76 / 168
第二章 〜水晶使いの成長〜
第75話 放浪者④
しおりを挟む会議から一週間。
オレは、フレイを完璧に乗りこなせるようになった。
リンクも太く、大きくなった。そのおかげか、魔力の共有もできるようになった。
1日でへラリア国の端から端まで駆けることができた。
途中休憩はなかった。フレイの体力、半端ねえ。
そして今日も、元気に王都の上空を翔《かけ》っていた。空中散歩だ。
そのとき、『通話』が入った。騎士団長からか。
『ライン、今、話しても平気か?』
『ええ、大丈夫です』
『国王陛下からの勅命だ。お前の冒険者ランクを、たった今からオリハルコンとする』
え? は? 絶対裏があるやつやん…………。
『そして各国を巡り、魔物連合の解体に努めよ、とのことだ』
『……かしこまりました』
『贈呈品の中に仮面があったな? あれは、常時着用しておけ。お前は大分有名になったからな、顔は隠すべきだろう』
『わかりました』
『旅は明日からだ。行き先は自由に決めよ。話は以上だ』
『通話』が切れる。
有名だから、顔を隠す。理由は、主に2つだろう。
1つ。シンプルに、ファンの存在。
2つ。嫉妬による奇襲防止。こっちのがメインの理由だろう。
シヴィルのアライバルとか。
あいつは結局、覚醒はしなかったらしく、最強決定祭には来なくなった。
おまけに、荒れ気味らしい。
そろそろ夕方なので、帰ろうと思い、王都外の草原に降り立った。
「――やぁ」
「――!!」
突如現れた気配。だがこの声は…………
「……【魔導士】アーグ・リリス……」
「久しぶりですね、ライン・ルルクス」
そこにいたのは、黒ずくめの男だった。
前髪も長く、鼻まで届いている。そのすぐそばには、覚醒アヌースがいた。毛は赤色だ。
「3年ぶりほどだね。実は騎士団長からの指示で、ちょっと講義をしに来たよ」
ああ、【魔導士】もオレと同じ立場だったか。
「仮面は……すでに受け取っているようですね。それは必須アイテムですからね。あと、それ――聖火の指輪もあるようですね。とりあえず、それらがあればなんとかなりますよ」
ホルスの仮面に、聖火の指輪。
かなり貴重なアイテムだ。
だが、オレと【魔導士】の持つアイテムは、デザインが全く違うものだった。
ホルスの仮面。
オレのは、顔全体を覆う形状であるのに対し、【魔導士】のは、顔の上半分を覆うものだ。
ただし、聖火の指輪はほとんど同じ形状だ。
「うん、その服も魔法具ですね。よしよし。必要な物はそろっているようですね。なら、講義もそんなにやる必要はなさそうです! さてさて、では早速…………」
話はとても――短かった。いや、うん、マジで短かった。
「心に従え」
こんなんで大丈夫かと不安になりもした。言うなら、オレたちの立場って、遊撃だよな。臨機応変に対応する必要がある役割だ。
「ただ、要請があればそちらに従え」
当たり前だ。
「当面の目標は、魔物連合の解体だ。魔物連合とは戦え。できることなら、情報を集めろ」
これは先日の会議でも言われたことだ。やらないわけにはいかない。
「多くの国を回れ。行ってはいけない国はないが、国によっては、立ち入り禁止の場所がある可能性もあることを忘れるな」
これも先日の会議で言われ、さらには、騎士団長にも言われたことだ。
「――以上」
はい、異常。いや、普通か。オレの思う「普通」は、漫画知識に基づくものだしな。
「これは世界地図です。あげましょう」
「へぇ…………これが……」
ちっぽけな世界だ。
陸:海は、およそ3:7。これは前世と一緒だ。だが、地形、陸の形といったものが全く違う。
そして、一番目を引くもの。――こことちょうど真反対――対蹠点周辺は真っ黒だった。
この星小さくない?
