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第二章 〜水晶使いの成長〜
第75話 放浪者④
しおりを挟む会議から一週間。
オレは、フレイを完璧に乗りこなせるようになった。
リンクも太く、大きくなった。そのおかげか、魔力の共有もできるようになった。
1日でへラリア国の端から端まで駆けることができた。
途中休憩はなかった。フレイの体力、半端ねえ。
そして今日も、元気に王都の上空を翔《かけ》っていた。空中散歩だ。
そのとき、『通話』が入った。騎士団長からか。
『ライン、今、話しても平気か?』
『ええ、大丈夫です』
『国王陛下からの勅命だ。お前の冒険者ランクを、たった今からオリハルコンとする』
え? は? 絶対裏があるやつやん…………。
『そして各国を巡り、魔物連合の解体に努めよ、とのことだ』
『……かしこまりました』
『贈呈品の中に仮面があったな? あれは、常時着用しておけ。お前は大分有名になったからな、顔は隠すべきだろう』
『わかりました』
『旅は明日からだ。行き先は自由に決めよ。話は以上だ』
『通話』が切れる。
有名だから、顔を隠す。理由は、主に2つだろう。
1つ。シンプルに、ファンの存在。
2つ。嫉妬による奇襲防止。こっちのがメインの理由だろう。
シヴィルのアライバルとか。
あいつは結局、覚醒はしなかったらしく、最強決定祭には来なくなった。
おまけに、荒れ気味らしい。
そろそろ夕方なので、帰ろうと思い、王都外の草原に降り立った。
「――やぁ」
「――!!」
突如現れた気配。だがこの声は…………
「……【魔導士】アーグ・リリス……」
「久しぶりですね、ライン・ルルクス」
そこにいたのは、黒ずくめの男だった。
前髪も長く、鼻まで届いている。そのすぐそばには、覚醒アヌースがいた。毛は赤色だ。
「3年ぶりほどだね。実は騎士団長からの指示で、ちょっと講義をしに来たよ」
ああ、【魔導士】もオレと同じ立場だったか。
「仮面は……すでに受け取っているようですね。それは必須アイテムですからね。あと、それ――聖火の指輪もあるようですね。とりあえず、それらがあればなんとかなりますよ」
ホルスの仮面に、聖火の指輪。
かなり貴重なアイテムだ。
だが、オレと【魔導士】の持つアイテムは、デザインが全く違うものだった。
ホルスの仮面。
オレのは、顔全体を覆う形状であるのに対し、【魔導士】のは、顔の上半分を覆うものだ。
ただし、聖火の指輪はほとんど同じ形状だ。
「うん、その服も魔法具ですね。よしよし。必要な物はそろっているようですね。なら、講義もそんなにやる必要はなさそうです! さてさて、では早速…………」
話はとても――短かった。いや、うん、マジで短かった。
「心に従え」
こんなんで大丈夫かと不安になりもした。言うなら、オレたちの立場って、遊撃だよな。臨機応変に対応する必要がある役割だ。
「ただ、要請があればそちらに従え」
当たり前だ。
「当面の目標は、魔物連合の解体だ。魔物連合とは戦え。できることなら、情報を集めろ」
これは先日の会議でも言われたことだ。やらないわけにはいかない。
「多くの国を回れ。行ってはいけない国はないが、国によっては、立ち入り禁止の場所がある可能性もあることを忘れるな」
これも先日の会議で言われ、さらには、騎士団長にも言われたことだ。
「――以上」
はい、異常。いや、普通か。オレの思う「普通」は、漫画知識に基づくものだしな。
「これは世界地図です。あげましょう」
「へぇ…………これが……」
ちっぽけな世界だ。
陸:海は、およそ3:7。これは前世と一緒だ。だが、地形、陸の形といったものが全く違う。
そして、一番目を引くもの。――こことちょうど真反対――対蹠点周辺は真っ黒だった。
この星小さくない?
