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第三章 ~戦闘狂の水晶使い~
第82話 ドラゴンの襲撃
しおりを挟むオレは戻って来た。
だが、こちらでは一瞬しか経っていない。だが、その一瞬でオレは強くなった。
全知は使えないが、他は使えるはずだ。
本当、あいつには驚かされ続けた。
【魔力の目覚め】を引き起こした張本人は俺だ、とか。
オレたちをこの世界に転生させた神と、魔王を1人で殺した、とか。
【魔】の器だった魔王を殺したせいか、【魔】の柱を引き継ぐことになったとか。
オレも誰かに殺されたらそいつに【知】が行くかも…………。
うわ、やべえもん背負っちまった!
でも、多くの技術を得た。
水晶の緻密な操作。
ゴーレムの生成(水晶製)。
必殺技。
単純な肉体、魔力の強化。
そして、器として覚醒したことで、痣が変化した。
形も若干変わったし、なんか増えた。かっこいいと思ってる。
さてさて、これからどうしようか…………。
――ん? これは…………
『――ライン、いるな?』
『ええ、今は教会に』
『竜が襲撃してきた。南と北だ! 幸い、【魔導士】も王都にいる。お前は南を相手にしろ! 私たちは王都内の見回りだ。民を落ち着かせる必要がある』
『わかりました。え、まさか、オレ1人で?』
『お前なら勝てる。安心しろ』
いや、何を根拠にこの人は…………。
『…………わかりました』
『アヌースには乗るなよ? では、直ちに行動を開始せよ!』
『は!』
しょうがねえ、ささっと済まそ。
南門に辿り着くと、門の上に近衛騎士が3人立っていた。
そのうちの1人は見覚えがあった。
「ターバ!」
「ラインか、久しぶり!」
「んで、ドラゴンは? あそこでこっちを見てる」
門の上に上ると、たしかにドラゴンがいた。『千里眼』を発動させると、腹ばいになって見えない腹に、かろうじて赤い痣が見えた。
「魔物連合か」
「ああ、あっちは…………見ての通り飛んでるから、腹がよく見える。けど、やっぱりあれも魔物連合か」
「龍じゃないことを喜ぶべき、か」
「いや、魔物連合が人里を襲っていることに危機感を覚えるべきだろう。まあいい。仕留めるぞ。援護してくれるんだろ?」
「ああ!」
ターバ以外は魔術師か。そこそこ期待できそうだ。
「どうする?」
「飛ぶ気があるのかないのか。とりあえず、ここからオレが魔法を…………」
『グルルララァァァ!!』
ビリビリと、ドラゴンの咆哮が大気を震わす。
これで民たちは逃げてない。近衛騎士万歳!
ドラゴンはオレたちを見据え、上空で羽ばたいていた。
「攻撃! ――『晶拳』!」
「――『飛撃』」
「「――『炎弾』!!」」
そして――着弾。
『ガラァァァ!!』
全部首に着弾した。うはーー。激おこだよ。
「hate管理はできたかな? さて、どうやって倒そうか……」
「鱗は魔法防御も物理防御も高いらしい。狙うなら、鱗のない、そして的の広い腹だろうな」
「民衆に被害が出ないようにするのも重要ですよ?」
民衆に被害……周辺に一般人はいない。家の中にもいないはずだ。騎士団が避難させているはずだ。
「家屋の損害は?」
「多少であれば見逃せますが、家屋は人の思いが宿る場所であるということをお忘れなきよう……」
「はは……わかってる」
こうやって話している間も、ドラゴンは攻撃してこない。冷静な魔物は好きだが、嫌いだ。
「ドラゴンは1匹でもオリハルコン級です。ですが、有羽種はオリハルコンを凌駕します。その物理・魔法攻撃力に、防御力。騎士団長は過去に討伐経験がおありのようですが、避難誘導にまわっておられるようです」
女の魔術師が蘊蓄を披露する。
そうだ、なんで騎士団長は避難誘導にまわってるんだ?
「騎士団長はなぜ、避難誘導に? お前ら、何か聞いてないか?」
「最も最適な判断をできるのは私、だとおっしゃっていました……ですよね、ターバ殿?」
「ああ」
あれ、ターバ、もしかしてちょっと偉い?
