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第二章 〜水晶使いの成長〜
第73話 放浪者②
しおりを挟むオレたちは城の中庭に移動していた。
草木が植えられているが、低く狩り揃えられている。
ここで本気で戦っていいものか……と、遠慮したくなる。
なんなら、他の場所でやりたい。
そう思う、心は一般庶民のオレだ。
「手っ取り早く決着をつけるため、防具の着用は禁止とする。審判は私、へラリア国第一王子ファル・へラリア・ワルクシースが。では、両者とも位置についてください」
ここは、縦およそ60、横およそ30。単位はメートルな。
木はないが、下は芝生。
地面から攻撃する魔法――『晶棘』でも、出てくるのに問題はないだろう。
芝生の下は土だ。
「第二の【魔導士】との対戦、か。楽しませてくれよ?」
「はは、お手柔らかに……」
相手は第二王子。ここは王宮内部。
うわーー。胃が痛くなる……。キリキリ。
「では、始め!」
覚醒し、武器を構える。オレは刀に、第二王子はハルバードにオリハルコンを変形させる。
「――『晶弾』」
『晶弾』を8発生成し、待機させる。
同時生成させられる水晶の量は、数ではなく質量だった。
このことに気づいたのは冒険者学校2年のときだった。遅すぎだ。
間違っていたとは言え、答えを得たことで思考を放棄してしまっていたのだ。
「――ぬるい!」
第二王子がハルバードを振る。
一瞬で3振りし、『晶弾』はすべて真っ二つに割れた。
斧頭だけでなく、ハルバードに付いている槍の部分で斬ったりしていた。
だが、大半は斧の部分で割られてた。
おまけに、『飛撃』などの技術は使っていない。
技術は三賢者が広めた。
三賢者にしては良いネーミングセンスだ。漫画とかじゃ、普通だが?
「その程度か……?」
「まさか」
様子見としては、『晶弾』は最適なんだヨ。手数が多いからな。
納刀状態まま腰に提げている刀の柄に手を伸ばし、腰を落とす。居合の構えだ。
「なるほど…………な!」
地を蹴り、即座に間合いに迫ってくる。
てっきり、『飛撃』で遠距離攻撃を仕掛けてくるかと思っていたのだが……。
だが、予想はしていたがな。
「はっ!!」
そして、居合斬りを放つ。
だが、防がれる。
だが、二の手は用意してある。
二の手は『晶棘』。予め、地面の中に魔力を込めておいたため、第二王子が居合を受け止めた瞬間に発動した。
「くっ! ――『水衣』!」
『水衣』。技術だ。
回避のために使われることの多い技術で、肉体の流れ……動きを加速させる。
他にも、これに当たる技術が3つある。
『火衣』。攻撃に重みが増す。
『土衣』。防御系で、肉体の硬さが増す。どのくらい硬くなるかは、個人差がある。
『風衣』。探知能力の向上。
どれも、オレには習得不能だった。属性特化の影響なのだろう。
ああ、『土衣』に当たる魔法はある。
──『晶皮』。
皮膚を、薄い水晶の膜が覆う魔法だ。
薄さの割になぜか硬かったのだが、オレの中で『土衣』に当たる魔法だったからだろう。
この魔法を習得しようとしたところで知った。
『水衣』によって『晶棘』を間一髪で回避し、第二王子は、回避の際に後ろに引いた足で蹴りを繰り出す。
その蹴りはオレの顔面を狙っている。
「――ハッ!」
ブオン、と重い音が鼻の先で鳴った。間一髪で避けることができた。
避けるときに重心を後ろに傾けたため、そのまま後ろに跳んだ。
その間に『晶弾』を複数生成し、放つ。
追いかけるように、第二王子が距離を詰めてくる。
相手にも予定外だったようで、すべてを弾くことはできなかった。
放った『晶弾』の1発が、第二王子の右太ももに命中する。
「ぐっ!」
ちょうど地面に足を着いたタイミングで命中したため、第二王子は大きくバランスを崩す。
その隙に『晶弾』を4発生成し、放つ。
それぞれ、左脛、右肩、左脇腹に命中し、右頬骨を抉る。
だが、それで怯むような戦士ではなかった。
痛むなら、我慢すればいい。それだけだが、それほどだった。
「――『飛撃』!」
ハルバードを大上段に構え、振り下ろす。『飛撃』が地面を割きながら、こちらに向け、進んでくる。地面を割きながらも、進む速度は遅くなっていない。
綺麗に刈り揃えられていた草が…………。
「――『晶盾』」
水晶で大盾……タワーシールドを生成する。
――ガギィィィイイン!!
