戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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第三章 ~戦闘狂の水晶使い~

第85話  騎士団祭

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 連合の諜報員スパイは牢獄にぶち込んだ。
 場所は城の地下牢だ。何重ものセキュリティが、侵入を阻む。

 まあ、いい。今日は騎士団祭の日だ。

 オレとターバ、【魔導士】は優勝者と戦うんだが。
 そんなわけで、オレたちは騎士団長に呼び出されていた。

「お前らみたいな加護持ちは多くないが、私と同じ聖物持ちは、現在確認されていない」
「? 聖物持ち?」
「ああ、言ってなかったか? 私のこの電気の能力は聖物の効果でな」
「聖物というのは、持ち主を選ぶオリハルコンのことですよ。変形できる武器や形は弄れないようですが、特殊な能力を保有します。それがどのような能力かどうかは、運次第ですけどね」

 へぇ……。アーサー王の剣――エクスカリバーのようなものか。
 ああ、三賢者の装備も持ち主を選ぶとか言ってたな。

「まあ、騎士団長の電気攻撃は私も使えるんですけどねぇ」
「応用力は私の方が上だがな。まあ、そんなとこだ」





 騎士団長とのミニ会議(雑談)も終わり、オレの使っている宿に、ターバと【魔導士】が来ていた。

「では、作戦会議を始めましょうか!」
「相手が決まっていない今から、か?」

 なんで【魔導士】はこんなにテンション高いんだ? 相手もわからないのに作戦会議って……。

「互いの実力もわからないんですが?」
「ああ、そうだな。だが、模擬戦は本番まで禁止されている。それがオレたちに与えられたハンデだ」
「とにかく、危険人物は……第三隊隊長、ペテル・ヴァシクス。加護はなく、魔法も使えませんが、強いですよ。加護持ちと言えば、あとは副騎士団長ですね」

 もちろん、他国の騎士と戦う可能性だってある。ヤマルとかリーインと戦ったりしてな。
 リーインは一般レベルだが、ヤマルはそこそこ優秀だからな。





 そして、オレたちの出番がやってきた。対戦相手は、鬼国――フェンゼル国だった。
 途中の試合は見させてくれなかった。
 これもハンデだと。ハンデになるか?

 その間オレは、騎士団長と一緒に格闘していた。…………書類の山と。

『さあさあ、始まりました、騎士団対抗戦最終日! 優勝チーム、フェンゼル国! そして、近衛騎士団が誇る英雄3人!』

 会場は、王都の外にある平原の一部を隆起させたもの。
 攻撃の余波が観客に届かないように、会場の周りには覚醒済みの騎士が立っている。

『ルールは簡単! 3対3の真剣勝負! 場外、失神で失格とし、これ以上の戦闘続行が禁止と判断しましたら、それもまた失格とします。3人全員失格となったら、そのチームは負けとします!』

 フル武装で挑む。
 能力に制限はかけられていない。全力投球だ。

『もちろん、防具の着用も禁止!』

 フル武装じゃなくなった。

 にしても、外でやるってことは連合への牽制もあるのか。

『では、早速始めましょう! 優勝チーム、フェンゼル国代表!』

 さてさて、どんな人なのかな? ヤマルしか知らないけど。

『双頭槍を華麗に操る! ヤマル・コラヤン! 大剣を軽々と振り回す! ヨウファン・コラヤン! そして、フェンゼル国副騎士団長! ゲラード・ヴェール!!』

 ん? コラヤンとコラヤン? そういや、兄がいるとか言ってたな。シスコンだっけ?

『そして、騎士団代表の最強3人!』

 最強…………「最」も「強」い。オレらだけじゃないけどな。どこの国の騎士団長も出場してないし。

『その名を知らぬ人はいないでしょう! 【魔導士】! 【水晶使い】! 【双剣士】!』

 全員二つ名で紹介されちゃったよ。本名の紹介も、特徴の紹介もない。
 すんごい簡略化された。
 なんかショック…………。

 とりあえず、紹介された順番に会場に上がる。
 オレと【魔導士】は仮面してるもんな。どっちがどっちかわからないだろう。
 仮面と服装は全然違うから、そこで判断してもらえたら、と思う。

「ターバ、久しぶり! で、どっちがライン……?」
「こっちの、白い服がライン。まあ、戦えばわかるだろうけ――」
「――ライン! お前か!!」

 ターバの言葉を遮って、もう1人のコラヤンが出てきた。
 向こうは3人とも仮面は着けていない。
 そのため、表情はまるわかりなんだが…………お怒り中だ。

 オレなんかしたっけな? 
 心当たりは……まったくの皆無だ。

「おいお前! これ以上妹に関わるな!」
「え、なんで?」
「お兄ちゃん! 師匠に対して!」
「ヤマルは黙ってろ! 俺はお前を心配してだな!」

 ああ、修羅場だ。ってか、師匠って…………間違ってはないけども!
 師匠って言われるとむず痒いんだよ。
 
 にしても、まじでシスコンだな、こいつ。重度の。精神科は……殴れば治るか?