まあ、ターバって強いもんな。おまけに加護持ちらしいし。
ああ、なんの加護かは、後で聞くとしよう。
「ところで、【水晶使い】殿。どうなされますか?」
「睨み合いをしていても埒が明かないからな。――攻撃だ。いいか、奴が降りて来たら、オレがあいつに乗り移る。それまで、ここから攻撃をし続ける!」
「「了解!!」」
「攻撃開始!!」
『ガルゥラララア!!』
ドラゴンが火の玉を吐き出してきた。
息吹じゃないのか。だが、火の玉も直径5メートルはあるだろう。
「ライン!」
「わぁってる! ――『晶盾』!」
円形盾《サークルシールド》を展開する。地面から生えてないから『晶盾』。
そこら辺、こだわったりこだわらなかったりする性質《たち》でして。って、誰に言ってんだか。
『晶盾』と火の玉がぶつかり、火の玉は爆発する。――が、『晶盾』のおかげでこちらに風すら来ない。
「――『|飛撃』!」
「――『炎弾』!」
「――『川弾』!」
中級魔法『川弾』。初級魔法『水弾』と違い、名前通り、流れがある。圧倒的な質量に加え、流れによる浸食。
初級魔法と中級魔法の違いは、言ってしまえば、威力と速さの違いだ。
あとは、属性の強化。火なら、火力。水なら、質量。風なら、斬撃。土なら、硬度。
『晶盾』を消し、『晶弾・龍』に変える。ギリギリ範囲内だった。
ドラゴンの首に『晶弾』の雨と、双剣から放たれる2本の『飛撃』と、2つの中級魔法がHITする。
『ぐるるるる…………』
「困りましたね…………ほとんど無傷とは」
「だが、まったくの無傷ではないな」
仮面の『千里眼』で確認したが、わずかだが血が流れていた。
『ガアァ!!』
ドラゴンが(今度こそ)息吹を吐いた。
でも、まあ、なんだ。
水じゃあなぁ…………。
「水か……なら、こうだな! ――『晶棘盾』!」
円形盾を円錐状にする。頂点はドラゴンの方を向いている。
水が勢いはそのままに逃げていく。王都にも入り込むが、これは…………
「「――『炎弾』!!」」
炎の塊が、上に逃げた水を蒸発させる。
大半の水は下向きに流れて行ったから、上に流れて行ったのは全体の2割程度。
上向き以外に逃げた水は王都内に入ることはなかったが、地面を抉った。
「ドラゴンにふさわしいだけの威力ですね」
「ああ、そうだな」
近衛騎士2人は素直に関心している。
「見た感じ、連発はできないのか、しないのか……。冷静な野郎だ」
「あっちはドンパチ……あれ、あの空を飛んで一騎討してるのって【魔導士】じゃねぇ?」
「あーー、本当だな」
あの人、飛行魔法使えんのかよ。【魔導士】なだけあるぜ。
『グラァ!』
ドラゴンが咆哮を挙げる。余所見がばれたか。すんませ~~ん。
キレたのか、降りて来た。
『ぐるるるるる……』
好都合だ。
「総員、攻撃! ターバ、指示は任せる! ――『晶人形』!!」
駿から教えてもらった、ゴーレムの生成。
今は2体までしか作れない。
ゴーレムは言ってしまえば、眷属だ。
自我は……あるのか?
命令には忠実。若干の知能はあるが、臨機応変に行動することはできない。
オレの水晶魔法も使える。
オレと魔力は共有されている。
まあ、持ち主はオレだから、使う魔力を制限できる。
フレイと同じく、意志でやりとりが可能だ。
魔法は防御魔法に制限させ、王都やターバたちに攻撃が行きそうなときのみの使用を許可。
そしてオレは外に飛び降り、ドラゴンの元までダッシュする。
カモフラージュのために、多くの魔法が飛んでいく。おかげでこちらには気付かれていない。
以外にも大きくないんだな。先入観があったのかね…………。
そして、大ジャーーンプ!
ドラゴンの背に乗り移る。鱗だらけだな、本当に硬いし。
ここに乗ったのは賭けだ。
表面が鱗に覆われているのなら、内部を破壊しようと思ったのだが、それは最後の切り札だ。
それより、こいつは魔物連合なんだ。今回の2体しかいないと考えるのはよくない。
だからこそ、別の手段を試そうと思った。
別の手段って言っても、強行突破だけど。
どこかに弱点はないか。斬撃、殴打、刺突。どれが効くのか。
さあ、実験体となってもらおうか、ドラゴンくん?
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