硬質なもの同士がぶつかり、甲高い音を立てる。それから一泊置き、辺りに白い煙が発生する。
つまり、勝ったのはオレの『晶盾』。だが、僅かに縦方向に罅が入っていた。
「かってぇなぁ」
「水晶だからな」
第二王子とは、さきほどここへ来る道すがらに少し話し、敬語を使うことがなくなった。
そして、霧が晴れる。
その瞬間、第二王子が迫ってくる。だがオレだって、準備はしていた。
居合斬りの構え。
それに加え、周囲に『晶鎖』を展開。先端は、槍の穂先状にしてある。
刺突攻撃、殴打攻撃が可能だ。斬撃は……やりようによってはできるかな?
「――ヒュッ」
「はっ!」
居合斬りを放ち、それを向かい討つようにハルバードによる突きが放たれる。
――ガキンッ!
刀と槍の先端がぶつかる。その勢いは拮抗している。だが、それでいい。
「――『晶鎖』!」
周囲に待機させておいた3本の『晶鎖』を向かわせる。
「――『水衣』」
第二王子は『水衣』で一瞬だけ動きを加速させ、ハルバードを引く。そして、ハルバードを振り回し、『晶鎖』の攻撃を弾く。
中空での動き。
そこに隙が――一瞬だけだが――生まれる。一瞬。それは覚醒状態では、大きな隙となる。
もちろん、オレの手は2つだけではない。ここまで予期していたわけではないが、なんとなく、用意しておいた方がいいと思ったんだ。
「――『晶弾・龍』…………『食み』!!」
第二王子を挟み込むように、二方向から『晶弾・龍』が迫る。
ハルバード1本で防ぎ切れるはずがない。
もう1つ武器を持っていたとしても、体勢を崩している状態で、この量を捌き切るのは難しいだろう。
「――『土衣』!」
第二王子は、防御系技術を使用し、それと同時に盾を召喚する。
だが、ハルバードを所持している右手側は、完全に防げず、怪我を負っている。
ああ、もちろん、殺傷能力はない。刺突ではなく、殴打攻撃だ。
それは、地に足が着いた後も変わらなかった。
――ドガガガガガガガガガガガッッッ!!!
『土衣』も、最早意味を成していない。ないよりはましなのだろうが、な……。
ああ、そろそろ残りが少ないな。
あの霧が出ていた短い時間に、魔法を維持しながら作り続けたわけだからな。
残存魔力量はまだまだ余裕はあるが、これを続けることに意味はない。
刀を構え、左右から攻撃を受ける第二王子に接近する。
こちらにも一応注意を向けているが、攻撃のしようはないはずだ。
「くっ!」
第二王子は、足元に短剣を召喚し、蹴る。
その矛先は、オレの方を向いている。当たり前か。
だが――
「――甘い!」
刀で短剣を遠くに弾き飛ばす。
そして、第二王子との距離が、棍の間合いに少し及ばないほどの距離となった。
「――くっそ!!」
盾を消し、ハルバードも…………
その前に、刀を棍に変える。もう、終わらせようか。
「――『音砲』!!」
棍を突き出し、その先に水晶で薄い半円状の膜を生成し、そこに棍がぶつかる。
『音砲』
簡単に言うなら、音の砲撃。音をビームのように一転集中させる。めっちゃうるさい。
攻撃に『重撃』を加え、水晶の膜を魔力で覆う。膜の形も合わさり、音だけでなく、衝撃も飛ばす。
つまり、内部からの破壊が可能となる。ま、鼓膜がやばいことになるのは確かだ。
「――――――!!」
辺りに音は響かない。
辺りの物に反射した、かすかな音が聞こえるのみだ。うるさい音が聞こえるのは第二王子のみ。
耳から血が出ている。鼓膜が破れたな。そして、そのまま後ろに倒れ、審判の声が響く。
「【水晶使い】ライン・ルルクスの勝利!!」
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