「ここは……?」
「そこは不可侵領域。そこは魔物が特別な変化を遂げています。そして何より、入れない」
「入れない?」
「はい。行ったことはありますけど、何かがあるようですね」
なるほどな。結界が張られているんだろう。
「特別な変化を遂げているのは、なんでわかるんだ?」
「中は見えるんですよ。もちろん、不可視の壁…………通称、結界は、内と外を隔離する。言ってしまえば、別世界ですね」
ほう……。俄然興味が湧いてきたぜ……! 結界がなぜ張られているのか、気になるな。
「結界が張られた理由、それはわかりません。ですが、三賢者が深く干渉するな、と言っていたらしいですよ?」
中に何かある。それは確定だな。まさか…………
――――魔王?
「まあ、なんだ、そういうことです」
「いつか、近いうちに行ってみようか」
「まあ、そうですね」
…………何か隠してないか?
いや、なんとなく。勘でしかない。気のせいかもしれないし、根拠はないから、何も言わねぇけど。
「さて、話は終わりです。私はもう行きます」
「ああ、ありがとう。……っと、『通話』を繋げてもいいか?」
「ん? ああ、そうだ。一番の目的を忘れていていました」
大丈夫か? 案外抜けているのか……?
『通話』を発動させ、オレと【魔導士】を繋ぐ。これで次からいつでも『通話』で話すことができる。
「これで目的は果たせました。今度こそ、行きま。このあと、エルフの国に滞在する予定です」
「ああ、いろいろありがとう」
「どういたしまして」
そう言うと、【魔導士】は赤毛の覚醒アヌースに跨り、去って行った。その後ろ姿は、一瞬で見えなくなった。
ふぅ…………。今日はもう帰って休もうかな。
「――おう、小僧!」
「ああ、爺さん」
なんでこの時間帯に集中してくるんだよ!
「ああ、とはご挨拶じゃの。明日から旅立つとレイハル坊から聞いたのでな。お主のことだ。朝から出るつもりだったのじゃろ?」
おお、大正解!
ほんの数日しか一緒に過ごしていないのに。人のことをよく見てるんだろう。長年の積み重ねか?
「ああ、正解だ」
「ふふん! わしの目に狂いはなかったようじゃの」
「で、挨拶というのは?」
「ああ、ちょっと、模擬戦でもしようかと思っての。いいか?」
模擬戦か。
審判がいないんだが。
ここは草原だし、王都外だから多少荒れても、問題はないだろうけど。
「う~ん…………」
「寸止めで終了、魔法や技術の使用は禁止。これでどうじゃ?」
「ふむ…………うん、大丈夫そうだな。距離は……」
「15メートル……いや、10メートルでどうじゃ?」
「それでいい」
オリハルコンの刀を出現させ、ベルトに差す。
もちろん、鞘付きだ。構えは居合い。技術は使用禁止。『飛撃』も『重撃』も使えない。
「回復は…………ほれ!」
投げ渡されたのは、緑色の石だった。手のひらに収まるサイズだ。
「『回復』が込められたミスリルだ」
これが?
そこそこ高価な品のはずだが……。1個あたり銀貨が飛ぶ品だ。
冒険者や近衛騎士といった、死を隣人とする生業に就く者にとっては必須アイテムだ。
低級の冒険者では1つ持っているかどうか、だ。覚醒者――魔鉱級、近衛騎士であれば、2つは所持している。
これは、ただミスリルに『回復』を込めただけ。100パーセント込めることはできないため、術者は本来より多くの魔力を消費する。
そんなことなので、『全快』を込めることのできる存在はそうそういない。
各国に、片手で数えれるだけの人数しかいない。
つまり、ないわけではない。
ただ、超レア。ちなみに、『全快』のミスリルは桜色だ。
勝負は、5分にもおよんだ。
結果は、オレの敗北。
爺さんの怪力による攻撃を受け続けたことによる、握力の低下が主な原因だ。
流せばよかった、と気づいたときにはもう遅かった。
オリハルコンは棍に変えていたいたが、片手で持っていたときに弾かれてしまった。
大剣の切っ先を首に押し付けられ、敗北を認めざるを得なかった。
魔法、技術が使えていたら、なんて考えてもしょうがない。
明日からの旅で、もっと強くなれることを願うのみだ。
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