「ここは……?」
「そこは不可侵領域。そこは魔物が特別な変化を遂げています。そして何より、入れない」
「入れない?」
「はい。行ったことはありますけど、何かがあるようですね」
なるほどな。結界が張られているんだろう。
「特別な変化を遂げているのは、なんでわかるんだ?」
「中は見えるんですよ。もちろん、不可視の壁…………通称、結界は、内と外を隔離する。言ってしまえば、別世界ですね」
ほう……。俄然興味が湧いてきたぜ……! 結界がなぜ張られているのか、気になるな。
「結界が張られた理由、それはわかりません。ですが、三賢者が深く干渉するな、と言っていたらしいですよ?」
中に何かある。それは確定だな。まさか…………
――――魔王?
「まあ、なんだ、そういうことです」
「いつか、近いうちに行ってみようか」
「まあ、そうですね」
…………何か隠してないか?
いや、なんとなく。勘でしかない。気のせいかもしれないし、根拠はないから、何も言わねぇけど。
「さて、話は終わりです。私はもう行きます」
「ああ、ありがとう。……っと、『通話』を繋げてもいいか?」
「ん? ああ、そうだ。一番の目的を忘れていていました」
大丈夫か? 案外抜けているのか……?
『通話』を発動させ、オレと【魔導士】を繋ぐ。これで次からいつでも『通話』で話すことができる。
「これで目的は果たせました。今度こそ、行きま。このあと、エルフの国に滞在する予定です」
「ああ、いろいろありがとう」
「どういたしまして」
そう言うと、【魔導士】は赤毛の覚醒アヌースに跨り、去って行った。その後ろ姿は、一瞬で見えなくなった。
ふぅ…………。今日はもう帰って休もうかな。
「――おう、小僧!」
「ああ、爺さん」
なんでこの時間帯に集中してくるんだよ!
「ああ、とはご挨拶じゃの。明日から旅立つとレイハル坊から聞いたのでな。お主のことだ。朝から出るつもりだったのじゃろ?」
おお、大正解!
ほんの数日しか一緒に過ごしていないのに。人のことをよく見てるんだろう。長年の積み重ねか?
「ああ、正解だ」
「ふふん! わしの目に狂いはなかったようじゃの」
「で、挨拶というのは?」
「ああ、ちょっと、模擬戦でもしようかと思っての。いいか?」
模擬戦か。
審判がいないんだが。
ここは草原だし、王都外だから多少荒れても、問題はないだろうけど。
「う~ん…………」
「寸止めで終了、魔法や技術の使用は禁止。これでどうじゃ?」
「ふむ…………うん、大丈夫そうだな。距離は……」
「15メートル……いや、10メートルでどうじゃ?」
「それでいい」
オリハルコンの刀を出現させ、ベルトに差す。
もちろん、鞘付きだ。構えは居合い。技術は使用禁止。『飛撃』も『重撃』も使えない。
「回復は…………ほれ!」
投げ渡されたのは、緑色の石だった。手のひらに収まるサイズだ。
「『回復』が込められたミスリルだ」
これが?
そこそこ高価な品のはずだが……。1個あたり銀貨が飛ぶ品だ。
冒険者や近衛騎士といった、死を隣人とする生業に就く者にとっては必須アイテムだ。
低級の冒険者では1つ持っているかどうか、だ。覚醒者――魔鉱級、近衛騎士であれば、2つは所持している。
これは、ただミスリルに『回復』を込めただけ。100パーセント込めることはできないため、術者は本来より多くの魔力を消費する。
そんなことなので、『全快』を込めることのできる存在はそうそういない。
各国に、片手で数えれるだけの人数しかいない。
つまり、ないわけではない。
ただ、超レア。ちなみに、『全快』のミスリルは桜色だ。
勝負は、5分にもおよんだ。
結果は、オレの敗北。
爺さんの怪力による攻撃を受け続けたことによる、握力の低下が主な原因だ。
流せばよかった、と気づいたときにはもう遅かった。
オリハルコンは棍に変えていたいたが、片手で持っていたときに弾かれてしまった。
大剣の切っ先を首に押し付けられ、敗北を認めざるを得なかった。
魔法、技術が使えていたら、なんて考えてもしょうがない。
明日からの旅で、もっと強くなれることを願うのみだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる