戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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第三章 ~戦闘狂の水晶使い~

第84話  連合のエージェント

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「――やあ」
「「!! ――【魔導士】!」」

 まるで気が付かなかった。足音を聞き洩らしたか?

「やあ、ライン。お! そちらさんはターバですか?」
「ええ、そうです」
「なかなか有名ですよ? 再生する体と、その圧倒的な強さ、剣を振るう速さ。それはともかく……今、加護の話をしてましたね。ラインも持っているのですか?」

 加護じゃなくて神器なんだけどなあ。
 1個、適当に選ぼうか。

「ええ、【理解】を。【魔導士】さんは?」
「私は【全属性理解】。けっこう便利ですよ」

 ああ、駿のか。つまり【魔導士】は駿の眷属?

「副騎士団長も加護持ちですよ。彼女の切り札だから、私の口からは言わいませんけど」
「あっと、着きましたな」

 着いたのは、王城。今回はここだ。

 騎士団本部は王城内にある。そして、隊ごとに部屋が与えられている。
 今回向かったのは第一隊の部屋。オレたち3人が所属する隊だ。

 部屋に入ると、すでに騎士団長と副騎士団長がいた。

「ご苦労だった、【魔導士】アーグ・リリス。【水晶使い】ライン・ルルクス。まあ、ここは安全だ。仮面を外せ」
「「は!」」

 ターバは部屋の外で待機している。門番の役目も兼ねているのだろう。

「ライン、難なくドラゴンを倒せたようだな」
「はい」
「うむ。アーグも、最後は派手に決めていたな」
「ええ、まあ。かっこいいところを見せよう、と」

 ああ、ドラゴンを一撃でばらばらにしてたな、この人。

「そうか、さて、ドラゴンも撃退したことだ。今年は4年に1度の騎士団祭を開催してもよいだろう」

 騎士団祭?
 ああ、もう、名前だけで理解できる。近衛騎士で戦ってトップを決めるんだろ?

「しかし、守りが手薄になるのでは?」

 【魔導士】の懸念は最もだ。
 やりたいかやりたくないか、と聞かれれば、やりたいさ。

「そこは対策済みだ。各隊から3名選抜して戦わせる。つまり、隊対抗戦だ。優勝した隊のみ、他国の騎士団と戦うことができる」
「なるほど、それなら……」
「もちろん、お前たちや、私は参加不能だ。強すぎるからな。もちろん、ターバも加護が加護のため、今回は禁止。本人に了承は取ってある」

 オレ出場できないのか! 

「安心しろ。ライン、アーグ、ターバで優勝者と戦え。もちろん、世界優勝チームと、だ」

 よかった…………。

「さて、本題に入ろう。連れて入れ。ターバ、お前も入れ」

 すると扉が開き、騎士が3人入って来た。その後ろにはターバもいる。
 だが、冒険者組合の受付嬢が3人、騎士に連行されるかたちで入って来た。体には縄が巻かれている。

 受付嬢を騎士団長の前に放り投げると、3人の騎士は礼をして出て行った。

「さて、これが、私が今回ドラゴン退治に赴かなかった理由だ」

 は……? オレの神器の能力は制限があるため、こればかりは知ることができない。

 ふむ……ドラゴン退治以上に重要な案件…………。

「よく見てみるといい。その仮面で、な」

 とりあえず、仮面を着用する。そして、まずは魔力探知を発動する。

 全体を薄い魔力が覆っている。
 だが、この程度はザラだ。才能はあったが、それを伸ばさなかったケースの人はこんな感じだ。数も少なくない。

「ライン、『透視』です」

 【魔導士】の助言で、『透視』を使うと、

「――人狼……?」
「残念、見た目はよく似ているが、そいつらは妖狐。魔物連合からの贈り物だ」

 贈り物。つまり、諜報員エージェント、スパイ。

「いつからは知らんが、ここ、王都で人として過ごしてきていたようだ。正規のルートで冒険者組合受付嬢として就職。そして、連合に情報を渡している・・
「な! ご、誤解です! 私たちはそんなことはしては――」
「――ではなぜ『通話トーク』を飛ばす? 残念だが、私にばれずにその魔法は使えんぞ? もちろん、【魔導士】の前でもな!」

