戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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第三章 ~戦闘狂の水晶使い~

第77話  叫び②

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 その報せがオレの元に届いたのは、寝起きすぐ──服を着替え、宿の朝食を食べ、部屋でゆっくりしている所──だった。
 時刻は朝の7時過ぎ。

『――ラインか?』

 騎士団長から唐突に『通話トーク』が入った。
 ここ数日はどこからも呼ばれる予定はないはずなんだが。

 さすがに1年も経てば、貴族どもでも、アポなしで呼びつけることはできなくなった。

 貴族たちのおかげで、冒険者たちとの誤解は解けたのはよかったが。

『おはようございます、騎士団長』

 あまりいい予感はしない。

『ああ、早朝ですまないが、至急へラリアへ…………ハーマル領へ向かってくれ』
『? かしこ……まりました』
『大至急だ。任務内容は警護。すまない、長話はできない。ただ、緊急だ』

 それだけ言うと、『通話トーク』が切れた。 

 その瞬間、ありとあらゆる可能性が脳内をよぎる。

 ただ、そのどれもオレの身の回りの存在の死だった。家族、村の人、旧友。

 どうか、この予想が的外れであってほしいと願う。

 フレイに出発の意志を伝える。ちゃんと起きていたようだ。
 すぐさま、了解の意志が返って来た。

 荷物は大して持っていないため、すぐにまとめ、そのまま部屋の鍵を受付に返し、フレイの出立準備を整え、街の外に出たところで北上する。

 ここはへラリアの真南に位置する。そして、ハーマルはへラリアの東部に位置する。進路は北東。





 ものの数時間でハーマル領都に到着した。
 行きとは違い、『流星駆スターダスト』を使用したため速かった。
 オレは魔法具のおかげで風はへっちゃらだった。

 到着したのは昼頃だったと思う。

 時計なんか、確認している暇はなかった。
 領都の外でフレイを待機させ、門を冒険者の証の短剣を見せてパス。

 すぐさま冒険者組合に足を運んだ。

「オリハルコン、ライン・ルルクスだ」

 任務の関係で、オレはオリハルコン級だ。

「ルルクス様ですね。お待ちしておりました。すぐさま出立をお願いします。あとはあちらの方々と…………」

 後ろに立っていたのは、10人ほどの集団だった。この服装…………もしかして!

「お初にお目にかかります、ルルクス殿」

 そう言って見せてきたのは、十字架の形をした短剣だった。

 十字架の短剣が意味するのは、冒険者とは別の役割の兼任。
 それは――現場検証。別名……十字架部隊。

 間違いない。今回、誰かが死んだ。

 十字架を見せてきたのは、10人中6人。残りの4人は普通の短剣だったが、どれもミスリル級。
 人手不足が解消されたんだな……ってのは置いといて。



 オレたちは『馬』で移動することとなった。
 オレのは覚醒アヌース、冒険者の4人は普通のアヌース。
 十字架は二足歩行の脚の発達した大型の鳥――ヒューギー。

 十字架の案内でオレたちは森の中を駆ける。



 1時間ほど駆けたところで、

「この辺りですので、『馬』から降りてください」

 『馬』を降り、馬と共に歩く。すると、すぐに気づいた。

「――血の匂いだ」

 さらに少し進むと、そこには異常な光景が広がっていた。

「嘘、だろ…………」
「ありえない……」

 地面が大きく陥没していた。
 一番近くにある領都から大分離れているとはいえ、これだけの大きな陥没だ。余波は届かなかったのか……?

 直径はおおよそ20メートル。
 深さは、中心部分でおおよそ5メートル。

「ここで一体何が起きたと言うんだ…………」

 冒険者の1人が漏らした言葉は、この場にいる全員が共通で思っていることだ。

「あ! あれは!?」

 十字架の1人が何かに気づき、声を出す。
 クレーターを回り込むように進むと、そこには複数の物体が落ちていた。

「手…………?」

 そこにあったのは、5つの右手だった。手甲ガントレットや手袋を着けている。

 そして、そのうち4つが身に着けている物を確認したオレは、右手の持ち主が誰であるかを悟った。

 そして、クレーターの中心部分を見る。よく見ると、中心部分が少し盛り上がっていた。
 ホルスの仮面の技能の一つ、『千里眼』でそれを確認したとき、オレは居ても立っても居られなくなり、クレーターの中心部分へ駆け出していた。

 クレーターに入った瞬間、足元が脆いことに気づいた。
 だが、罠などの類はなさそうだった。

 後を追いかけてきた10人も、クレーターの中心にある物体を見、それの正体に気づいた瞬間、目を逸らす。

 そう、これは――

「――肉の塊…………」

 オレたちはそのまま、現場検証に移った。





「この穴、地面の柔らかさから、上からの力ではなく、何かが回転する際に削られてできたものだろうと思う」

 先ほどの地面の柔らかさから、そう判断した。

「ええ、その意見で正しい…………いえ、その可能性が最も高いでしょう。そして、この肉塊…………」

 見るのも嫌……と言いたそうだ。
 わかる。とにかくグロい。さっき調査したとは言え、慣れることはない。

「毛が多いため、もしかしたら魔物や動物の死体が混入している可能性もありますが……量的に、人間の男3人と女2人の一般的な毛量に若干足りないといった量です」
「ああ、今回の被害者は、鉄Ⅲ級冒険者パーティー5人だ。男3人、女2人で構成されていた。女の片方は長髪だった」

 そう、ゴース、ミル、ノヨ、ロイズの4人と、ターバの幼馴染1人からなる冒険者パーティー。
 その証拠に、オレは4人に、何の効果もないブレスレットを渡していたのだ。それらは、先ほどの右手に着いていた。

「そして、今回の犯人は…………」
「ああ、間違いない。魔物連合だ。大方、オレたちへの示威行為だろう。これだけ派手にクレーターを作る必要はないはずだからな」 

 5人は、個人の力量で判断しても、精々が銅級。
 お世辞にも強いとは言えない。それ相手になぜ、という疑問が残る。

「囮でもなさそうだな。近寄ってくる魔物の気配は一切ない」
「それにしても、ここにあった土はどこへ行ったんでしょうね……?」

 ふむ……。たしかに、それは大きな疑問点だ。
 風に乗って飛ばされたというのが、考えられる中で最も可能性が高い。

「この土の渇き具合…………風の魔法、もしくは水の魔法か? 火の魔法であれば、結晶化しているだろうからな。土属性だと、そんな遠くに土を運ぶことは…………できないことはないが、費用対効果が悪すぎる」
「ええ、もしくは、単純な力によって削られた、かですね…………」

 まるでわからないな。
 なぜ、これほど大きなクレーターができたのか。
 なぜ、右腕だけ切り落とされていたのか。どれも、肩からすっぱりだ。
 なぜ、死体を肉の塊にしたのか。

 そして、ここで何が起こったのか…………。

 肉塊はぐちゃぐちゃにされていた。ここまでする必要があったのか?
 ただし、装備品は──切り落とされた右腕を除き──全てなくなっていた。

 なぁ……お前ら、何かやったのか? それとも、何か知ったのか?

「辺りに手がかりとなる物は何もない。これ以上の長居は危険だろう。帰るぞ」
「「は!」」

 ここ自体、敵方の罠の可能性もある。
 それに、目標は果たした。これ以上ここに残る必要はない。

「遺体は持ち帰りましょう。領都の墓地に埋葬でよろしいですか?」
「ああ、こいつらの墓は……一緒にした方がいいだろうな」

 なんせ、固まってるんだもんな。

「墓はオレがどうにかする。お前らは分担してくれ。片方は、火葬場に遺体を。ただ、まだ焼くな。別れを告げる人を呼ぶ必要がある。もう片方は、冒険者組合にて、こいつらの死亡届を提出。後に、火葬場へ。冒険者組合で遺族報告を頼んでおいてくれ」
「「は!」」

 指示をし、領都へ帰還する。





 墓地で一番大きいサイズの墓…………集団タイプの墓を購入し、火葬場へ向かう。
 都中から、こいつら――冒険者チーム、岩塊の拳骨を知る者たちが集まって来た。

 遺体の状態が状態なだけに、火葬は公開されなかった。埋葬も非公開だった。



 そして、チームの肉親が後日やって来た。墓参りを済ませ、泣きながら帰って行った。



 ――『岩塊の拳骨』 ミル、ゴース、ノヨ、ロイズ、ヒュンミイ  ここに眠る――
 




 
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