壊が可能となる。ま、鼓膜がやばいことになるのは確かだ。

「――――――!!」

 辺りに音は響かない。
 辺りの物に反射した、かすかな音が聞こえるのみだ。うるさい音が聞こえるのは第二王子のみ。
 
 耳から血が出ている。鼓膜が破れたな。そして、そのまま後ろに倒れ、審判の声が響く。

「【水晶使い】ライン・ルルクスの勝利!!」

 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

処理中です...