 なるほど、ここは安全、とはそういうことか。
 『通話トーク』を感知、そして遮ることができるなら、盗聴対策が完璧ということ。

「そ、それは組合に…………」
「はあ……さっさとその化けの皮を剥いだらどう?」

 受付嬢たちは、【魔導士】の脅しに冷や汗を流している。
 でもこれ、幻術なんだよな、多分。
 だって、中身が人型の狐だし。3人そろって。

「わかった、もういい。私がその皮を剥ごう。――『麻痺パラライズ』」

 騎士団長が剣を向けると、受付嬢たちに電気が纏わりついた。
 そして、受付嬢たちは地面に転がる。

「あ、うう……」
「ぐうぅ」
「が……ぐっ」

 だが、受付嬢たちは必死に抵抗している。
 だが、体を覆う魔力に揺らぎが見える。

「――『気絶スタン』」

 次の瞬間、受付嬢たちは糸が切れたように、ピクリとも動かなくなった。
 すると、だんだん姿がぼやけ、やがて本来の――妖狐としての姿を現した。

「赤い、2本の痣…………たしかに、連合の魔物ですね」
「やれやれ、この5人のことは知っているだろうから、おとなしく投降してくれると思ったんだが、甘かったか」
「そう言えば騎士団長。先ほどの電気は……?」
「ああ、それについては…………いや、今は目の前のことを終わらせよう」

 電気の属性特化か?
 だとすれば転生者の可能性も…………。
 だが、多分違う。

「アーグ、水をかけて目を覚まさせろ」
「お湯とお冷、どちらを?」
「冷たいやつだ。とびきりのな」
「りょーかい」

 【魔導士】は水を生成し、妖狐どもに落とした。なんか、氷が浮かんでいた気がする。
 どんだけ冷たいんだか……。

「「ぶはっ!」」
「一体何を!」
「正体見たり、だな。まだ白を切るつもりか? その見た目で」
「「!?」」

 もう、言い逃れはできない。さてさて、ここで殺すのかね?

「さて、では……連合に関する情報を吐け」
「素直に吐くとで――」

 そう言った妖狐だったが、次の瞬間、そいつの右腕に剣が突き刺さった。
 刺したのは副騎士団長。騎士団長の傍から一瞬で移動した。

「う……あ゛ぁ゛ぁぁぁ…………!!」
「ふむ……ライン、任せていいか? 隣の部屋があるから。防音だから大丈夫」

 いや、なんでオレなんだ?

「いやいやいや……なんでオレなんすか?」
「いや、なんとなく。……まあ、いい。命令だ、やれ!」
「へい…………」

 そのまま妖狐たちを引きずって、隣の部屋へ行く。なんでオレが拷問なんか…………。 

 あれ、でも、恐怖を感じない。
 前世だったら何が何でも嫌だっただろうけど。

 人としての心が消えてっているのか?
 命を奪い過ぎた影響か? 

「さて、さっさと吐けよ。今吐けば……」
「ふん! 私たちの体を好きに使っていいから、見逃しちゃくれ……」
「悪いが、獣に欲情するようなオレじゃない。まあ、いい。吐く気がないなら……」

 バカみたいなことを抜かす妖狐の1匹に『晶弾』を放つ。狙ったのは、右足。

「ぐあっ!!」
「女相手に容赦のない小僧だね!」

 ああ、お前ら雌だったのか。
 区別できねえんだよな。受付嬢の服装のままだし。

「さあ、情報を吐けよ。さあ、楽しい時間の始まりだ……」





「ライン、どうだ?」
「ええ、いくつか」

 得た情報はあまり多くない。

「まず、やつらは魔物連合第九隊の手先だそうです。第九隊は隠密部隊。戦闘向きではないようです。妖狐のように、幻術が使える者も所属しているようです」
「となると、ここだけの話ではなさそうだな。他国にも共有しよう」

 そして、得た情報をすべて話した。

 まず、数年前にオレが遭遇した人狼は第十隊、暗殺部隊。暗殺とは言うが、その実は速攻処理。

 全部で十隊あるのはこれまでの情報通り。
 報告は、主に『通話トーク』で行っていたようだ。

「そして、魔物連合の盟主についての情報です。まず、盟主の姿を知るのは、各隊の隊長と側近のみ。何より、盟主は最近誕生したようです」
「最近、誕生・・……? 復活ではなく?」
「ええ、そのようです。それに、その言が確かなら、誕生前から活動を開始していたようです」

 ほんと、謎だらけだな、連合は。

「そして、盟主は側近とともに活動しているようですが、どこで何をしているのかは不明。――以上です」
「そうか、ご苦労だった。妖狐どもは?」
「眠っています。かなり衰弱していますが。足は使い物にならないようにしてあります」
「うむ、では牢獄に放り込んでおこう」

 え? 拷問の内容? それは……秘密だ。 

 


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