『えーー、喧嘩は別でやってください』
「ちっ! いいか、たらし! この勝負で失格になったら金輪際ヤマルに近づくな!!」
「あーー、はいはい」

 それだけ言うと、コラヤン兄は去って行った。

「いいの? ライン? お兄ちゃん、結構強いよ?」
「あーー、大丈夫大丈夫」

 負ける気はしない。だってチーム戦だし。
 少なくとも、落ちなければいい。2つの意味で。

『えーー、では、早速始めましょう! 構えてください!』

 オレたちは覚醒し、オリハルコンを出す。
 ターバは双剣、オレは棍、【魔導士】は短杖ワンド(普段使わないくせに)。

 ヤマルたちも覚醒する。そして、角が伸びる。
 武器は、ヤマルが双頭槍、コラヤン兄が大剣、で、え~~……と、なんだっけ、グ……グ……あ! ゲラードだ。ゲラードは身長と同じぐらいの長さの杖。

 会場の周りを囲む騎士も覚醒している。

『では、始めましょう! 3……2……1……始め!!』

 その瞬間、コラヤン兄の大剣が飛んできた。

「おぅわ!!」
 
 間一髪で避けたけど! いくら真剣勝負とは言えども!

「殺す気……か!!」

 大剣の柄を掴み、投げ返す。狙ったのは相手3人の手前。
 土煙が舞い上がり、視界が遮られる。

「死なねぇだろうが!」

 再び大剣を持って距離を詰めてきた。
 あの大きさの大剣を右手一本で振り回すって、どんだけ怪力だよ。

「――『晶鎖』」

 バックステップで距離を離し、間に『晶鎖』を出す。
 斬ることはできない。斬られると、それに合わせて『晶鎖』も動くからだ。そして、そのまま武器に絡みつく。

 ――はずなんだが…………

「はあっ!!」

 ……斬られてしまった。大剣の圧倒的な質量とコラヤン兄の怪力により、ありえない速度が出る。

「こんなものか! ライン!」
「――『炎槍ブレイズランス』」

 オレたちの間を断つように、3本の『炎槍ブレイズランス』が飛んできた。
 放ったのは【魔導士】だ。

 そう、これはチーム戦。ターバはヤマルと戦っている。
 敵の頭は後衛型のため、ただ立っているだけのようだ。手助けも何もしていない。

「ちぃっ! 邪魔を……するなあ゛ぁ!! ――『飛撃』ぃ!!」

 まるで狂戦士バーサーカーだな。妹絡みだから、か?
 それとも、もともとこんなものなのか?

「――『土壁ウォール』」

 コラヤン兄の放った『飛撃』は、【魔導士】の『土壁ウォール』を砕いたが、同時に『飛撃』も霧散した。
 土煙と『飛撃』の欠片が舞い、視界の状態は最悪だ。

「――『竜巻トルネード』」

 ん? 竜巻か?
 と思ったが、横向き・・・の竜巻だった。凄まじい斬撃の嵐だ。

 その竜巻はコラヤン兄だけでなく、ゲラードも捉えている。
 射程はどれだけあるんだ? この闘技場の端っこまで伸びているが……。

「んだ? その魔法はぁ?」
「私独自の魔法ですよ。ああ、死なないから大丈夫大丈夫」

 竜巻だから吹き飛ばし効果もあるようだ。

「――くっ!」

 離れていたゲラードは回避できたが、近くにいたコラヤン兄は避けれず、食らってしまった。
 だが、吹き飛ばずに堪えている。体中に切り傷ができているが……軽すぎる?

 ああ、魔力で膜を作り、攻撃を緩和しているのか。だが、そう長くは保たない。

「ならオレの相手は――」
「――『飛撃』!」

 後ろを向くと、『飛撃』が迫っていた。棍を構え、打ち消すが、次に迫っていたのはコラヤン兄だった。

「抜け出したか!」
「そいつは頼みます! ――『飛行フライ』」

 【魔導士】はコラヤン兄をオレに押し付けると、空を飛び、ゲラードに迫った。

「はは! 見捨てられたか!」
「これがチーム戦だってこと、忘れたのか? 任されたんだよ!」

 …………多分。
 


  
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